第44話 崩壊プログラム
「あなたが、前任のボス」
「そう身構えないでくれ、今の僕はホログラムに過ぎない。何も現実世界に干渉などできないこの施設限定のプログラムさ」
「なんでそんなことしてるのよ」
「プログラムウイルスはコアがないと動かないんだよ。僕の体を媒体としたね」
「どういうこと?」
「僕は遺伝子操作組織ライズの研究者さ。あらゆる優れた遺伝子を集めていたら、凄まじいものを見つけてね。それは2次元を3次元にする能力を持った超能力を持った遺伝子なんだ」
「そんな人物がいたの」
「多分異世界から現代に転移してきた存在なんだろうね。そんなわけで僕はその遺伝子の適合者を探すためにナノというギルド創立したんだよ」
「なんのために?」
「はっはっはっ、今更それは愚問ではないか? 僕が所属したのはひたすら最強の遺伝子を求める遺伝子操作集団ライズ、これこそ最高の実験成果といえるじゃないか」
「そのために何人の人を犠牲にしたのよ。このマッドサイエンティストが」
「はははは、死人に口なしさ。僕はどうせゲーム解放が起きても国城穂美香のふるいかけられて終わりだしね」
「あなたみたいな狂った人を封じるために作ったふるいだしね。ナノのような理想郷を作るなんていかれた思想は限界があるに決まってるわ。私はそんなイカれた思想に終止符を打ちに来たんだよ」
「いずれ自分が起こしたことには清算を行わなくちゃいけないのは分かってるさ。内村礼君は悲惨な末路を迎えることだろう」
「どうせ内村礼もあなたが実験体にしたんでしょ? 気の毒なことね」
「敵に同情するとは流石記者なだけに変わった感性を持っているね。まあ、彼も私の最高傑作のαウイルス成功体の一つさ」
「もういいわ、あなたとの会話は頭がおかしくなる。穂美香からもらったこの崩壊プログラムで、ここのシステムをシャットアウトすればΩウイルスも終わりね。ついでにαとβとγ」
「全くさめることをしてくれるもんだね。もう少しΩウイルスの進行を見ていたかったよ。それにαは適応者と自立してるから力が多少維持される点に注意だよ。つまり内村礼君は健在さ」
「そりゃあどうも、じゃあね」
「ああ、ぼくもすべて受け入れるさ」
自分の中にある心地よい空間こそが今をかたどる全て。
でもその心地よい空間もいずれ過去のものになってしまう。
ならばこれ以上言うことはあるまい。
自身の罪を全て受け入れろ。
例え理解されなくても、強靭なメンタルを持って全てを行動し成果で証明しろ。
僕が現実世界にいいたいことはそれだけである。自分が悪者になったとしても、この心地よい空間を生み出す革新的な知的好奇心は止めることができない。
もしこのまま変化を受け入れられなかったら、そこで進歩は終わるのだ。
進化の停滞、それに対し私は恐怖しか感じない。
恐怖は原動力になる。だからこそ僕は常軌を逸した行動を起こせたのである。
ああ、最後のΩウイルスは素晴らしい成果だった。これで僕はもう満足したよ。
「システムシャットアウト」
「-」
「システムシャットアウトとともに、ギルドナノの前任ボスの人格も消滅したようね。とっくに滅びた人物が最後まで、爪痕を現実に残すなんてほんと質悪いんだから」
αが生み出したダンジョン内で里音は精神汚染された春樹と夏菜を気絶させて、出口を探していたら由愛と対面していた。
「どうしてあなたがここにいるのよ!」
「どうしてって私はずっと里音ちゃんの中にいたよ?」
「ふ、ふざけないでよ!」
「現実と空想は表裏一体なんだよ。空想の中では現実ではありえないことが起こる。それは現実の理想をかなえることに繋がるの」
「何を言って」
「いつぶりだっけ? 久しぶり過ぎる再会だよね。里音ちゃん」
あまりに唐突な再会は1年前の記憶を呼び覚ました。正直いまだに実感が湧かない。
「どうして泣いてるのよ」
「だって、実感が湧かなくて」
「そんなたいそうな物じゃないでしょ。ちょっと重すぎなんだけど」
「う、うるさいわよ。分かってるのよこっちだって。でもしょうがないでしょ、これがありのままの姿なんだから。私はずっとあなたに託された力でプログラムウイルスを無効化する使命を背負っていた」
「ふーん、私の言葉をずっと大切にしてくれたんだね!でもあまり理想を頭の中に抱きすぎると、目の前の状況が理解できなくなっちゃうよ。いつまでも使命に縛られてちゃだめ」
「由愛? あなたは本当に由愛なの?」
「そうだよ私はあなたの知っている由愛、そしてライズの幹部によってβウイルスの適合者になった存在。そして今はβウイルスの人格も反映されている」
「どういうことよ」




