48、再会
「ヒナタ様、どうしたんですかー
……って、え!
本当にどうしたんっすか!?」
扉を開いたリチャードが、目の前の広がるおかしな状況を目にして、驚きの声をあげた。
テレジアが家の前の道に座っている。
威厳に満ちた毛並みと凛とした、いつも通りの座り姿勢。
美しい狸だと思った。
それに向かい合うようにして、見るからに高貴な魔族がいる。
よく見れば、リチャードがこの森に来ることになった仕事の依頼主だったような気がするが、今は腰を抜かしてヘタっているから威厳がなく確証は持てない。
そしてリチャードを呼ぶ声の先にはヒナタがいる。
無邪気な笑顔でリチャードを見つめて、こっちこっちと手招きしている。
なぜだか少し自慢げで生意気な顔をしているがそれすら可愛い。
「ね、リチャードさん、この人知ってる?」
そんな天使のような勇者が指差した場所には。
友がいた。
この森に来て初めて友になった魔族がいた。
こちらは見間違うはずがない。
付き合いは数ヶ月だが生まれて初めてできた友人だ。
「おお! 相棒! 無事だったか!」
リチャードは色白魔族の喜び駆け寄った。
「……誰だ、お前は」
しかし色白魔族はリチャードがわからない。
何度同じことを繰り返せば気が済むのか。
リチャードは自分の姿が変わってしまっていることをまた忘れていた。
「ああ。そうか。またやっちまった。
俺は姿が変わってたんだな。
相棒、聞いてくれ。
俺は名前をもらって存在進化したんだ」
「存在進化……そんな話を俺が信じると? そんなのおとぎ話だろう」
色白は地面に座りながらリチャードを睨みつける。
「っと……そうだよな。
どうするかな?
困ったなー。
あっ、そうだそうだ!
これならわかるんじゃねえか?」
困った困ったと立ったまま右往左往と考えていたリチャードが、何かを思いついたように、そう言って色白魔族の手を取って立たせた。
「な、なにすんだよ!」
怒り、戸惑いながらも、色白魔族はリチャードの促されるまま。
「いいからいいから。
立て立て。
ほれ、両手を出せ、そうそう、俺に手のひらを向けるようにして、お前も覚えてんだろ?」
それからお互いの両の手の指と指を交互にして握り合った。
「な、なに、すんだ、やめ、やめろ」
色白魔族は戸惑う声をあげているが、動きはリチャードに合わせている。
そのまま二人は向かい合い、力比べの体勢の準備が整った。
色白魔族は目の前の変わった男のペースに巻き込まれながら、褐色魔族に今と同じような力比べに無理矢理付き合わされたことを思い出していた。
懐かしい過去に意識が飛びかけたその瞬間に。
「よっし! 行くぞお!」
リチャードの掛け声が響き。
力比べが一方的に開始された。
当然、なんの準備もしていなかった色白魔族はそのまま体勢を崩して後ろに倒れた。
「痛ってえなあ。
こっちはまだ準備できてねえよ。
それに俺はパワータイプじゃないって何度言ったらわかる……ん、だ……」
相棒であった褐色魔族に何度と言った言葉をブツクサと口にしながら。
視線を上げると男が笑っていた。
その見覚えのある笑顔に。
思わず愚痴も止まってしまった。
見た目は全く違うけれど。
知っている表情だった。
「お前、相棒か……」
「だから、何回もそうだって言ってんじゃねえか。
名前をもらってよ、今はリチャードって言うんだ。
久しぶりだな相棒」
リチャードは屈託なく笑いながら。
倒れた色白魔族の手を取った。
「そ、そっか。生きてたんだな……よか……よかった……」
リチャードの手を取って立ち上がった色白魔族は、その手を握ったままボロボロと涙を流し、その後は言葉にならなかった。
「おう、生きてるぞ。死んだと思ってたんだな。悪かったよ」
リチャードはそう言いながら。
友の肩を力強く叩いた。
ヒナタはその幸せな光景を喜んで眺めていた。




