第88話 神八聖の本性
「まあ、その前に情報共有と行こうか。春樹君がゲーム世界で見たっていうビジョンをね。私の共鳴魔法で記憶を共有させてもらうよ。勿論羅琉と美織にもだ」
「いいですよ」
神八聖は共有魔法を使った。
「ふむ、共有魔法は便利なものだ。やはり内村開園が動き出したか。そして流石は私の子供たち、礼と穂美香は優秀だね」
「まさか礼と穂美香様がゲーム世界で頑張っておられたとは、私も頑張ればならない」
「あ、知ってると思うけど俺は一応穂美香から羅琉に宜しくって伝えといてといわれた」
「ああ、その言葉を直接受け取れてよかった」
「俺もじゃあ言っておいてよかった」
「さて、次は私から君たちに言うことがある。君たちに選択をして欲しい、美織の処遇についてだ」
「え? どういうことですか?」
「神器の転生者がみな消滅することにより、私は異世界へ帰る門を開くことが出来る。私の目的はそれで、ついでにアートも復活させて異世界に帰ることだ」
「は? 俺たちを利用してたのか?」
「そういうわけじゃないさ、ただ私は計画の全貌を全て話さなかっただけだ」
「だって、言ったじゃないですか。神器に人を分からせるのが目的って」
「そうだよ。γには力を、Ωには連携を、αには信頼を、βには仲間を教えることが出来た。だからその計画はもう、達成されたんだよ。実はその先の計画があったんだ」
「それを話さないのが僕たちを利用したっていってるんですよ」
「でも選択は出したじゃないか。君が引っかかってるのは美織の処置についてだろ?」
「そうですね。分かり切っているのでしょう? 俺たちはその提案に乗ることはできません。美織を解放してください」
「ふむ、分かった。ならばここで交渉決裂だ。今から君たちは私の敵ということになる」
「っ、やっぱりこういう感じになったか!」
「え? ライズ様と戦うことになるの? 聞いてないんですけど」
「でもやるしかないだろ。これは美織を守る戦いだ」
美織は俺たちのやりとりをずっと静観していた。
今彼女は何を考えているんだろう。傍にいた神八聖にいきなり命を狙われて、何にも思わないのだろうか。
「春樹君私達も手伝おうか?」
「いや、みんなはここで待機していてくれ、サシでけりをつけたい」
「分かった」
「おい、美織! お前はそれでいいのか」
「私は神八聖さんから色んなことを学びました。転生体として高校生の暮らしを楽しませてもらった。それは毎日があまりに充実して私の心を満たしてくれた」
「そんな暮らしを神八聖が奪おうとしてるんだぞ? この戦いは美織が能力を使わなければ、直ぐに終わる。神八聖は能力を使えないからだ」
「私は、それでも、神八聖さんをサポートします」
「どうして?」
「彼女は私にとっての親のような存在だからです。全てを聞いて、私は転生体としての役割を思い出しました。私の中に眠るβの意思、それは私にありふれた普通の生活をして欲しいというものが込められていたんだと思います。だから私は何も考えず普通に過ごした」
「それじゃあ、神八聖の元にいったらその普通が手に入らないんだぞ?」
「私は気づいたんです。本来神器の転生は瞬間的なものなんだって。みなさんを見ていて思いました。とても仲がいいということを、でも私は皆さんとは違う存在で、本来帰るべき場所がある。βが学んでほしいと思ったことを私は十分学べたんだと思います」
「そんなの納得いくわけがないだろ」
「ということだけど、どうする? 美織本人は私の意思に従うことを選んだようだ」
「多分美織は多くを知らないんだと思う。だから引き戻して俺たちがもっと世界が素晴らしいことを教える」
「はあ、分かってないね。転生体の寿命は短いんだよ。1年しかない」
「嘘だろ」
「このことは美織だけに私は明かしていたんだ」
「でもだったら残り1年を、大切に過ごしてもらいます」
「それは君の都合になってないか?」
「今このタイミングで美織を倒すのも、あなたの都合では?」
「私には時間がないんだよ。アートを復活させるタイムリミットが近づいている」
「タイムリミット?」
「君がそれを知る必要はないさ。君は私にすら勝てないからね」
「要するに俺のことを下に見てるから信頼にしてないって感じですかね。いいでしょうここでケリをつけましょう」
「言われなくともそうするつもりさ。それに言っておくけど、今の私は気が変わって神八聖という一般人としてではなく大陸最強の魔法使いライズとして君と戦う。以前のように生易しくないから覚悟してね」
「望むところだ!」
俺は神八聖、もといライズとの戦いを始めた。




