第32話 王国、魔王の急成長を誤解して大騒ぎする
リュシアンとの本気の戦いから一夜明けた頃。
魔王城ではヴァルナが筋肉痛でうめきながら寝込んでいた。
「うぅ……全身が……痛い……
魔力筋トレ……地獄……」
「魔王よ!!
筋肉痛は成長の証だ!!」
「証いらないよぉぉぉ!!」
(いやバルゴの声量で余計に痛みが増してるだろ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
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その頃、王国では——。
「報告!!
魔王が……急激に強くなっています!!」
「な、なんだと!?」
王国軍本部がざわついた。
「魔王の魔力反応が、ここ数日で“跳ね上がって”います!
これは……何かの修行をしている可能性が……!」
「修行!?
魔王が修行なんてするのか!?」
「分かりません!
ただ……魔力の流れが以前より“滑らか”になっており……
これは……“筋肉の動き”に近い……!」
「筋肉!?」
(いやなんで魔力の流れから筋肉を連想するんだよ)
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「ま、まさか……魔王が……」
「筋肉で強くなっているのでは……?」
「そんな馬鹿な!!
魔王が筋肉で強くなるわけ——」
「しかし、魔力の波形が“スクワットのリズム”に似ているのです!」
「スクワットのリズムって何!?」
(いや魔力分析班どうなってんだよ)
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「さらに……魔王城周辺で“地鳴り”が頻発しています!」
「地鳴り!?
魔王が暴れているのか!?」
「いえ……どうやら……
“巨大な何者かがスクワットしている音”のようで……」
「スクワット!?」
(いやそれバルゴだよ!!)
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「これは……魔王が……」
「筋肉でパワーアップしている可能性が高い!!」
「なんでそうなるのぉぉぉ!!」
ヴァルナの悲鳴が遠く魔王城から聞こえた気がした。
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王国軍は大慌てで作戦会議を始めた。
「魔王が筋肉で強くなるなど前代未聞だ……!」
「対抗するには……こちらも筋肉を鍛えるしか……!」
「よし! “対魔王筋肉部隊”を結成する!!」
「なんでそうなるのぉぉぉ!!」
(いや魔王城からの悲鳴が聞こえるレベルで誤解がひどいな)
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こうして王国は、魔王の急成長を完全に誤解し、
“筋肉で強くなる魔王”という謎のイメージを抱いたまま、
対抗策として筋肉部隊を作り始めてしまうのだった。
(いや世界が筋肉方向に進むのやめろ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」




