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更に歩くこと体感時間で五時間。
日は大きく西に傾き、西の空を真っ赤に染め上げた頃ソレは姿を現した。
「アレって……小屋かにゃ?」
どう見てもおんぼろで今にも崩れそうな木でできた小屋らしいモノが微かに見える。
この時間にもかかわらず明かりはついていない。
「アソコなのかにゃ? リーン」
「まあ、三〇〇年も経ってるからね。いるとは限らないわ」
何? 三〇〇年?
「そんなに昔の話なの?」
生きているかすら怪しいじゃない。
「わたしは三〇〇年ぶりに和の国に来たんだから、仕方ないわぇ」
「そう言えば村でそんなこと言ってたにゃ。すっかり忘れていたにゃ」
無駄足?
いやまだそう決めつけるのは早いよ。
とにかく、あの小屋に人が居るかを確かめなくちゃ。
ボロボロの小屋に近づくにつれてとても人が住んでるようには見えなくなっていく。
蜘蛛の巣は張り巡らされて、壁は所々腐っているし、何より明かりがついていないのが致命的。
草は伸び放題で小屋の中まで伸びている。
こんな所に人なんて……。
「ねえ、本当にここなのかにゃ?」
「この間来たときはね」
「この間?」
リーンの言葉に反応する私。
「三〇〇年前のことよ」
「そうだよね」
リーンの言葉にがっくり肩を落とす。
龍の髭にどんな力があるのかはわからないけど、三〇〇年の月日を生きていられるわけないよね。
悪魔でもあるまいし……?
いや、ちょっと待ってよ。
必ずしも人とは限らないよ。
現に悪魔たちが住んでるんだし。
「ねえ、リーン。龍の髭を見た人って人間なのかにゃ?」
私は疑問をそのままぶつけてみた。
「人間じゃないわ。サテュロスよ」
「サテュロス?」
人間じゃなければ可能性はまだ残っている。
でも、サテュロスって何だっけ?
ちらりとレモンに視線を送る。
ゆっくりと首を横に振るレモン。
やっぱりモンスター図鑑買っとくんだった。
「ホイヤーさん、サテュロスって知ってる?」
「ああ、勿論だとも。上半身は人間の男、下半身はヤギだよ」
「ソレって凶暴な悪魔?」
この国に居るから凶暴ではないと思うけど。
「幻獣……妖精だよ。ちょっといたずら好きだけどね」
「イタズラ……好き?」
なんだかいやな予感……まあマイヤーやアイヤーほどじゃないだろうけど。
とにかく小屋を開けてみよう。
「すいませ~ん、誰かいらっしゃいますかにゃ?」
ドアノブに手をかけると……。
ガラガラとコントの様に音を立てて小屋が崩れてしまった。
……あれ?
私の所為じゃないよね?
振り向いたら皆が呆れていた。




