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エンドコンテンツ裏ボスである主人公の親友に転生した俺、最強だがいずれ敗北が確定しているため、ハッピーエンドを目指して学園生活を謳歌する  作者: 椿紅颯
第三章

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第19話『おいおい、一件落着じゃないの?』

 寮に到着し、窓から中へ。


 さすがにいろいろなことを経験したから疲れを感じる。

 もちろん肉体的なものではなく精神的なもの。


「ふぅ……」


 こんな調子で物事を進めていたら、いずれハイスペックではない俺の頭ではミスをするだろう。

 どうせ、こんな最強キャラとして生きていくのなら頭の方も改善してもらいたかったな。


「それにしても、改めて見ると贅沢な空間だな」


 自分の部屋は6畳だった気がするけど、間違いなく倍の広さはある。

 それに加えてシャワーやトイレ、キッチンまでもあるのだから10畳以上はあるはず。

 しかもベッドは凄く凄そうだし、部屋の中に机が3つもあって狭く感じないなんて感覚がおかしくなりそうだ。


 もちろん、俺が特別待遇を受けているわけではない。

 カイトの部屋も同じだし、名前も知らない隣部屋も一緒。

 加えるなら、女子寮も同じ構造になっているらしい。

 直接確認したことはないけど、ゲーム内でミーシャが言っていた。


 そういえば、アリサはマンションで生活しているんだったか。


「世界観にも慣れていかないとな」


 今日だって、元々通っていた学校みたいに座学で指名されなかったからよかった。

 内容も正直わからないことだらけで、板書された内容をノートに書き写すだけの時間ばかりだった。


 ずっと実技の時間だったらいいのに、と想い日が来るとはな。

 体育の時間はできるだけ避けたかった人生だったのに、状況通り人生が変わってしまった。


「さて、ご飯を食べに行くか」


 寮の一階にある食堂で提供されているご飯は、本当に美味しい――という設定だ。

 残念ながらゲームを遊んでいるときは描写すらなかった。

 だからこそ楽しみではある。


「ん?」


 ちょうどドアノブに出を置いたときだった。

 コンコンコン、と軽く指でたたいたようなノックが扉を叩く。


「――って、カイトか」

「お、お願いだ。入れてくれ」

「はいどうぞ」


 要望通りに部屋の中へ招き入れる。


「それで?」

「一緒にご飯行こうって誘いさ」

「いいよ。俺もちょうど行こうと思ってたし」

「でも、その前に」


 まさかのまさか。

 カイトは腰の部分から服の中に手を突き上げ、俺が買ってきた雑誌を取り出した。


「お、おい。どうして持ってきたんだ」

「だってほら、やっぱり共有したいと思ったから。そして、次はミナトでしょ?」

「いやいやいや、俺は必要ないって」

「遠慮しなくていい」

「違う違う、全然遠慮していないない。欲しいのはカイトだけだって」


 強引に腹部へ突き付けられ、受け取らない意思を示すために両手を上げ続ける。


「勘弁してくれ」

「ファンションの勉強と思って」

「それはそうだが、持ってること自体が――……なあカイト」

「なんだい?」

「俺に押し付けようとしていないか」

「あはは、ミナトは面白いことを言うね」


 眩しくて目を背けたくなるほど、満面の笑みを披露し始めた。


「絶対にそうだろ」

「わざわざ買ってきてもらっておいて、押し付けるなんて酷いことするはずがないでしょ」

「いーや、だったら『ご飯を食べた後、部屋に呼ぶ』という文言にならないのはなぜだ?」

「……」

「この場合の沈黙は肯定でしかないぞ」


 会話の勢いがピタッと止まり、満面の笑みのまま硬直しているカイト。

 もう答え合わせが終わったも同然。


「ああ正解さ。でも、ファッションの勉強をする名目で受け取ってくれてもいいと思うよ?」

「それはそうだ。興味がないわけじゃないからな」

「なら拒絶する理由はないじゃないか」


 くっ、返す言葉が見つからない。

 実際にアリサと同じくファッションの勉強と理由付けすれば、雑誌を持っていることぐらい普通のことだ。

 部屋の中にあれば誰に見られるわけでもないし、女子に見つかることもない。

 一番警戒しなければならない――あ、そうだ、そうじゃないか。


「――俺は今日、姉さんに追われていた」

「な、なにぃ!? ど、どうして!?」

「詳しいことは俺にもわからない。カイトの情報通りだったから、尾行が始まったのは門限に近い時間だった」

「僕が用事のある時間帯は、間違いなく存在を確認していたのに……」


 驚愕のあまり、カイトは雑誌を持つ手を引いて頭を抱え始めた。

