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小説 「 p 」 - 死刑囚、2080年から1582年へ  作者: /WoKoERu ( wokoeru )
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38/45

第43話 送信は

/WoKoERu From Japan


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第43話 送信は



地下の部屋に、静かな緊張が満ちていた。


Pは黒い箱状の装置の前に座り、画面をじっと見つめている。


TAOSUは部屋の隅に立ち、ほとんど動いていなかった。

黒い甲农の表面が、端末の淡い光を反射している。



Pは、画面から目を逸らさなかった。

さあ…どうなるか。


【送信完了】



突如、画面に、淡い光のラインが走った。



「?」



【送信中……】という表示の横に、パーセントが表示され始めた。



0% → 7% → 19% → 34%……




画面から視線を外せない。


Pは嫌な予感がした。



頭の疼きが、静かに続いている。NCC-7の熱が首の奥から伝わってくる感覚があった。



TAOSUが、ふと動いた。



甲农の兜に手をかける。


カチリ、という小さな音がして、兜がゆっくりと外された。


顔の部分はまだ覆われたままだったが、兜を外したことで、甲农全体が少しだけ人間らしい佇まいを見せた。

首の動きが、わずかに自然になったように見えた。


TAOSUは、兜を横に置き、再び壁際に寄り添うようにして立った。


Pの作業を、静かに見ている。



画面のパーセントが、ゆっくりと上がっていく。



51% → 68% → 79%……




Pは、わずかに息を詰めた。




次の瞬間だった。


画面が、突然暗くなった。



【送信失敗】



赤い文字が、はっきりと表示される。


その下に、小さく追記されていた。



【内部プロテクトにより送信が遮断されました】


Pは、画面をじっと見つめたまま、動かなかった。


(……やはり、か)





無力感が、ゆっくりと胸の奥に広がっていく。




どれだけ準備しても、どれだけ慎重に信号を組み上げても、自分の内側にある「何か」が、それを許さない。



何か…だ。

頭の疼きが、思考の端をぼやけさせる。

集中しようとしても、どこかで意識が削がれていく感覚があった。



TAOSUは、兜を外したまま、Pの背中を眺めていた。



何も言わない。ただ、静かにその場に立っている。




Pは、ゆっくりと体を起こした。



送信は失敗した。

ならば、やり直すしかない。



彼は指を動かし始めた。




まずは、送信に使ったプログラムの残骸をすべて消去する。


古いコードがわずかでも残っていれば、再び同じプロテクトに阻まれる可能性があった。


メモリを完全にクリアし、関連する一時ファイルを削除していく。


次に、新たなプログラムを一から作成する。




2080年の匿名回線は、通常のネットワークとは構造が異なる。


信号を複数の経由点に分散させ、断片化して送信することで追跡を困難にする仕組みだ。


Pは、それを自分で組み上げなければならなかった。



画面に、コードが表示されていく。



(文字化け)init_secure_channel --anon-mode=high --fragment=8

set_bypass_protocol v7.3 --override_protect=true



Pは、細かく修正を加えていく。



セキュリティ回避のためのサブルーチンを組み、プロテクトをすり抜けるための擬似信号を生成する。


ループ処理を組み込み、断片化した信号が正しく再構成されるように調整していく。


頭の疼きが、時折、作業を遮った。


(……集中しろ)



彼は自分に言い聞かせ、指を動かし続ける。



(文字化け)def generate_fragmented_signal(data, key):

fragments = split_data(data, size=256)

encrypted = [encrypt_fragment(f, key) for f in fragments]

return route_through_anon_nodes(encrypted)



一行、また一行。



プログラムは、少しずつ形になっていく。


TAOSUは、兜を外した状態で立っていた。


甲农の表面が光を反射し、首の動きがわずかに人間らしく見える。


Pの作業を、ただ黙って見守っている。



時間は、かなり経過していた。



Pは、画面から視線を外さなかった。

やがて、プログラムは完成に近づいた。



最後の確認を終え、彼は送信コマンドを入力した。

画面に、再び光が走る。



【送信中……】



パーセントが、再び表示され始めた。


0% → 12% → 29% → 47%……




Pは、息を詰めて画面を見つめていた。


TAOSUも、わずかに体を前傾させているように見えた。



パーセントが、ゆっくりと上がっていく。


63% → 81% → 94%……



そして ──





【送信成功】




画面に、はっきりと文字が表示された。



Pは、画面をじっと見つめたまま、動かなかった。




成功した。




今度こそ、信号は外部に届いたはずだった。



彼は、ゆっくりと息を吐いた。

無力感は、完全には消えていない。頭の疼きも続いている。




しかし、少なくとも「何もできない」という状態からは抜け出せた。






何かができたのだ。





その時だった。


遠くから、鈍い爆発音が響いた。



重火器のものだ。


音は、すぐに途切れた。

Pは、音のした方へ視線を向けることもなく、静かに立ち上がった。


TAOSUが、兜を拾い上げながら、低く言った。


「……奴がまだ戦っている。行こう」



Pは無言で頷いた。


二人は、端末を後にした。




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