第42話 頭の中の響
/WoKoERu From Japan
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第42話 頭の中の響
地下の狭い部屋に、静けさが満ちていた。
TAOSUは壁際に寄り添うようにして立っている。
黒い甲农はほとんど動かず、ただ静かにその場に存在している。
Pは端末の前に立ち、淡い光を浴びたまま動いていなかった。
発信はすでに終わっているはずだったが、二人の間に言葉は生まれていない。
TAOSUは、ゆっくりと息を吐いた。
その瞬間、頭の奥がわずかに揺れた。
(……っ)
彼は思わず、甲农の中で体を強張らせた。
それは音ではなかった。声でもない。
ただ、脳の深い部分に、何かが直接触れようとしているような、得体の知れない感覚だった。まるで、指先で頭蓋骨の内側を、ゆっくりと撫でられているような違和感。
TAOSUは、わずかに眉を寄せた。
戦場で感じる殺気とは違う。戦の気配とも違う。
もっと曖昧で、しかし確実に「何か」が彼の内側に侵入してきている。
(これは……何だ)
彼は無意識に、右手を刀の柄に近づけていた。
甲农の内側で指がわずかに動く。
しかし、相手の姿はどこにもない。
ただ、頭の奥で、ぼんやりとした「呼びかけ」のようなものが、ゆっくりと広がり続けている。
TAOSUは、初めて視線をPに向けた。
端末の前に立つ男は、相変わらず動いていない。頭を少し垂れ、黒い箱状の装置を見つめているだけだった。表情に変化はない。
ただ、どこか虚ろで、しかし何かに囚われているような雰囲気が漂っている。
(この男の……中からか?)
TAOSUは、ぼんやりと思った。
彼がこの時代に呼ばれた理由は、まだわかっていない。
だが今、頭の奥で感じているこの違和感は、明らかにPの存在と重なっている気がした。
TAOSUは、ゆっくりと一歩、Pに近づいた。
甲农がわずかに軋む音が、静かな部屋に響いた。
Pは振り返らなかった。ただ、端末を見つめたまま、静かに立っている。
TAOSUは、その背中を眺めながら、再び頭の奥に意識を集中させた。
今度は、はっきりと感じた。
何か、が。
彼の脳の奥に、直接触れようとしている。声ではない。言葉ではない。
ただ曖昧で、しかし確かな「呼びかけ」のようなものが、ゆっくりと彼の中に染み込んでくる。
TAOSUは、思わず小さく息を呑んだ。
(これは……何だ)
戦場で何度も死と向き合ってきた彼にとって、この感覚は異質だった。
刀を交え、血を浴び、仲間が斃れるのを見てきた。それでも、こんな感覚は初めてだった。
自分の内側が、誰かに触れられている。
しかも、それはPの存在と、奇妙に重なっている。
TAOSUは、甲农の中でわずかに体を強張らせた。
心拍が、静かに速くなっているのが自分でもわかった。
頭の奥で、響きが続いている。
それは、Pが意図して発しているものではないように感じられた。
むしろ、本人すら気づいていない、何か無意識の部分から漏れ出しているような……そんな気がした。
(この感覚は、敵か。それとも……)
TAOSUは、Pの背中を見つめたまま、静かに考えた。
この「呼びかけ」は、明らかに彼を狙っているように感じられた。
しかも、それは敵意や殺意とはまた違う、もっと根源的な「何か」だった。
TAOSUは、ゆっくりと視線を逸らした。
部屋の中は、相変わらず静かだった。
Pは端末の前に立ち、動いていない。
TAOSUは壁際に戻り、再び静かに立った。
しかし、頭の奥では、まだ「何か」が響き続けていた。
それは、ゆっくりと、しかし確実に、TAOSUの内側に根を張り始めているようだった。
(……お前か)
TAOSUは、心の中で小さく呟いた。
その声は、誰にも聞こえなかった。
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