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第99話 麗美と浸食3


「俺に勝てるとでも?」


「貴方のことはずっと今まで見てきた。誰よりも注意深く観察して、注視して、分析して、共鳴して、何から何まで私はあなたを知り尽くしている」


「何を言ってるんだ」


「思考も考えも何から何まで手に取る様に分かるわ。さあ、始めましょう。私はαの神器の力をもつもの。あなたを私は手に入れて見せる」


 麗美がαの神器の力を持っている?


 そんなことはどうでもいい。とにかく今は目の前のこいつをどうにかする。


 そして麗美を救う。


 深層心理の世界で麗美は影を伸ばしてきた。


「またその攻撃かよ、いい加減芸がないんじゃないのか?」


「ここは私の世界、影は無限に増殖して、あなたを確実にとらえる」


「スキル発動『加速』」


「それも私はよんでいる」


「何?」


 動きが静止した。


「ごめん、あなたに対処できるようになっちゃった」








「ちょっと、春樹、麗美、どうして2人が倒れるのよ。夏菜ちゃんと里音ちゃんに連絡付けておいてよかった2人も今起きてるなんて勘がいいんだから」


「由愛ちゃん」


「何?」


 次の瞬間、麗美の体が動き出した。


「βの適合者として気分はどう?」


「え? どういうこと」


「ああ、もう一人いた。里音さん」


「麗美を返しなさい」


 ガタッ、同じタイミングで扉から里音と夏菜が現れた。


「やあ里音ちゃん、私はαだよ。あなたを由愛とのことでもてあそぶのは楽しかったな」


「嘘でしょ、なんで麗美がα?」


「騙されちゃだめよ。こいつははったりを言ってる。闇の麗美はそういうやつ」


「夏菜ちゃんは論外だよね。弱いのに文句だけ言って。っていうか優戸がいるんだからもうあなた出てこなくていいよ。私と同罪じゃん」


「黙りなさい!」


「この混沌とした叫びの怨嗟は心地がいい。この中にこそ私は生を実感できる。ねえ春樹君、今どんな気持ち? 動けない中でみんなが蹂躙されていくのを見るのは」


「何考えてんのよあんた」


「うーんとね。春樹君意外みーんな邪魔だから消えてくれない?」









「お前って奴は」


「凄い凄い、やっぱりそのレベル100スキルは強すぎるね。私がγから盗んだ抑制を受けても動けるなんて意味が分からない。君はいつだってそのスキルで多くの強敵を倒してきた。ナノのボスの内村礼に、大陸最強の冒険者ライズ、そして魔王フロロメさえもね。でも強すぎるがゆえに君は負けるのよ」


 麗美は影を針にして俺にあててきた。


「ぐっ」


 紙一重でそれを交わした。


 麗美にA以上のスキルを使えば、絶命させてしまう。


 でも今の麗美はBだけじゃ対応できないくらい強い。


「怖いんだよね。私を葬るのが、その弱さに漬け込んでこそ私は愉悦を感じられるの」


「いつからそんな力を手にいれたんだ。お前はいったいなんなんだ」


「αの神器は具現化の力。その転生体は理想を具現化する力。ずっとずっと憧れてた。あなたの戦いを満ちたりるくらいの力を手に入れるには、敵陣に乗り込む必要がある。αはずっと私を狙っていたんだわ。私は貼り付けにされて、力を注入された。これは誰も知らないジョーカーともいえる力」


「何」


「君の力を一目見た時から私はこれを求めてた。最強の君を倒す方法。極限の戦いはあなたの愛する私で行うことで、成り立つってね」


「お前はずっとαだったのか」


「内村礼を利用して、転生体を利用して、ライズとアートの目を欺き、最後まで本命を隠し通した。全部この時のために。私はついにあなたを手に入れる」


「何を言って」


「さあ、時間よ王子様、あなたと一体化する」


「はっ」


 更なる麗美の深層心理に入った。






「えへ、春樹君」


「麗美?」


「ぐはっ」


 俺は腹部を麗美に貫かれた。


 私の表情はどうだった? ずっと春樹君にばれないように笑顔を頑張って作ってたの。


「やめろよ」


「こんな感じかな? みんなに好かれる麗美ちゃんって」


「やめろよ」


「いいな穂美香ちゃんと礼君は、私も2人みたいにあなたとユートピアで過ごしたいものだ」


「……」


「いやあ、本当にライズには感謝しないと。一番人に近づいた個体はβじゃなくてこの私αってことよね。内村礼も気づかない、深層心理にひそむαの意思こそが私なのよ」


「何が目的なんだよ」


「目的は君に助けられた時のあの感情をもう一度味わうことだよ。助けられるってとっても高揚するのよ。ねえ春樹君もう一度私を助けてみない? 一緒にゲームの世界で欲求のまま過ごすの」


