第22話 魔王、猫のせいで認められず大爆発する
グラドとセレネという二人の魔王候補が、
猫のせいで連続撤退してから数日。
魔王城は今日も平和だった。
「闇猫様〜! 本日の献立は“闇のカリカリ・極・真・究”です〜!」
「闇猫様〜! 肉球クリーム“神”をご用意しました〜!」
「闇猫様〜! 闇猫騎士団、本日の巡回に入ります〜!」
(いや命名がインフレしすぎだろ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
ヴァルナは猫を抱きしめたまま、ぷるぷる震えていた。
「……ねえ……杖……」
(お?)
「私……気づいちゃった……」
(嫌な予感しかしない)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「なんで光るのぉぉぉ!!」
ヴァルナはついに叫んだ。
「**なんで私、猫のせいで魔王として認められないのぉぉぉ!!**」
(いやまあ……事実だけど)
「グラドも! セレネも!
みんな猫にビビって逃げていくし!!
魔王軍は猫ばっかり崇拝するし!!
王国は猫対策部隊とか作るし!!
なんで私じゃなくて猫が中心なのぉぉぉ!!」
(いや全部初期不良のせいだよ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「今の光るのも猫のせいにされるぅぅぅ!!」
「魔王様……!」
ガルドが跪いた。
「お気持ちは分かります……
ですが、闇猫様は偉大なお方……!」
「違うのぉぉぉ!!
私は魔王なのぉぉぉ!!」
「もちろんです!
闇猫様の次に!」
「次じゃないぃぃぃ!!」
(いや順番おかしいだろ)
「魔王様、落ち着いてください。
魔王様の魔力は猫を中心に循環しているのですから——」
「循環してないぃぃぃ!!」
(いやしてるように見えるけどな)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「にゃあ」
猫が鳴いた。
魔王軍は一斉に跪いた。
「闇猫様……!」
「お言葉を……!」
「今日もお美しい……!」
「違うのぉぉぉぉぉ!!
なんで猫が魔王みたいになってるのぉぉぉ!!」
(いやもう完全に魔王だな)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「もうやだぁぁぁぁぁぁ!!
私、魔王なのに!!
なんで猫の方が強いのぉぉぉ!!
なんで猫の方が人気なのぉぉぉ!!
なんで猫の方が魔王候補に効くのぉぉぉ!!」
(いや全部事実なんだよな)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「なんで光るのぉぉぉ!!
もうやだぁぁぁぁぁ!!」
「にゃあ」
猫がヴァルナの膝に乗った。
「……っ」
ヴァルナは涙目で猫を見つめた。
「……かわいい……」
(いや落ちるの早いな)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「……でも……!」
ヴァルナは猫を抱きしめながら立ち上がった。
「このままじゃ……
“猫の魔王”って呼ばれちゃう……!」
(いやもう呼ばれてるけどな)
「私は……“魔王ヴァルナ”として認められたいの!!
だから……!」
ヴァルナは俺をぎゅっと握った。
「猫に頼らず……魔王として強くなる!!」
(お、ついにやる気になったか)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「今の光り方……応援してくれてる……?」
(まあ、そういうことにしておくか)
こうして、ヴァルはついに“猫依存の魔王”から脱却するため、
本気で強くなる決意を固めたのだった。




