第37話 魔王 vs 影の魔王・決着
影界・最深層。
光のない空間に、ヴァルナと“影のヴァルナ”が向かい合う。
影のヴァルナは、ヴァルナと同じ姿。
同じ杖。
同じ魔力。
ただし、その瞳だけが深い闇のように冷たかった。
「……来なさい。
“弱さを抱えたまま進む自分”を超えてみせて」
影が杖を構える。
ヴァルナも俺を構えた。
「……行くよ……!」
(さあ、決着だ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
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影のヴァルナが先に動いた。
「闇の——連撃」
バチバチバチッ!!
黒い矢が連続で放たれる。
「ひぃぃぃ!!」
「魔王よ!!
筋肉で避けろ!!」
「避けられないよぉぉぉ!!」
(いやバルゴの声が最深層まで届くなよ!!)
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ヴァルナは必死に走った。
魔力が巡る。
走るたびに、魔力が流れ、整っていく。
「魔力が……走ってる……!」
(そうだ、その感覚を掴め)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
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「闇の……矢!!」
バチッ。
黒い光が影のヴァルナへ向かって飛ぶ。
影のヴァルナは冷静に受け止めた。
「……悪くない。でも——」
影が広がり、魔法を飲み込む。
「あなたの“弱さ”が残っている限り、私は消えない」
「うぅ……!」
(いや影の言葉が刺さりすぎるだろ)
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影のヴァルナがさらに踏み込む。
「あなたはまだ怖がってる。
魔王候補も……
王国も……
猫も……」
「猫は怖くないよぉぉぉ!!」
(いや猫は怖くないだろ)
「でも……自分が“魔王として認められない”のが怖いんでしょ?」
「っ……!」
ヴァルナの動きが止まる。
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リュシアンが静かに言った。
「魔王ヴァルナ。
影は“弱さ”を映す。
だが——弱さを否定する必要はない」
「えっ……?」
「弱さを認め、抱えたまま進む者こそ……
本当の“魔王”だ」
(おお……急に名言きたな)
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ヴァルナは涙を拭い、影の自分を見つめた。
「……そうだよ……
私は弱い……
猫にも振り回されるし……
筋肉にもついていけないし……
魔王候補にも怖いって思う……!」
影のヴァルナの動きが止まる。
「でも……!」
ヴァルナは胸を張った。
「弱いままでも……
私は魔王になりたい!!
だから……前に進むの!!」
(……よく言った)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
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影のヴァルナがゆっくりと微笑んだ。
「……なら、証明してみせて」
影が杖を構える。
「“弱さを抱えたまま進む自分”が……
本当に強いってことを!」
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ヴァルナは深呼吸し、俺を構えた。
「……行くよ……!」
魔力が巡る。
走るように、流れるように。
「闇の——矢!!」
バチィィィッ!!
黒い光が一直線に走る。
影のヴァルナも叫ぶ。
「闇の——矢!!」
二つの魔法がぶつかり合い、
影界が震えた。
光と闇が混ざり合い——
そして。
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影のヴァルナが、静かに崩れた。
「……やっと……
あなたは“弱さ”を抱えたまま……
前に進めたね……」
「……うん……!」
影のヴァルナは微笑み、
光となって消えていった。
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リュシアンが静かに頷いた。
「……見事だ、魔王ヴァルナ。
貴様は“自分自身”を超えた」
「……!」
「これで……最後の試練は終わりだ」
(お前……本当に強くなったな)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
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影界がゆっくりと崩れ始める。
「……帰ろう、魔王ヴァルナ」
「うん……!」
ヴァルナは涙を拭き、
まっすぐ前を向いた。




