第87話 最初のヒロイン
「夏菜さんは優戸がいるじゃない。あなたは麗美さんと一緒にいるべきだわ」
「そんなこと言わないでくださいよ。俺は里音先輩とも一緒にいたいです」
「ふう、あなたって罪なひとね」
「そうですか?」
思えば今回の騒動では里音先輩にあまり頼っていない。ナノとの戦いのときは里音先輩たよりな部分が大きかったわけだが、だからこそ久しぶりな感覚である。里音先輩は俺に取って最初に憧れた存在だった。
「随分成長したわね春樹、私は嬉しいわ。初めて貴方と出会ったときから、どんどん強くなって、今では私をリードしてくれる存在になった。あなたに何回助けられたことか。今回の件でハッキリわかったわ」
「何が分かったんですか?」
「私はあなたが本当にかっこいいと思ってしまっている。こんな感情を抱いたことは初めてよ。男なんて大したことないと思っていた。全部これまで自分の力でたいていのことはできたから。でも、最近の問題はあまりに大きくなり過ぎたわ。だからこそよりあなたの存在の大きさを感じるのよ」
「里音先輩」
「私は多分こういう立ち回りなんだと思うわ。春樹、これからもよろしくね!」
里音先輩は普段見せたこともない笑顔で、俺に手を差し伸べてきた。
この表情を永遠に俺は頭の中に焼き付けておきたいと思ったのである。
「はい、こちらこそ、よろしくおねがいします!」
俺は里音先輩の手を取った。
「しかしこれで神器は全て掌握しましたよね。βの美織はいますが、彼女は味方ですから、これで世界がゲームに包まれるという心配亡くなったわけですね」
「一つ気がかりなのは内村礼が言っていた内村開園の存在よ。何かゲーム世界で悪いことを企んでいるに違いないわ」
「この作戦をひとまずみんなで共有しましょうか」
「ええ、そうね」
放課後の時間になって、俺たちは自宅に集まった。
「じゃーん、お帰り春樹氏ってええええええ! なんで里音ちゃんがいるの?」
「なんでって、私は春樹と同じ学校だもの。別にいてもいいじゃない」
「それはそうだけど、そういえばこのパターンは初めてだったなと」
「私はみんなののけものにされていたものね」
「ちょっと何言ってるんですか里音先輩」
「冗談よ」
「私もいるよー」
「お帰り麗美」
「うん」
「お邪魔します」
「よう、夏菜」
「なんで、私だけようなのよ」
「あれ? いつもこんな感じじゃなかったっけ?」
「久しぶり過ぎてあなた頭がおかしくなったんじゃないの?」
「ごめん」
「まあ、別にようでもいいけど」
「はあ」
俺たちは長期休み明けで、遠征から実は初めて会っていた。数日ぶりである。
疲れたからいったんみんな一人でいようという話になっていた。
だから凄い久しぶりだ。
「お前ら休暇でしっかり体を癒したか」
「あたりまえでしょ」
「もう本当にみんなに久しぶりに会えてよかったよ」
「えーと、確か残るはαを倒すだけよね」
「ああ、αなら俺と里音先輩が倒したぞ」
「えええー!」
周囲には驚きが起きた。
「って由愛は知ってたんだろ。美織の力使ったし」
「いや、私も気づかなかった。多分美織さんの接続の力の精度が上がってるんだと思う」
「おい予知能力はどうしたんだよ」
「最近からっきしなんだわ笑」
「つかえないわね」
「なにい? 使えないのは里音ちゃんでしょ」
「なんですって」
「まあ、まあ2人とも落ち着いて」
「それで、これからどうすんの? もう私達は解放されたの」
「それをこれから神八聖に尋ねにいくんだよ」
「でも気がかりなことが一つあるわ」
「気がかりなこと?」
「実は私たちはαの神器の転生体と戦っていた時、ゲーム世界にいったのよ。そこで内村礼と国城穂美香にであったわ」
「ええええええ!」
こちらもまた驚きの声で包まれた。みんな神八聖の記憶共有で2人の事情は知っている状態だ。
「とんでもコンビが爆誕といったところね」
「ええ、そこで彼らは言っていたの。内村開園がゲーム世界から出てまた現実でよからぬことをしようと企んでるって」
「ああ、なんか神八聖さんも言ってたわよね内村開園っていう手が付けられない研究者がいたって」
「まあナノの創設者だからな。ヤバい奴だ」
「とにかく、神器の転生体を全部倒したけど、まだまだ気が抜けない状況が続いているということだけみんなに言っておくわ」
「分かった!」
みんなの意思は共有された。
「やあ君たち、遂に集まったね」
俺たちは神八聖の自宅を訪れた。傍にはいつも通り、美織と羅琉がいる。
「じゃあ次の作戦を聞かせてもらえますか?」




