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エンドコンテンツ裏ボスである主人公の親友に転生した俺、最強だがいずれ敗北が確定しているため、ハッピーエンドを目指して学園生活を謳歌する  作者: 椿紅颯
第五章

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第34話『全力というものを発揮してみよう』

『ンガーッ!』


 洞窟の入り口に到着したと同時に補足された。


 既に把握しているけど、正直「またか」という感想しか抱けない。

 また大熊モンスターで、昼間に見たときより少し大きい程度。


 全長10メートルぐらい?


 立ち上がりながら両手を大きく広げ威嚇してきているけど、最強保証があるから正直怖くない。

 そんなことよりも左手で握っている【聖裁の破壊ジャッジメント・デストロイ】の光り輝く鼓動が速度を上げている方が気になる。

 軽く想像するだけでも『暴発』の2文字が思い浮かんでしまい、気が気じゃない。


「洞窟の外には出てくるのかな」


 1歩2歩と後退してみる。


『ガーッ!』


 ドスンッと両手を地面についてから、突進開始。


「よっと。なるほど、テリトリーの外には出るのか」


 後方へ跳び、距離を取る。

 このまま少しずつ試せることを試してみよう。


『ガーッ! ガッ!』


 あからさまな殺意を込めた表情で猛突進を繰り返し、ご自慢の爪が伸びた腕を振り回し続けている。

 魔法の類は発動できず、仲間を呼ぶこともしない。


 ということは、ゲート内のモンスター数は有限な可能性が大きい。

 加えて魔力が満ちている空間だというのに、魔法を発動させる素振りがなく。

 これから先はわからないけど、ボスによって変動するものがあるということ。


 それもそうか。

 エンドコンテンツのラスボス戦はゲート内で行われ、そこに君臨しているのがミナトだったわけだし。


「回復ってするのかな」


 逃げながら小石を拾い、投擲。


『ガァーッ!?!?』


 顔面への直撃は避けたけど、向かって左側面の毛皮が一直線に抉れてしまった。

 悲鳴なのか反撃に驚いたのかわからないが、その咆哮は痛覚に起因するものだろうか。


 でも即時回復のようなものはなさそう。


「じゃあ拳で1撃だけ」


 足を止め、向かってくる大熊に対して顎へアッパーを入れる。


『グゥ?!』


 バキバキバキ! という生々しい歯か顎骨が折れる音が鳴り響き、垂直半回転して地面へ背中から倒れてしまった。


「加減って難しいね。弄ぶつもりはないんだよ」


 なぜモンスターに弁明しているのかセルフツッコミをしつつ、そろそろ白光の鼓動が早くなってきて焦りが加速してしまう。


「そろそろ終わりにしよう」


 再び後方へ跳び距離を取る。


 そして剣を頭上へ掲げ。


「正解がわからないけど、何かを流し込むイメージで合ってるっぽい」


 陰と陽の魔法攻撃を吸収していることに加え、自分の魔力も流し込んでみる。

 すると直視していないのに辺り一帯が白い光に照らされ、少しだけ目を細めた。


「すげ、俺が光源じゃん。地上の太陽、的な?」


 返事がないことに虚無感を覚えてしまうも、鼓動は止まり完全に光り続けている――から、チャージは十分だろう。


「そろそろ立ち上がらないと、どうやって負けたかわからないままだよ」


 しかし大熊から返事はない。


 虚しい、虚しすぎる。


「じゃあ遠慮なく!」


 光を放つイメージで剣を振り下ろす。

 ぶっつけ本番だったけど、視界いっぱいに広がる光は宙を割きながら――いや、地面すらもボカボカドカドカガガガガと砕きながら直進していった。


「うわぁ……」


 自分で攻撃しておきながら、驚愕の威力に顔を背けながら引きつらせる。


 だって陰と陽に抱いた「やりすぎだよ」という感想そのままを、再現してしまったからだ。