 わかる、わかるぞ。

 信じられない事象に遭遇したときの気持ちに加え、理解が追い付かない絶望感に苛まれているのだろう。

 俺も観測されていないのに追尾されていたとき、全く同じ気持ちが全身を支配していた。


 この世界にはない発信器の存在を疑ったし。


「だから、俺が言いたいことは少しずつわかってくれていると思う」

「ああ……そうだな。勉強のため、という名目で雑誌を持っていたとしても……目を通されたら終わりだ」

「理解してくれて嬉しいよ」


 コントみたいになっているけど、姉の恐怖を俺とカイトは十分に理解――いや、体に浸み込んでしまっている。

 大袈裟じゃない、本当の話。


 俺とカイトが、まだ出会って日が浅かった頃。

 女子が罰ゲームで男子に告白する、という、なんとも悪趣味な遊びをしていたときだった。

 標的にされたのは、偶然にも俺で。

 姉さんが事実を知り、飛ぶ勢いで駆けつけてきたと思ったら――罰ゲームを受けた女子、ならびに隠れて見物していた女子全員をぶちのめしてしまった。

 最初は一方的に、反撃されたとしても鬼のような力を発揮してボロボロになりながらも噛み付き蹴飛ばし頭突きをし。


 しかも後日、謝りに来た女子が提案してきたのは別の男子だった、という事実を知ってからは――事前通告なしに全速力の助走から背中に跳び蹴りを入れ、自分よりも体格が大きい男子をぶっ飛ばしてしまった。


「しかも今だと、魔法も扱えるから……」

「僕のみを守るだけじゃなく、ミナトを守るためにも責任をもって所持し続けるよ」

「ああ、頼む。あぁっ!?」

「ど、どうした!?」


 ま、マズい、不味いぞ。


「今日知り合ったばかりの女子だけど、偶然にも書店で再開して雑誌を買うことを知られている」

「な、なんだってぇー!?」

「どうしよう」

「れれれれれ冷静になるんだミナトトトトト」

「俺よりも動揺してどうする」


 普段の爽やかイケメンボーイが、身振り手振りと表情を一変二変させて挙動不審になっている。


「その子とカリナさんは、まだ顔見知りじゃないよね?」

「ああ、辛うじて。存在も察知されていない」

「じゃあ大丈夫じゃない? 明日からの学園生活でも関わらないようにしたらいいわけだし。関係性も浅いんでしょ?」

「それはそうだが――」


 カリナ姉さんに殴られ蹴られボコボコにされたとして。

 体が痛そうな演技をして誤魔化すことができるだろうか。


 それよりも以前の話。

 ここで即答できないのは、裏ルートのメインヒロインという重要ポジションだからだ。

 ミーシャとの関係を断ち切ることができないように、アリサとの関係性も切ることはできない。

 一定の距離を保ちつつ、カイトとの関係性を深めてもらわないと困るんだ。


 ど、どうすればいい。


「カイトを紹介する、という約束をしてしまっている」

「なぁにぃをしぃてぇいるぅんだぁ!」

「あのときは、俺の学園生活が脅かされる危機的状況だったから仕方がなかったんだ」

「でも今は、学園生活どころか生命的な危機的状況に陥りかけているよ」

「くっ……完全に失敗した」


 でも本当に、あのときは最善を尽くした。

 ちゃんとストーリーをハッピーエンドへ導くための、『カイトへ紹介する』という大事な任務を果たすことができたわけだし。

 だけど、最重要人物への警戒を怠っていた……。


 エンドコンテンツルート的な話でもそうだし、最強キャラを倒すことができる天敵という存在だというのに。


「とりあえず、ご飯を食べながら作戦会議をするしかない」

「明日までに案を練らなくちゃいけないから、消灯時間ギリギリまでやろう」

「そうしよう。頼むカイト」

「当たり前だ。僕たちは親友じゃないか」


 平静を取り戻した……であろうカイトは、真剣なまなざしで手を差し出した。


「ああ、さすがは俺の親友だ」


 俺は勢いよく、そして力強く手を握り返した。


「でもまずは雑誌を部屋に置いてきてからで頼む」

「そうだった、忘れてた」

「忘れるなーっ」


 物語の流れでカイトと接する分には、本当の交友関係を築いていけそうで嬉しい気持ちは本物だ。

 人生で初めての“親友”という存在に心が温かくなる感覚がするし、心の底から話し合えているような気がする。

 なんていい関係性なのだろう。

 今願っても仕方がないけど、こういう親友が欲しい人生だったな。


 ああ……それはそれとして。

 明日からの生活が一気に恐怖と隣り合わせになってしまった。

 ゲームを遊んでいるときは達観していたからよかったけど……アレが自分に向けられると考えるだけで全身が震えてしまう。


「――よし、行こう」

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