第93話 かつてのαへみんなで仕返し
「やあ久しぶりだね、ぶっ」
由愛が礼をぶん殴った。
「ちょっと由愛なにやってんの」
「こいつの顔、本当にむかつくわ。あの時の仕返し」
「ふふ、言い返すこともできないよ」
「由愛、そこを変わりなさい」
「なに、夏菜ちゃん」
「私もぶん殴るわ」
「いいね! いいね」
「ドカっ」
夏菜は内村礼に思いっきりパンチした。
内村礼が倒れた。
「おい、大丈夫か?」
「心配ありがとう春樹君、でもこれは仕方のないことだ。気が済むまで君も殴るといい」
「いや、殴る気が全く起きないんだけど」
「春樹、ちょっとそこ変わって」
「何、里音先輩も加担するの?」
「しないわよ。私はそんなこと」
そういうと里音先輩は内村礼に手を差し伸べた。
「あなたとはこれから協力関係にありたい。よろしくね」
「ああ、よろし、ぶっ」
里音先輩は内村礼に手をつないだ瞬間離して、蹴っ飛ばした。
「でも、それとこれとは別。あなたにやられた仕返しはここでさせてもらうわ」
「ふう、いたたっ、さっきのは効いたよ」
「一番やりすぎてた気がするんだけど」
「あははは、みんな手ひどいね」
「麗美、アンタもやりなさいよ」
「えー、可哀そうだよ」
「何言ってるの! こいつはそれくらいのことをしたんだよ」
「構わないさ、君も好きにするといい」
「はわわわ、分かったよ。えいっ」
「ドカッ」
「いたそー」
麗美のパンチが内村礼の顔にヒットした。
力は弱いものの当たり所が悪かったようだ。
「あ、ごめんなさい! 顔を狙ったつもりはなかったの」
「あれ、なんか倒れたままじゃない」
「もしかして気絶しちゃったみたい」
「礼~私をここに呼びだして何がしたいの?」
「あ、穂美香」
「え? なるほど」
穂美香が現れた。
「あれなんで礼が倒れてるのよー」
「いやこれをやったのは……多分麗美」
「同意」
直ぐにみんなが麗美に指をさした。
「はわわわ、ごめんなさい」
「もーう、やるんだったらもっとぼこぼこにしないとでしょ」
「あはははは」
「バレてた」
この程度の工作で天才ハッカー穂美香を騙せるわけがなかったのである。
「やあ、改めて君たちを歓迎するよ」
「包帯ぐるぐるの状態で言われても違和感しかないんですけど」
「あはは、まあ礼のしたことを考えたら仕方ないでしょ。みんなの気持ちも収まったんじゃない?」
「まあそうね」
みんな同意していた。
「それじゃあ本題に入ろうか。君たちの目的は分かってる。内村開園の目的を阻止することだろ?」
「ああ、ライズ様と話をしたんだ」
「知ってるさ、君たちの戦いは見ていた。相変わらず君は強いね」
「そりゃあどうも」
「ライズ様のプランの異世界への帰還は先送りになったようだ。その間にある脅威を排除するために君たちは動いている。魔王フロロメの復活、それを君たちは止めるんだろ?」
「ああ、どうやらフロロメは神器を壊すことで生まれる門を通じて、何らかの方法で現実世界に顕現するらしい、それを俺たちはとめるんだ」
「春樹君なら、フロロメにも勝てそうだけどね」
「穂美香、物騒なことは言わないでくれ。復活しないに越したことはないだろ」
「それもそうだ」
「いや、アンタフロロメ知らないでしょ」
「久しぶりね夏菜さん、あなたも知らないでしょ」
「うん、まあ知らない」
「いまいちフロロメの強さが分からんな」
「でも春樹はフロロメと同じ魔王級になった神器Ωの転生者を倒したわ。同じ要領で復活しても倒せるはず」
「あれは、神八聖さんが万全の状態でいたのも大きいと思うんだよな」
「うーん、これは未知だわ」
「まあ倒せる倒せない関係なく、復活しないに越したことはないさ。それを防ぐために内村開園を止めるのだろう?」
「そういうことだけど、早速情報を教えてくれないか」
「いいよ、本題に入ろうか。先ずは君たちに僕たちが置かれている情報を共有しよう」
―
僕たちは君たちに敗れてから、ゲームの世界をさまようことになった。
ただ僕たちプレイヤーとしてゲームの世界にいるのではなく、実体のない存在としてゲームの中をさまようことになる。でもそれは辛いものではなかった。
なんたって僕には穂美香がいたから。
