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エンドコンテンツ裏ボスである主人公の親友に転生した俺、最強だがいずれ敗北が確定しているため、ハッピーエンドを目指して学園生活を謳歌する  作者: 椿紅颯
第四章

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第23話『脳筋へ魔法を教えるのは大変だ!』

 とりあえず、放課後まで時間がある。

 これから実技の授業だけど、こういった時間を有効活用して対策を練るしかない。


 今回は第1演習場での実技。

 身体強化を主に練習するということで、いつも通りにカイトと組んでいる。


「魔法を臨機応変に活用するって難しいよね」


 と、カイトは開幕早々に弱音を吐いている。

 何かの間違いで天恵を授かり、急激に身体強化魔法だけでも得意になってくれませんかね。


「土を蹴って走る。そんな基本的なことは他の人よりも得意なのに」

「手厳しいことを言ってくれるじゃないか」

「だって事実でしょ」


 身体能力は誇張なしに抜群。

 反応速度も瞬発的な対応も群を抜いているのは間違いない。

 だからこそ、剣や武器を持たせれば優秀すぎて教師陣と肩を並べるほどだ。

 当然、時間が経過していくと成人でも太刀打ちできないほど強くなる。


 付け加えるなら、魔法がほぼ扱えないからこそ攻略できるイベントがあったり、エンドコンテンツのラスボス戦でもその特性が攻略の鍵となっていた。


「とりあえず、早く走るための補助魔法を練習するべきだと思う」

「殴る、蹴る、跳ぶ――とかの方がいいんじゃ?」

「否定はしないけど、今は必要じゃないと思うよ」

「そう? でももしモンスターと戦うことになったら必要じゃない?」

「実践訓練はまだだし、問題ないでしょ」


 という希望的視点で物事を話しているが。

 ネタバレ的に言うと初期魔法を習得してから実践授業という名の、召喚魔法で出された疑似モンスターと戦闘することになる。


 だから今は、少しでも今日の放課後へ希望を繋ぐために移動補助魔法を扱えるようになってもらいたい。


「でも正直、攻撃魔法より難しいよね」

「体と頭を動かしながら魔法を発動するから、それはそう」


 カイトの愚痴そのままに、補助魔法を他人へ発動させる分には他の魔法と難易度的な差はない。


「発想の転換というやつだよ」

「というと?」

「走りながら、跳びながら、回りながら。それら動作中に魔法を発動させるなら難易度は高い」

「じゃあどうするの?」

「予備動作中に判断すれば、慣れるという面で言えば適正だと思う」


 カイトは「ほほお」と素直に聞き入れてくれているが、当然ゲームの知識を前借して伝えているだけだ。

 さすがに自分の知識じゃないことをひけらかしているようで恥ずかしくなってくる。


「今から、あそこまで走る。そこまで跳ぶ、投げる。その際、一歩足を引いたり出したり、しゃがんだりする」

「するね」

「そこで、目的地や目標物を把握しているから、それに必要な魔法を発動させる。そう動作を分解し、魔法を当てはめてあげるんだ」

「ほ~、なるほど」


 いや、もうこれ前借りというかカンニングした内容を伝えているだけだよな。

 ゲームで得た知識とバレたら、間違いなく何も言い訳できない。


「じゃあ早速やってみよう」

「よし、ここから壁に走る――前に魔法を発動させて」

「そうそう」


 移動補助魔法は詠唱文を必要しないから、想像力と扱える魔力量や繊細さが必要となる。


「行くよ」

「うん」

「――どわぁああああああああああっ!?」

「あ」


 あまりにも加速しすぎで、止まることができず壁に激突してしまった。

 つい目を背けてしまったけど、痛いどころの話じゃすまないよな。

 距離も離れていることだし、回復魔法を使ってあげよう。


「大丈夫かー?」

「痛すぎて立ち上がれない! 回復ありがとう!」


 地面で丸くなるほど痛いのだろう、情けない返事だが仕方がない。

 俺が逆の立場でこの身体じゃなかったら、のたうち回っていた確信はある。


 同上の言葉を考えながら、回復魔法を発動させながら歩いて近づこう。


「――そうだよな。止まる方法を教えなかった俺が悪かった。ごめん」

「いやいや、そんなことはないさ」

「そう言ってもらえると助かるよ」

「でも凄いね。正直、理解できないまま実行してみたけど本当にできちゃった」

「おいおい理解できてなかったのかい」

「ははっ、僕を過大評価しないでくれ」


 してないよ? 褒めてもないよ?

