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エンドコンテンツ裏ボスである主人公の親友に転生した俺、最強だがいずれ敗北が確定しているため、ハッピーエンドを目指して学園生活を謳歌する  作者: 椿紅颯
第四章

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第22話『ラッキーアイテムがハサミだと?』

 さて、一難去ってまた一難の始まりだ。


 今日も各ルートが発生し、もうすぐ表ルートの『困る少女の手助け』という昨日危惧していたイベントが発生する。

 全部重要なイベントだけど、今回はその中でも注視しなければならない。

 なぜならカイトとミーシャが初めて顔を合わすイベントだから。


 しかし困ったこととに、予定時刻になってもカイトはノートに夢中だ。

 授業の中でわからなかったことがあるのか、遠目でもわかるぐらいな必死さが伝わってくる。

 声をかけられない雰囲気を醸し出しているし、そんな相手を廊下へ連れ出す口実も思いつかない。


 本当にどうしよう。


「……」


 冷静に考えると、教室から出なくてもいいのか?


 昨日のハサミ購入から話を繋げてしまえば、ここで顔を合わせたとしてもミーシャは自分のハサミを持っていることになる。

 であれば、ハサミを手渡すことも起こりえない。


 運よくカイトを廊下へ連れ出したとしても、アリサには口実を作っていたがミーシャに対してはまだだから、急に紹介するのも変だ。


「――」


 ええい、それでもイベントに関与しなければよくない流れになってしまうかもしれない。

 俺だけでも廊下へ行ってしまおう。


 と意気込み、立ち上がって廊下へ歩き出す。


「あ、ミナトくん。おはよう」


 考えすぎてしまっていたか、ちょうどミーシャと鉢合わせるかたちで顔を合わせることに。


「おはようミーシャ」


 さてどうしたものか。

 顔を合わせることはできたけど、見た感じ困っている様子ではない。

 本来であれば――本来であれば?


 そもそもの話、あのイベント後に初めて顔を合わせるわけで。

 ミーシャは常に目線を落とし、暗い雰囲気でせいかつすることになってしまい、今回のイベントも『困った様子でカイトとぶつかる』から始まる。


 状況整理すると、あまりにも正反対。


「変な質問かもしれないけど、何か困っていたりする?」

「んー……今は大丈夫かな」


 浅はかで直球すぎる、とは自分でも思う。

 でも、今朝の姉さんに対する攻めた質問を思い出せば、回りくどく答えを得られない方が不安を早期に払拭できるからいい。


「ついさっきまでは、解れた糸をどうにかしようと困ってたよ」

「そうなんだ」

「でも昨日買ったハサミのおかげで無事に解決できたの」

「なるほど」

「凄いよね、今日の占いでラッキーアイテムがハサミだったの。本当に当たっちゃった」


 ラッキーアイテムって――占い、凄い。

 あまりにも非の打ち所がない自然な解決までの過程に、納得するしかない。


「他に困ったことは思いつかない?」

「え? うーん……」


 不自然すぎる問いかけだということはわかっている。

 でも、ここで何かしらのアクションを起こさないと、もしかしたら次に進めないかもしれない。

 そうなった場合、先回りしてでも関与できた裏ルートもしくはエンドコンテンツルートへ突入してしまう。


 ただでさえ表ルートだけは、カイトへの問いが曖昧だったということもあり不安要素しかない。

 藁にも縋る思い、とはまさにこのこと。

 頼むミーシャ、些細なことでもいいから困ったことを思いついてくれ……!


「……あ、そうだ」


 目線を右に左にさせながら考える姿がかわいい、なんて思考が乱れるも、その言葉で正気に返る。


「困っている、という大袈裟なものじゃないけど。それでもいい?」

「うん、どんな些細なことでも言ってほしい」

「じゃあ……」


 きたきたきたぁああああああああああ!

 これで一安心できる!


「ちょっと欲しいものがあって。相談相手が居てくれたらなって」

「俺でよかったら相談してほしい」

「ほ、本当?」

「ああもちろん」

「えっと。じゃあ、また昨日の文房具店に2人だけで行きたいなって」

「任せてくれ」

「え! 本当にいいの!?」

「もちろん。断るわけがないよ」


 ん? あれ?


「じゃ、じゃあ今日の放課後はどうかな」

「俺は大丈夫だよ」


 目をパッチリと開けてキラキラさせるミーシャを前に、俺は流れを整理する。


 表ルートの話を進行するべく、困ったことを聞きだした。

 で、もはやその行為自体が困らせてしまった自覚があるものの、別の困ったことを聞き出すことに成功。

 逼迫している状況だから即答し、解決への手助けを承諾した。


 希望していた通りになったわけだけが……。

 目標は関与だけど、目的はカイトと面識を持つことだよな。

 ましてや俺は自然にフェードアウトし、カイトと親密になっていく作戦を――。


「も、もしよかったら俺の親友も連れて行ってもいいかな」

「お友達?」

「ああ」

「ダメじゃないけど……2人だけじゃ、ダメかな」


 急に雰囲気が萎れて上目遣いで、そう申請されてしまいました。

 そんな風にお願いされたら断ることへの罪悪感が増幅されてしまう。


 でも堪えろ、堪えろミナト!