ゲームの世界をさまよう存在はクオリアヘイズにはじかれた存在のみだ。だからロクな奴がいなかった。そして同じ存在同士は干渉しあうことが出来る。だけど僕と穂美香のコンビを前にすれば、全て問題はなかった。
やがてゲームをさまよう存在同士の抗争が始まった。しかしこのゲームの世界はあまりに広大すぎる。このスケールにおいて、取り残された存在などあまりに小さいもの、逃げようと思えば好きなだけ逃げれた。
当然僕と穂美香はそんな面倒ごとに巻き込まれたくなかったから。逃げることになったさ。
その間僕は穂美香とゲーム世界でスローライフを送っていた。その間は心が浄化されて、大分これまでの行いを反省することになったんだ。
やがて、僕たちの元に一つの連絡が届くことになった。それは抗争が収まり、全員を統べるものが現れたというのだ。
そのものはゲームの世界を脱出することを目指しているという。
ゲームの世界脱出はこの世界に取り残されたものにとって、大きな希望となった。
僕たちはこの世界脱出には興味がなかったが、それを掲げる人物には注意していた。ここに残った存在は穂美香のクオリアヘイズにはじかれたものたちだ。現実世界に本来いてはならない悪意のある存在だ。
まあそうなるだろうとは思った。組織の構成員は大多数がナノの構成員だった。僕含めナノは凶悪な研究に手を染めていたからね。それは罪を背負いふるいにかけられたわけだ。
幸い僕はナノのボスだ。その組織への情報収集は簡単だったよ。むしろ僕は敬われたりもした。
「α様! ここにおられたのですね」
「ああ、お前たちは何してるんだ」
「俺たちは現実世界に戻るんですよ。それを誓ってくれた人がなんと前任のナノのボスだったです」
「内村開園か」
内村開園は僕を生み出したライズの研究員だ。僕の顔はあいつに似ている。父のような存在であったが、ライズ時代にあいつのことが憎かった。穂美香と僕をこんな普通とは違う存在にしたからだ。天才すぎる故に僕たちは迫害されていた。だからαにのまれた。それも全部あいつが僕を利用したことだったんだけどね。
「礼、あいつを追うの?」
「ああ、僕はあいつに復讐するよ」
「私も例についていく」
僕はナノのボスの特権を使って、その組織に潜入した。そして内村開園の元に穂美香と共に行ったんだ。
「やあ、礼、穂美香もいるか。どうだいゲームの世界での生活は」
「ふん、うす気味が悪いね。なんで過去の亡霊と一緒の時を過ごすことになるんだよ」
この世界ではゲーム世界に消えた時の年齢が引き継がれて彷徨うことになる。つまり内村開園が由愛に消されたときの状態と、僕が春樹君に負けてビルから落ちた状態、が同じ時間としてこの世界をさまようことになるんだ。
「ここからどうすればいいんだ」
「しかしこんなところに来てどうした急に、君たちも僕と同じ計画の賛同者とは思えないけど。なんせこのクオリアヘイズを作りだした本人がいるじゃないか」
開園が穂美香をにらんで、穂美香は少しビビった。
「ちょっと、私やっぱりオジ様のこと苦手かも」
「穂美香は世界と僕を救ったんだ。お前に悪いことは言わせない」
「ふん、それはおめでたいことだね。君はこっち側につく人間だと思うよ礼。どうだ、一緒にナノを復活しないか?」
「無理な相談だな」
「勘違いするなよ。こっち側にただでついていいとも言っていない。手始めにその女の首をよこせ」
「てめえ」
僕は全力で穂美香を守ると誓った。そして開園に崩壊プログラムを掛けようとした。
僕たちはライズで双璧を成した天才である。αを失った後でも自力でプログラムを創り出し、それを崩壊プログラムとして攻撃手段とすることが出来るのだ。
「消えろよ」
「やった!」
「いきなり怖いことしてくれるね」
「何?」
崩壊プログラムに内村開園は対応していた。
「やっぱり君たちは天才だ。この世界での戦闘で行き着く先はプログラムによる攻撃、この世界では頭脳とプログラム能力が問われる」
次の瞬間内村開園の背後から、ブラックホールが出現した。
「さよなら礼と穂美香、私は現実世界で神になる」
―
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