 俺だったら骨が折れていただろうが、カイトはなんてタフさだ。

 その体の頑丈さは褒めたいが、そこを褒めても意味はない。


「組んだ相手がミナトでよかったよ。回復までしてくれるなんて感謝しかない」

「そろそろ立ち上がれる?」

「ありがとうっと」


 手を差し伸ばしたら、ミナトは掴んで立ち上がってしまった。


 回復の効果は抑えているから、まだ痛みを感じるはずだが――物語の主人公補正が働いているのだろうか。

 それとも、俺に心配をかけないためなのか。


 まあ……後者だろうな。

 本当に顔だけじゃなく、ため息が零れてしまいそうなほど性格まで爽やかイケメンだよ、まったく。


「倒れたときに考えたけど、目的地の少し前に魔法を切る、という感じでいいのかな」

「そういうこと。助走で魔法を発動させ、勢いの余韻を緩めるように魔法を切る。という認識で」

「なるほど、理解した。さっきいた場所まで戻ってみるよ」


 と、すぐに駆け出すものだから止めようがなかった。

 が、カイトは言語化した内容を体現させ倒れず、見事に地面をズサーッと擦りながら止まることに成功。


「はぁ……」


 今回はさすがにため息を零してしまった。

 物語の主人公からなのか、それともカイトという人間の個性なのか。

 言葉を聞いて理解することは厳しくても、体を使って理解したことは恐ろしいぐらい理解力が優秀だ。

 これはプレイヤーとしてカイトを操作していたときにも思ったが、【脳筋バカ】と呼ぶよりも【体現の天才】と呼んだ方が適切だろう。


 体を使って考え、体を使って実行し、体を使って理解する。

 プレイヤーも選択肢やコマンドを実行してゲーム操作を覚えるのだから、自己投影するには正解なのだろう。


「凄いね。できちゃったじゃん」

「ミナトがアドバイスをくれたからだよ」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

「じゃあこのやり方って、曲がり角とかにも応用できる?」

「うん。進みながら曲がる、ということには不向きだけど。安全に進んで止まる、進んで止まる、を繰り返すだけになるから」

「後は体力と魔力次第か」


 体を扱えば急激に学習能力が跳ね上がるの、いったい何?

 もしかして筋肉で物事を考えてる?


 でもこれだったら、放課後の件もどうに……か……。

 あ――夢中で一緒に取り組んでいたから、もしもの代案を考えていなかった。


「じゃあ次は跳ぶ練習?」

「う、うん」


 情報を引き出しながら的確に伝えながら放課後の件を考える。

 そんなこと俺にできるわけないじゃないか!

 ああ、カイトへ行動を切り分けて考える、なんて言えた立場じゃないでしょうが!


 小さい子供みたいに目をキラキラさせて俺を見るカイトを前にすると、疎かにはできない。

 ええい、この際だ。

 物事を並行して考えられないのなら、この時間は教えることに徹しようじゃないかぁ!


「よしカイト、頑張ろう!」

「うん。急に燃え上がった?」

「当たり前じゃないか! できないことを学び実践するカイトを前に、どうして覚めていられよう!?」

「ありがとう?」

「うおおおお! 頭は冷静に、心は着火させるぞぉ!」

「その勢いだと体も燃えそうだね」

「最初はうさぎ跳びを派生する感じで進めていく!」


 キャラクターの性格からは脱線していることは間違いないけど、今だけは熱血路線でもいいじゃないか!


「今度は手本を見せるから、見てて」


 膝を深く曲げ、手を前後に大きく振り続けて助走とする。


 しかし俺は、こんなタイミングで冷静になることができた。

 あ、危ない。

 このままの勢いで跳んだら、魔法すら扱わず人間離れした動作をするところだった。


「こうやって、こう」

「なるほど。ちょっとわからないけどやってみる」

「跳ぶ前に魔法を発動させて、着地時にも発動させる感じ」

「とりあえずやってみる――」

「あ」

「うわぁああああああああああ」


 はは、3メートルは跳んで足と手を地面について着地し顔も強打してしまった。

 笑い事じゃないけど、そんな予感はしていたよ。


 今はカイトの誠意に応えよう。

 さすがに次の実技では、考えないとな。

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