第98話 麗美と浸食2
「もしかして俺たちがさっきまで麗美を認知できなかったのって」
「ええ、さっき私は精神を邪悪なスキルに飲まれそうになった。その兆候が出たの」
「そんな、ことって」
「いい聞いて、私が消えたら本格的に表の麗美へのスキルの浸蝕が始まる。そしたら私がいない麗美を支えてあげられるのはあなただけ、人格を乗っとられないようにしろとはいわない。せめて、押さえてあげて」
「乗っ取られたら終わりだろ」
「大丈夫、私が抑えている間に表の私も少しずつ耐性をつけていたの。だからあなたが支えてあげればきっと戻って来れるわ。私が消えた瞬間、表の麗美の記憶は統合される。彼女には辛いと思うけど、今の麗美は全ての記憶があるわ」
「そんなことって、浸食がすぐ始まるのか?」
「最後にこうしてあなたと一緒に入れてよかった。私はもう少しで消えそうだけど、春樹君の知ってる麗美のことはここまで守れた。後はあなたに託すだけ。最後にこれだけは言わせてあなたが好きだった」
「おい、まって」
3つ目の人格の麗美が消失した。同時に麗美は気を失った。
「-」
「おい、麗美しっかりしろ」
「はっ」
次の瞬間麗美が再び目を覚ました。こっちはいつもの麗美だ。
「は、春樹君、苦しいよ」
これがさっき言ってた侵蝕って奴か。麗美の目が赤く覆われようとしてる。
「待ってろ、今助けてやる」
「やっぱり私は間違いをおかしちゃったみたい。このスキルは手に入れるべきじゃなかった中学の頃を思い出す。私はあなたに恋をしたんだ」
―
麗美、あなた最近凄いテンション高くない。
私恋をしちゃったの。
友達にそんなこと言ったけど私じゃ、手が届かないみたい。
「ブルルルルル」
「―」
「どうして出てくれないの。ごめんなさい私が全部無能だから。もっと強くならなくちゃ」
―
「俺も中学時代同じ過ちをおかした」
「過ち?」
「俺はあの時麗美と離れるのがいやだったから恐怖に飲まれたんだ」
「恐怖?」
「そう、恐怖に飲まれるな麗美! 恐怖は人の思考を鈍らせて闇に落とす。正常な判断が出来なくなるんだ。だから心を強く持つんだ」
「そんなの無理だよ。もうすぐ私は消えるかもしれない。そしたら春樹君にもう会えなくなる、怖い、怖いよ」
中学の俺は無力だった。ただ、自分の力のなさで世界を恨むことしかできなかった。でも今は違う、今の俺には力がある。もうあの時のようにはならない。
恐怖に飲まれた中学時代とは違う、今は無理にでも引き寄せる。
「麗美いつもありがとう」
俺は麗美を抱きしめた。
「春樹君、嘘、何? どうして」
「気にすんな、今俺が助けてやる」
「あはは、痛みをあたえてあげる」
麗美の人格が交差する。
「お前はでてくるな」
「心配ないよ。ごめん、今のはなんでもない、えへへ」
「麗美?」
「作り笑いはめなよ。もうお前の存在が消えるんだ」
「っ」
「ガシャアアアアア」
麗美の影が辺りを覆ってドアを突き抜けた。
「これで私は完全に精神を掌握した。由愛ちゃんの傍にいなくても人格を保てるわ。じゃあね、春樹君また会いましょう」
「待てよ!」
麗美はどこかに消えていった。
「どうしたの春樹氏?」
由愛、大変だ。麗美がスキルに飲まれた。
「嘘でしょ?」
「今から追わないと」
「分かった」
俺たちは極寒の夜に外を出ていった。
「ブルルルル」
麗美から電話がかかってきた。
「やあ、そろそろケリをつけない? 中学の屋上で待ってる」
「待ってろ、麗美」
「うん、ありがとう」
電話越しの麗美の声は2つの人格が交錯していることが感じ取れた。
「春樹氏、どこにいくの?」
「中学の屋上へ」
「うん」
「捕まってって、ちょっと急ぐ」
「え? ちょっと、なにこれ凄」
レベル100スキル「跳躍」で俺は由愛を抱えながら中学の屋上に飛び立った。
「麗美!」
屋上には麗美が立っていた。屋上の一番の高台、その上空には月が出ていて、彼女の赤い目が反射している。
「覚えてる? ここで私たちは付き合っていた」
「ああ」
「私からの招待状よ王子様、精神世界で決着をつけましょう」
麗美は手を広げて無防備になった。
精神世界? スキルを使えってことか。
「レベル100スキル『テレパス』」
俺は麗美の深層心理の中に入り込んだ。
麗美の深層心理の世界では全てが闇に覆われていた。
「王子様、答えはでたかしら? これは私からのプロポーズよ」
「お前に麗美は渡さない」
「やっと2人っきりになれた。この心理世界は私の制御下になる。あなたは私のものになるのよ。ここから出しはしない」
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