 負の感情が流れ込んでくる。


 ぶっちゃっけこの世界は腐っている。いつも理不尽が付きまとうからだ。都合のいい状況なんて起きたことがない。全てが不都合な状況へとつながる。


「それもいいかもな」


「そうよね。私はずっと笑顔でいることを心得ていた。でもそれは作り笑顔、理不尽な現実によるね。もう私は作り笑顔は散々なのよ」


「俺は日常に戻りたい」


「無理だわ。ゲーム世界を一度味わったものをその境を彷徨うことになるの。もう現実に戻るのは困難よ。理想の都合のいい世界の中にいられる高揚感はなにものにも代えがたい究極の果実なの。君は日常には戻れない。力を行使し続けたい欲求には勝てない」


「そんな……」


 確かにこのレベル100スキルを持ちながら日常に俺は戻れるのだろうか。


「どう、麗美の人格は完全に私が掌握した。 いっかいあなたもゲームの世界につかってみない?」


「ふざけるな! レベル100スキル『弾丸』」


 麗美の周囲を無数の弾丸が覆った。


「陰よ」


 無数の弾丸を麗美は全て弾き飛ばした。


「乱れ陰」


「ぐああああああ」


 麗美に完全に俺の動きはよまれていた。スキルを打つタイミングと挙動、全てにおいて先手を取られていく。


「ぐああああ」


「あはははは、まだまだこんなもんじゃ終わらないよ。みなよこれを」


 麗美は外の映像を出してきた。


「夏菜!」


 なぜか深層心理にいる麗美の体が動いていた。そばには里音先輩と夏菜と由愛がいる。


「早く来ないと夏菜ちゃんたちが大変なことになるよ?」


「こここまでする奴だとは」


「私は学習したんだよ。フロロメもライズも全部フェイク。本当の敵は私であなたを手に入れるために、この時を待ってた」


「おい、やめろよ」


「じゃ、春樹君始めようか」


「何やってんのよ麗美、やっぱりそっちの人格はろくでなしね」


「もう一回あなたに私を救ってほしいな春樹君。今からみんなを八つ裂きにするから、そんな私を止めてみてよ。今度はね、容赦はしないよ」


 スキルに飲まれた麗美の身体能力は女子高生のそれをゆうに超えていた。


「ぐはっ」


「夏菜!」


「次」


「ぐっ」


「里音先輩」


「やめ、やめて……」


「由愛ちゃんは見逃してあげる。彼女がいないと私は力を使えないから」


「い、いやああ」


 由愛は意識を失った。屋上には夏菜と里音先輩が倒れている。


「みんな倒れちゃったね。あなたは私の手のひらでころころ転がされてただけなのよ」


「黙れ!」


「目を覚ませよ麗美」


「弱いね春樹君、この期に及んでまだ麗美が救えると思ってるの?」


「ライズを異世界に送って神器を回収させてこれで脅威はなくなった。後は私がΩから引き継いだ力で再びすべてをゲームの世界で染めるの。みーんなあなたの仲間も始末して、抜け殻になったあなたの傍にいてあげるね」


「そんなことさせるか」


「つくづく凄いよね。αとΩを組み合わせた拡大の力は。礼君が使ってたのをみてたら私、ぞくぞくしちゃった。まさに神から授かった力だよ」


「まだ穂美香と礼がいる」


「穂美香ちゃんと礼君は、私の幻影を見て幽閉された。彼らが入った世界は二度と戻れないゲームの世界」


「そんな」


「全てが終わるんだよ。私の計画どうり、あなたと二人っきりになる時がきたの」


「ふざけんなああああああああああ!」


「え? ぐはっ」


 俺は麗美を能力で貫いた。


「あ、あははは、うわあ、驚いた。これじゃ麗美ちゃんしんじゃうよ」


「う、うわああああ」


 次の瞬間麗美の人格が戻った。


「春樹君」


「ご、ごめん」


「私達、これが終わったら付き合うはずだったよね」


「いや俺は付き合いたかった。俺たちはこれから失われた中学時代の続きをするはずだったろ!」


「その後は結婚して、幸せな家庭を作りたかったな」


「それは俺も同じ意見だよ」


「ありがとう、私を止めてくれて」


 麗美の目は光を失い精神世界で倒れた。


 なんでこうなった。俺は麗美と一緒に過ごす時間を手に入れたはずじゃなかったのか。


 ゲームの世界の脅威をナノからもライズからも。


 最強スキルは全てを変える力があるはずだ。無力な時の俺とは違う。このスキルがあれば何でもできはずだ。


「もうスキルはいらないだからありったけのレベルSを超えたスキルを」


「ラストスキル「蘇生」」


「ごめん麗美」


 俺は涙を流しながら、意識が亡くなった麗美を取り戻すためにスキルと呼吸を送った。


 その後世界はゲームの世界に包まれた。


「面白かった、続きが読みたい!」


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