 自分の悲惨な未来を受け入れる覚悟なんてしたくない!

 心を鬼にして、強引に約束を取り付けるんだ!


「あいつも暇を持て余していてさ。可能なら連れて行きたい」

「……そっか。わかったよ。交友関係は大事だもんね」

「ありがとう」

「じゃあ放課後、門のところで待ってるね」

「わかった」

「そろそろ行かないと。じゃあまたね」

「ああ、また」


 再び明るい笑顔を取り戻し、小さく手を振ってミーシャは去って行った。


 無事に目的の方も達成できそうで安心安心。

 深呼吸をし、ついでに肩を上げて下ろす。


 カイトを強引にねじ込んだけど、まあ後でどうにかなるだろう。


「はぁ……なあミナト」

「ん?」


 急に背後から声をかけられて驚きそうになるも、聞き馴染みのある声にすぐ振り返る。


「どうしたカイト、疲れてる顔だな」

「いやさぁ、休み時間に入って気が付いたんだけどさ」

「うん」

「机の中に手紙が入っていてさ。呼び出された場所がバラバラで放課後が今から憂鬱になってるんだ」

「え」

「まだ2人だからいいけど、いやよくないけど。学園を右から左に移動する必要があるんだ」


 な、なんだってぇええええええええええっ!?


「で、でもほら、カイトの身体能力なら時間がかからないんじゃ?」

「おいおい、さすがの俺でも第3演習場から東門までの距離を移動するのは大変だよ」


 な、何ぃ?!

 第三演習場から東門は、カイトが落ち込んでいる通りに学園の端から端だ。

 距離で言うと、5キロはある。

 しかも俺らが使用しショッピングモールへ行くためには、西門へ戻ってこなくちゃいけない。


 西北にある第三演習場から、もちろん直線的に移動できない東門へ行き、再び直線移動ができない西門へ戻ってくる。

 総合すると、約15キロ……もしかしたら20キロはあるかもしれない。

 魔法で移動補助可能だから、実質的な疲労は軽減されるものの。

 カイトは魔法技術が微妙であることから……待っていたら夕方になってしまう。


「どうしたの? 顔色が悪いように見えるけど」

「手紙の差出人に見当があったりは?」

「わからないよ。名前も書いてなかったし」

「今日ぐらい、気づかなかったフリをすることは?」

「さすがにできないよ。断るけど、相手の気持ちを無下にはできない」

「……そうだよな」


 ああそうだ、そういうやつだよなカイトという主人公キャラは。

 ただモテモテなイケメンというわけではなく、相手の気持ちに寄り添い理解しようとし、尊重し無下にしないからこそだよな。

 その言葉の続きは、「告白することは、とても勇気が必要なことなんだから」って言うから。


「告白することは、とても勇気が必要なことなんだから」

「ああわかってるよ。そうだよな」


 ほらね。

 さっきまで表情が曇っていたのはカイトの方だったが、今では物凄く真剣な目と表情で訴えてきている。

 わかっている、俺だって小学校の頃だけど好きな女子に告白したから理解しているさ。


「と、言うことで僕は今日も一緒に帰ることができないから」

「ほどほどに頑張ってくれ、モテ男さん」

「そろそろ落ち着いてくれると嬉しいけどね」

「モテすぎるのも大変だな」

「わかってくれるのはミナトだけだよ」

「いや、同情するし苦労は納得するけど、理解はできないからね? 俺、モテたことなんて1度もないから」

「さあ、それはどうだろうね」

「おいおいおい、忘れたのか? 俺が告白されたのは、人生でたった1度だけ。あの罰ゲーム事件が最初で最後だぞ?」


 実際にはゲーム知識の中で話をするしかないから、確実ではないけど。

 でも現実の俺を基準にしたら、0だからな0!


「実質的に0なんだから、モテてないのは事実だろ」

「まあ、それはそうかもね」

「なんだよ、その言い方」

「そろそろ授業の準備をしなくちゃ」


 話の途中で離脱していくカイト。

 俺も後を追うように自席へと戻る。


 ああ、どうしよう。

 ミーシャとの約束を破棄するにしても、カイトのモテモテ事情を考慮すると次の自由時間がいつになるかわからない。

 だったら断るのは不誠実だし、本当にどうしよう――。

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