第21話 新たな魔王候補、登場
グラドが猫アレルギーで涙目撤退してから三日後。
魔王城はようやく落ち着きを取り戻していた。
「……はぁ。
やっと猫の話題から離れられる……」
(いやお前が言うなよ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「なんで光るのぉぉぉ!!」
突然、魔王城の上空に黒い亀裂が走った。
「な、なにこれ……!?」
「魔力反応……強いです!!」
ミュリエルが叫ぶ。
亀裂から、ゆっくりと“何か”が降りてきた。
黒いローブ。
長い杖。
顔はフードで隠れている。
「……また魔王候補……?」
(いや雰囲気が完全に“強キャラ”だな)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
ローブの人物は静かに着地し、フードを外した。
現れたのは——
銀髪の美青年。
冷たい目。
圧倒的な魔力。
「……我が名は——
**セレネ=ノクティス**。
魔王候補の一人だ」
「うわ……強そう……」
(いやグラドと違って本当に強そうだな)
「……まず確認したい」
「えっ……な、なに……?」
「この城……“猫の支配下”にあるのか?」
「違うのぉぉぉ!!」
(いやなんで初手で猫の話題なんだよ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「……先日、魔王候補の一人グラドが敗走したと聞いた」
「えっ……あれは……!」
「“猫に敗北した”と」
「違うのぉぉぉ!!」
(いや事実だけど違うんだよ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「安心しろ。
私は猫アレルギーではない」
「そ、そうなんだ……」
「ただし——」
セレネは真剣な顔で言った。
「**猫が苦手だ**」
「えっ」
(いやアレルギーじゃなくて苦手なだけかよ)
「……猫は……読めない。
何を考えているのか分からない。
突然走る。
突然止まる。
突然こっちを見る。
怖い」
「完全にただの苦手じゃん!!」
(いや魔王候補の弱点が小学生みたいだな)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「だが……猫がいなければ問題ない。
私は魔王の座を狙う者。
貴様を倒し、その資格を証明する」
「うぅ……!」
(いや猫がいなければ普通に強敵だな)
「にゃあ」
猫が通りかかった。
「…………」
「…………?」
「…………っ」
セレネの顔が引きつる。
「や、やめろ……近づくな……!」
「にゃあ」
「ひっ……!」
(いや魔王候補二人連続で猫に弱いのかよ!!)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「くっ……!
今日は……退く……!」
「えっ!? は、早っ!!」
「次は……猫を……どこかに……しまっておけ……!!」
「にゃあ」
「ぎゃああああああああ!!」
セレネは空間を裂いて逃げていった。
「魔王様……!
また闇猫様が敵を撃退しましたね!」
「闇猫様……最強……!」
「闇猫様こそ真の魔王……!」
「違うのぉぉぉぉぉ!!」
(いやもう訂正無理だろ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
こうして、二人目の魔王候補も猫によって撃退され、
魔王城はますます“猫の聖地”としての地位を固めてしまうのだった。




