第83話 aの神器の転生者
空間が消えていく、Ωの最後の能力は分裂と、分断だったわけだ。
まあ、あらかじめ礼と戦ってた情報は知ってたみたいだし、麗美の強さがジョーカーだったわけだな。
「これでΩの神器全破壊だ」
「はい遠征終わり」
「やっと終わったー!」
長い長い遠征がやっと終わってみんな歓喜した。
ふう朝だ。俺の日常が戻ってきた。長期休みも終わりに差し掛かり、特に遠征から何もアクションはなかった。
自宅でいま俺は一人である。4つの神器の転生体のうち、最も神八聖が警戒していたΩを倒した。βは美織として味方になり、γは俺が即倒した。残るのはαだけであり一気に緊張感がほぐれたように思える。
そもそも神八聖はαの痕跡を全くつかめていないようだ。だから感覚的にはほぼ日常を取り戻した感じである。
そんなわけで俺たちは解散になった。この長期間休みを何も考えず自宅で過ごすというのがたまらなく最高なのである。もちろんみんなとあって話をするのは楽しいが、たまにはこういう日を楽しめるものだ。
「ふっ、たまにわって俺は元々、インドアでずっとこうしていたい性格だったろ。随分充実してしまったものだな」
というように、独り言も出てしまうほど今の俺は浮かれていた。
「はあ、長期休みが終わっちまう。もう学校はいいって本当に、一生自宅でこのひと時を過ごしていたい」
といいつつも学校での生活も充実している。ただそれ以上にこの自宅でのまったり生活は魅力的なのである。
っていうくらいやっぱり俺は充実した奴になっていた。これは地獄の高校時代初期と比べたら、想像もつかない変化である。
思えばこのレベル100スキルを手に入れたおかげだ。こんな能力を手に入れてしまったから、毎日が充実するのは当然だろう。
「俺が積み重ねてきたことは無駄じゃなかったってことだな」
レベル100スキルを手に入れたきっかけは、日々のMMOゲームの地道なやりこみである。これは本当に心の底から楽しみながらやっていたのだ。
「ここはひとつ、原点に戻りたいところだな」
俺は久しぶりにMMOゲームを起動した。
先ずはチュートリアルからでもやり直すかな。
「やあ」
「は?」
「俺はいつもやりこんでいるゲームの世界に見知らぬ人物がいることに気づいた」
「なんでNPCが俺の知らない行動をとる?」
「それは僕がNPCじゃないからだよ」
「なんでマルチバトルをしてないのにNPCじゃない奴が話しかけてくるんだよ」
「はあ、気づかない? このゲームは僕が最初に現実に具現化した場所さ。思い入れがあるんだよ。僕は転生体になる時、ここに住もうと思ったんだ」
「まさかお前」
「そう僕はαの神器の転生体さ。内村礼君がお世話になったね」
神八聖がαの神器の痕跡に気づかなかったのはずっとゲームの世界にいたからなのか。
「話し方まで似てるけど、どういった関係で?」
「彼は僕にとっての一番の適合者だったんだ。忠実に僕の意思に従ってくれる彼はとても接しやすかったよ」
随分と知能がこれまでの転生体より高いと言える。βの美織と遜色ない。これってランクSSRなんじゃ。
「どうした? 神器と話すのは初めてかい」
「別にそうじゃないけど、随分話が通じそうな雰囲気がしているからね。驚いただけだよ」
「何も驚くことはないさ。ほらβの転生体の美織だって、普通に女子高生として君と一緒に接していただろ? それと同じことさ」
αの転生体の態度は、内村礼の狂気を抜き去った穏やかな青年といった感じだった。
「話し方は内村礼と似ているけど、結構狂ってる感じが抜けてるな。これ偶然なの?」
「そうだね。これは偶然じゃないよ。僕は転生するときに彼の話し方と外見を憧れて頭に思い浮かべてたんだ。これによって今はこの姿として生まれ変われた」
「そうか、でも俺の目的は知っているのか? 神器の転生体の回収、お前たちにとっては敵となる存在だぞ」
「ははは、君は僕を攻撃しないさ。まだ僕は君の仲間に危害を加えてないだろ? それで僕を攻撃するっていうのは悪者のすることだ。君は悪者じゃないだろ?」
「まあ、そういわれると、全然捕まえる気が起きないな。でもお前はどうせ悪いことをするんだろ?」
「悪いことって何かな?」
「現実をゲームの世界にするとか」
「あはははは、礼はそんなことそういえば考えていたな」
「しらばっくれるなよ。あいつはお前の意思に従っていたって言っていたぞ」
「今の僕は礼君の善性の部分のみを参考にして転生したんだ。そんな邪念はもう消えてるよ」
「信用できないな? そもそもあいつに善性なんかあったか?」
「今の彼は善性そのものだよ? ほら国城穂美香と一緒に過ごしているようだし」
確かに、内村礼は最後に国城穂美香とゲーム世界に消えてったんだっけ。




