↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大森ヤエの異世界転生スローライフ~森に勇者が生えました~  作者: 山門紳士


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/55

54、なら私は手伝いましょう

「私が魔族を救うわ!」


 高らかなヤエの宣言だった。


「ヤエママぜったいそういうと思ってたー。ヒナタ、いいと思う」


 ヒナタは賛同し。


「ちょ、ヤエさん! 正気ですか!? 神に喧嘩売るんですよう?」


 テレジアは驚いた。


 魔皇をはじめとした魔族たちに至ってはすでに話について来れていない。


「救うわよ! テレジアさんはいつも私の好きでいいって言ってるじゃない!」


「そ、それはそうなんですけど、それはあまりに危険ですよう」


 テレジアは四足をバタバタとさせて慌てる。


 テレジアにとってヤエは何より大事だ。

 そして女神であるテレジアは神の力も知っている。

 モリモリにチートを盛ったヤエでも勝つことができるか怪しい。


「私、ダメなのよ。

 テレジアさんの時もそうだったけど。

 理不尽に晒されている人を見ると止まらないの」


「わかりますし……

 ヤエさんに救われた私も幸せですけど……

 こればっかりはダメですよう……

 ヤエさんの命が危ない。

 やっぱり絶対にダメです!」


 自分の例を出されると反対しづらいところだが。


「ねえ、テレジアさん」


 そんなテレジアの名をヤエは呼ぶ。


「はい」


 ヤエは一歩前に出て。

 その場にかがみ込み。

 テレジアを抱き上げ。

 その毛並みを優しく撫でた。


「私ね、この世界に来て、自由がどれだけ人を幸せにするか知ったのよ」


 狸にしては大柄なテレジアの体がヤエの腕の中にスッポリとおさまっている。


「そうですね。私もですよう」


 ヤエのグルーミングの心地よさにテレジアの目が細まる。


「でも魔族のみんなには一つも自由がないわ。

 仕事を与えられて、対価をなにも与えられないどころか。

 逆に全てを奪われるだなんて。

 おかしいでしょう?」


「それは……そうですねえ」


 テレジアは異世界転生ジャンクションの生活を思い出す。

 今はあれが異常だったと心から理解できる。

 きっと魔族も同じだろう。


「たぶん、この世界は、魔族だけじゃなくて、人間も本質的には同じなのよね?」


「ええ、彼らは支配者ではありますが、同様に自由はありません」


 彼らは愚かだから支配者に据えられているだけだ。

 他種族を不要に蔑み、迫害して、時に殺す。

 そうやって知らず知らずのうちに。

 神の意図に従って。

 世界の文明レベルを低下させ。

 世界が突出しないようにしている。


「それっておかしくない?」


「そうかも知れませんが、世界ってそういうものですよう」


 テレジアはもうすでに世界をそういうものだと思ってしまっている。

 でもヤエは違う。


「リチャードさんの家族や、森にいる人間を見ていて、私ずっと思っていたの」


「なにをですか?」


 テレジアの鼻先が上向いて、ヤエの顔に視線が向く。


「この世界には自由がないって」


「はい。それはもう。そうですねえ。世界を維持するために必要ですから」


 世界の全ては神の意図で進み。

 そこに生きる生物に自由意志はない。

 全ては自由意思だと思い込まされている世界の意思だ。


「私思うんだけど、そんなやり方しかしないって。それって神の怠慢よね!」


 もっとやり方があると思うのよ。

 そう、ヤエは続けた。


「美狸女神として、とても耳が痛い言葉ですねえ」


 怠惰な狸とて。

 怠慢を責められたら心苦しい。


「だからね!

 神にできないのだったらね。

 私が救うわ!

 リチャードさんたちみたいに、魔族みんなに自由になってもらうの!

 衣食住に困らず、やりたいことをやりたいようにできるように!

 全ての生に自由は与えられるべきだと思うわ」


「そう、ですねえ……」


 ヤエの言葉を聞いて。


 理想論だ、と。


 テレジアは思った。


 そして同時に。


 遠い昔を思い出した。


 かつて自分が抱いた理想も、そうだった。


 テレジアは過去、上位神だった。


 別の神から引き継いだ世界も、ここと同様に生物は虐げられていた。

 ここより酷かった。

 徹底的に管理されていた。

 全て神が与える。

 全て神が奪う。


 遠隔操作デバイスが、生物全てに組み込まれていた。


 それをテレジアは変えようと思った。


 若く。


 希望に燃えていた。


 でもダメだった。


 世界は善ではなかった。


 行き過ぎた秩序を変えようと行動した結果。


 行き過ぎた混沌が世界を支配した。


 テレジアにはできなかった。

 失敗した。

 だから下位の女神になった。

 そして今は狸に堕天した。


 かつての自分とヤエが重なった。


 だから言った。


「ヤエさんがやりたいならいいでしょう。私はそれを全力で手伝いますよう」


 そう言ったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。