 自分より前方が地面から抉れ、洞窟まで跡形もなく消し去り、木々もまた同様に消え去ってしまった。


「え」


 少しだけ目線を上げてみたら、なんと雲までも裂けている。

 結果として空と陸を割ってしまったようだ。


 幻影でも見ているのかと疑いを晴らすため、膝を曲げて削れている地面の先端を触ってみる。


「控えめに言ってヤバいでしょ」


 これが自分の全力に近い力――だと思いたいけど、ラスボス戦の完全フォームは陰と陽を装備し、剣を2本持った状態だった。

 まだまだ、これの先があるって考えると冗談抜きに自分が怖い。


 あのおじさん、俺が偶然にもいい感じに力を調整できていたことに感謝してほしいものだな。

 無意識とはいえ、この身体で物理的な攻撃をしてしまった。

 魔法を扱っていないが、大熊を参考にすると1撃で骨が砕け腕も取れていた可能性だってあるわけだし。


 いやでも、謝罪に来られても許しはしないよ?

 だってそもそもの話、ミーシャに対して恐怖心を植え付ける役割の人間なわけだし。

 ゲームでは襲われた後に出会うから、人生に影が差した、と日々苦しんでいる姿を見ているのだから。

 今回は未遂に終わっているとはいえ、到底許せるものではない。


 そんな憤りを抱きつつ、立ち上がる。


「――」


 もはや自分という存在が恐怖の対象でしかない、と認識し震えあがる。

 本当にあのおじさん、『幸運だったね』としか言えない。


 夢から覚めるみたいにゲート内の環境が消えていき、元通りになった森林にポツッと独り。


「月も星も綺麗だ」


 あっちの世界では、小さい頃は目をキラキラさせながら見ていた夜空も最近は見ることもなかった。

 そもそも夜に外へ出かけないし、いつしか下ばかり見ている人生だったな。


 勉強して、スマホを操作して、転ばないように目線を下げたまま。


 だからこそ暗い人生に光が欲しくて始めた様々なゲームであり、手に入れることができなかった現実があった【ファルファロ・オンライン】を遊びまくった。

 今思えば、まだまだ行動できることは山ほどあったし、自分の人生が暗いものだと決めつけるには早すぎたと思う。

 まだまだ16歳、生きてきた時間よりも未来の方が時間があるじゃないか。


 でもさすがに雑誌1つであそこまで盛り上がることができる親友は、現実世界で探す方が大変だろうけど。


「ふぅ――」


 誰にも観られていないから、ちょっとカッコつけてポケットに両手を入れながら歩き始める。


 夜の外って、なんだかいいな。


 前回は急いで帰ったから感じることができなかったけど、虫が奏でる音色に耳を傾けることが楽しい。

 昼間も同じ肌を撫でる風を感じるけど、夜だと少しだけ冷たく感じる。

 何より暗い夜道ではあるけど、夜空の優しい光が道を照らしてくれて、なぜだか見守られているような気がしていい。


「すぅー――はぁ……」


 気のせいだろうけど、昼間より空気が美味しい。


 こういった時間で明日のことを考えた方がいいだろう。

 でもなぜだろう、『今は別にいいや』と気持ちを軽くさせてくれる。


「たまには、こういうのもいいな」


 リラックスリラックス。


 別に日頃から難しいことを考えているわけでも、思考力を全開にして脳をフル稼働させているわけでもない。

 足りない頭を必死に動かし、できることをやっているだけ。


 他人からは『その程度かよ』と嗤われるかもしれない。

 でも、これが俺にできる精一杯だ。


「このまま夜を堪能したいけど。さすがに今日はここまでかな」


 大人に見つかって補導されたくないし、呑気に歩いて寮の正面から還るわけにもいかない。

 それにカイトが、また部屋を訪れても言い訳が面倒だ。


 ポケットから手を出し、カッコつけタイムを終了させて夜の気配に紛れて跳び込んで戻ろう。

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