第36話 魔王 vs 影の魔王
影界・最深層。
光のない空間に、ヴァルナと“影のヴァルナ”が向かい合っていた。
影のヴァルナは、ヴァルナと同じ姿。
同じ杖。
同じ魔力。
ただし——
その瞳だけが、深い闇のように冷たかった。
「……あなたは魔王じゃない」
「っ……!」
「猫に頼って……
筋肉に振り回されて……
魔王候補にも勝てなくて……
弱いまま……!」
「うぅ……!」
(いや影が容赦なさすぎるだろ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
---
影のヴァルナは、さらに言葉を重ねた。
「あなたは“魔王”なんて名乗る資格ない。
本当は分かってるでしょ?」
「……っ……!」
ヴァルナの手が震える。
「私は……私は……!」
(お前、ここが踏ん張りどころだぞ)
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影のヴァルナが杖を構えた。
「闇の——矢」
バチッ。
黒い光がヴァルナへ向かって一直線に飛ぶ。
「ひっ……!」
「魔王よ!!
筋肉で受け止めろ!!」
「受け止められないよぉぉぉ!!」
(いやバルゴの声が最深層まで届くなよ!!)
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ヴァルナは必死に俺を構えた。
「闇の……盾!!」
バチッ。
黒い光がヴァルナの周囲に広がり、
影の魔法をギリギリで弾く。
「……でも……!」
ヴァルナは涙をこらえながら叫んだ。
「私は……弱いままじゃ終わらない……!
魔王として……前に進むって決めたの!!」
(……そうだ、それでいい)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
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影のヴァルナは冷たく笑った。
「じゃあ証明してみせて。
“弱い自分”を超えられるって」
影が揺れ、空気が震える。
「——“影界・同調”」
影のヴァルナの魔力が跳ね上がった。
「な、なにこれ……!?
私の魔力と……同じ……?」
「そう。
私はあなたの“弱さ”そのもの。
あなたが強くなれば、私も強くなる」
(いやラスボス仕様すぎるだろ)
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影のヴァルナが杖を振り上げた。
「闇の——連撃」
バチバチバチッ!!
黒い矢が連続で放たれる。
「ひぃぃぃ!!」
「魔王よ!!
筋肉で避けろ!!」
「避けられないよぉぉぉ!!」
(いやバルゴの声が邪魔すぎる)
---
ヴァルナは必死に走った。
「……でも……!」
魔力が巡る。
走るたびに、魔力が流れ、整っていく。
「魔力が……走ってる……!」
(そうだ、その感覚を掴め)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
---
「闇の……矢!!」
バチッ。
黒い光が影のヴァルナへ向かって飛ぶ。
影のヴァルナは冷静に受け止めた。
「……悪くない。でも——」
影が広がり、魔法を飲み込む。
「あなたの“弱さ”が残っている限り、私は消えない」
「うぅ……!」
(いや影の言葉が刺さりすぎるだろ)
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リュシアンが静かに言った。
「魔王ヴァルナ。
影は“弱さ”を映す。
だが——弱さを否定する必要はない」
「えっ……?」
「弱さを認め、抱えたまま進む者こそ……
本当の“魔王”だ」
(おお……急に名言きたな)
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ヴァルナは涙を拭い、影の自分を見つめた。
「……そうだよ……
私は弱い……
猫にも振り回されるし……
筋肉にもついていけないし……
魔王候補にも怖いって思う……!」
影のヴァルナの動きが止まる。
「でも……!」
ヴァルナは胸を張った。
「弱いままでも……
私は魔王になりたい!!
だから……前に進むの!!」
(……よく言った)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
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影のヴァルナがゆっくりと微笑んだ。
「……なら、来なさい。
“弱さを抱えたまま進む自分”を……超えてみせて」
影が杖を構える。
ヴァルナも俺を構えた。
「……行くよ……!」
(さあ、決着だ)




