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「へっくち、う~さぶ」

「ほらもっとこっち寄って」

 たき火にマイヤーを近づける。

 今は全身濡れネズミになったマイヤーを乾かしているところ。


「全く時間のロスだわ。今日中に龍の髭に行った人にあわないと、間に合わなくなるわよ」

 そう、リーンの言うとおり時間はない。

 七日間の滞在期間しかないのに、今日はすでに三日目だ。


 帰りの行程を考えれば明日には引き返さないといけない。


「全く何で池になんか飛びこんだんだい?」

 そっか、ホイヤーさんはあのおぞましいやりとりを見ていないんだっけ。

「へっくち、そこの姉ちゃんのせいだよ」

 毛布にくるまったマイヤーが横目で私を睨む。

「何よ、元はと言えばマイヤーが悪いんじゃにゃい。自業自得にゃ」


「だからといってアレはやりすぎだ、ミカン」

「は……い、レモン」

 確かにやりすぎました。


「何はともあれ、怪我がなくてよかったよ」

 ホイヤーさん……仰るとおりで。

 つい浮かれていたけど魔物はいないけど危険はあるもんね。


「さて、そろそろ行くか。リーン後どのくらいだ?」

「そうね、今夜にはつくんじゃない?」

 レモンの質問に対して適当に答えるリーン。

 本当に大丈夫かな?



 歩き始めてから体感時間で三時間ほどがたったころ、やっと山らしいモノが見えてきた。


「あった山だにゃ、山」

 思わずジャンプしながら喜んだ。

「そんなにはしゃがなくても見えてるぜ、ミカン」

 レモンは落ち着いた笑顔を見せてくれる。

「よっぽど嬉しいんだね」

 ホイヤーさんが笑った。


「え? ホイヤーさんは嬉しくにゃいの?」

 やっと龍の髭についての情報が入るのに。


「まぁ、はしゃぐほどではないかな?」

「何で?」

 目的地は目の前なのに。


「わからないの? おバカさんね。龍の髭に着くわけじゃないのよ。ただ行ったことがある人に会えるだけよ」

 それだけでも大収穫じゃない。

 龍の髭の場所がわかるんだよ。


「とにかく行ってみようぜ、話はそれからだ」

 レモンが私の手をつかんで引っ張ってくれた。

 う~、なんだかドキドキするよ。


「お姉ちゃん、顔赤いよ。風邪でも引いたの?」

「ち、違うの。何でもにゃいんだから、何でも」


 私とアイヤーのやりとりにレモンはフっと笑っていた。


 まさかドキドキが聞こえたんじゃないよね?

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