第45話 プログラムの正体
「由愛? あなたは本当に由愛なの?」
「そうだよ私はあなたの知っている由愛、そしてライズの幹部によってβウイルスの適合者になった存在。そして今はβウイルスの人格も反映されている。ギフトは能力の全てを渡すわけではなく、私にもβが残存してたようね。だからあなたは運命予知がない」
「どういうことよ」
「知ってる? プログラムウイルスは前任のナノのボスが転生者から手に入れた個体なの。二次元を三次元にする能力」
「これが超常の力の正体……貴方は今βウイルスの人格なのね」
「そういうこと、私はずっとあのナノの基地でウイルスに適合してから、そのウイルス内の人格とコミュニケーションをとっていたのよ」
「どういうこと?」
「じゃあ、今からβと切り替わるね」
「βと切り替わるって、ちょっと」
「私は今でも驚いているんだ。小さい頃に見ていた光景はあいまいで抽象的なものだよ。だけど成長して理解できる。今になってもう一度その光景を見た時はじめてその世界の素晴らしさを知ることになる。だけどこれは逆に苦しいことでもある。高揚感の感情の出どころはむなしさだけで終わってしまうんだ」
「っ!」
由愛はとても機械的な話し方になった。これは紛れもなくβウイルスの人格である。
「あなたたちプログラムウイルスにも感情というものがあったのね」
「まあ共有する場所がないからそういうイメージを持たれちゃうよね」
「由愛と長い間あなたの体の中にいる中で、過去の世界を救った英雄の活躍が忘れ去られてることを今にして認識したんだ」
「世界を救った英雄?」
「私βを生み出した存在は前任のナノのボスだったけど、彼が採取した遺伝子サンプルの大本の転生体の人、彼こそ世界を救った英雄だわ」
「そんな違う世界の住民の話を持ち出されても理解に苦しむわね」
「そうよ違う世界の英雄の話題を持ち出しても誰も何も思わない。この世界ではとっくに終わった存在なの。多くの人はそんな英雄のことなど知らないし、違う英雄は次から次に新世代として登場していくのよね」
「確かに今のあなたの話はまるで化石を掘り出したような感覚ね」
「共有は出来ず長い間、自分の中でだけ満たされるこの英雄の話を見つけてくれた人をみるとそんな感覚になっても納得だわ。私にとっては生みの親のような存在だし、それをずっととどめておきたいの」
「なるほど、それはとても心地が良いかもしれないわ。でもむなしさも感じないかしら」
「確かに、自分の中でしか、盛り上がらない話ほどむなしいものはないよ。だから君という理解者がうまれて私はとてもうれしいよ。これがコミュニケーションという奴なんだね」
「そう由愛を通じて、いいことを学んだようでよかったわ」
「思えばこれまでの生活の中でこの高揚感を知らずにいたのは凄い損失だと分かる。今の理解力があれば、もっと多くの人と分かりあえただろう、そう思うだけで起こるこの虚無感ははかりしれないわ」
「そうね、たとえあなたが過去の英雄が凄くても、やったことの罪は消えないわ」
「全て理解したよ。最後に君たちの考えが分かってよかった」
「最後って、なんだか感覚がそんな感じしていたけど、どういうことなの?」
「琴音沙月という人物がプログラムウイルスの根源であるナノの前任ボスのプログラムをシャットアウトしたみたいだね。これで私は消滅する」
「そういうことだったのね、じゃああなたともお別れということかしらβ」
「何か言っておきたいこととかないか?」
「ええ、これで私も由愛の言いたかったことが分かったわ。彼女はずっとあなたたちウイルスプログラムの感情を汲み取って、その上で理解して終わらせて欲しかったのね」
「そういうことだ。全てのことには各々の思惑がある。必ずしも一方的に殲滅するのが正義というわけではないだろう? 最後に君と話せてよかった」
「ええ、私もこれで使命を果たせたわ。さよならβ、それと違う世界の英雄」
「そういうことです使命を果たしてくれてありがとうね里音ちゃん」
「やっとこれで私は解放されるのね」
「うん、でも最後にまだやり残したことがあるよ。そこで私から贈り物があるの里音ちゃん」
「何?」
「全てのプログラムウイルスは消滅したけど、αは自立してるからまだ力が健在だわ、かなり弱まってわいるけど」
「だからダンジョンが顕現していたのね。私も力を失って春樹もステータスを引き継げない、βがいないと大変じゃない」
「ふ、ふふふ、そこで即席だけどβが自立した力を凝縮してくれたの。短時間だけどこの力を使って最後にαを消してね」
「ふふ、最後の最後まで私に使命を任せるのね」
「なんかごめんね」
「いいのよ、でも最後にまた会えてよかったわ」
「私も会えてよかったわ」
「ありがとう由愛、全て終わったらまた会いましょう」
「ええ、運命が後少しで変わる! その先に未来があるならまた会いましょう!」
「起きなさいよ春樹!」
「うん? 夏菜? はっ、俺は確かαのダンジョンに閉じ込められて」
「もう出口までたどり着いたわよ」
「里音先輩、すいません」
「いいわもう。私の力も長くわない」
「どういうこと?」
「沙月さんがプログラムを無効化したみたい。でもαは自立してるから残ってるって」
「それヤバくないですか」
「でも色々あってこっちも即席でβを使えるようになった。αを最後に叩きのめすわよ」
「成程! 任せてください」
俺たちはダンジョンの出口をでた。
「ふふふ、そろそろ麻痺が解ける。いまいましいライズの連中を根絶やしに…っき、貴様ら」
「ふう、ただいま」
俺たちはダンジョンから生還してαの元へ対峙した。




