第20話 魔王候補グラド、意外すぎる弱点が判明する
魔王城前で対峙するヴァルナと魔王候補グラド。
空気は張り詰め、魔力がぶつかり合う——
……はずだった。
「いくぞ、ヴァルナ=ディアボロス。
貴様の“猫魔術”……見せてもらう!」
「猫魔術じゃないぃぃぃ!!」
(いや初期不良だって言ってるだろ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「我が剣は闇を裂き、魔を断つ……!
覚悟しろ、新魔王!!」
グラドの背中の巨大な剣が黒い光を放つ。
「うぅ……!
闇よ……我が呼び声に応え——」
(その詠唱やめろ恥ずかしいから)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
風が吹いた。
ふわり。
ヴァルナのローブの袖が揺れ、
その中から——
猫の毛が一筋、ひらりと舞い落ちた。
「……ん?」
グラドの目がそれを捉えた瞬間。
「…………」
「…………?」
「…………っ」
グラドの顔が、みるみる青ざめていく。
「お、おい……どうした……?」
ガルドが心配そうに声をかける。
「ま、まさか……!」
ミュリエルが震えながら呟く。
「猫アレルギー……!?」
(いや強敵の弱点そこかよ!!)
「くっ……!
ち、近づくな……!」
「えっ!? な、なんで!?」
「猫の……毛……!
お、俺は……猫アレルギーなんだ……!!」
「にゃあ」
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!」
グラドは全力で後ずさった。
(いや魔王候補が猫に怯えてどうする)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「ま、魔王候補が……猫に弱い……!?」
「闇猫様の天敵……!」
「闇猫様の勝利……!」
(いや戦ってないだろ)
「ち、違う……!
俺は猫が怖いわけじゃない……!
ただ……鼻が……!
鼻が……!!」
グラドの鼻が真っ赤になり、くしゃみが止まらない。
「へっ……へっ……
へくしょおおおおおおおおい!!」
その衝撃で地面が割れた。
(いやくしゃみで地割れ起こすなよ!!)
「え、えっと……その……大丈夫……?」
「近づくなぁぁぁ!!
猫の毛が……! 猫の毛がぁぁ!!」
「にゃあ」
「ぎゃあああああああああ!!」
(いや魔王候補の威厳どこいった)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
「くっ……!
今日は……退く……!」
グラドは涙目で森へ逃げていった。
「覚えていろ……!
次は……猫を……連れてくるな……!!」
「にゃあ」
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!」
森の奥へ消えていった。
「魔王様……!
闇猫様の力で敵を撃退しましたね!」
「闇猫様……最強……!」
「闇猫様こそ真の魔王……!」
「違うのぉぉぉぉぉ!!」
(いやもう訂正無理だろ)
宝玉が光る。
「ひゃああああああああああ!!」
こうして、魔王候補グラドの“意外すぎる弱点”が判明し、
魔王城はまたしても猫の威光に包まれるのだった。




