戦闘
キチキチキチッ――
鼓膜を不快に震わせる金属音が響く。すぐ下の二階で、アイツが這い回っている。
私を探しているんだ。
階段の吹き抜けから様子を窺うと、闇に沈んだ校内に、赤い単眼が虚空に線を引く。雲間から差し込んだ僅かな月明かりに、鈍色に光る輪郭が浮かんだ。
蜘蛛のような体躯。槍のように鋭い八本の脚が、容赦なくリノリウムの床を削り取っている。
「はぁー……よりによって、なんで学校に顕現するかな……」
思わずため息をつく。アレを機能停止させるのが家業とはいえ、日常生活の場を荒らされていると思うと腹が立つ。
「早く終わらせよ」
逆手に握ったダガーナイフの柄を締め直す。脳天ぶち抜いてやる。真下を索敵していた機械生命体に向けて、制服のプリーツを翻し、吹き抜けから身を躍らせた。
その瞬間、赤がこちらを見た。駆動音が跳ね上がる。
「チッ!動体センサー持ってんのかよっ!」
空中で無理やり身体を捻り、槍のような突きをギリギリで回避する。脇腹に灼熱が走った。
着地と同時に弾丸のように走り出す。背後で重い刺突音と衝撃が鳴る。そう簡単に串刺しになってたまるか!
二年生の教室へ飛び込み、ダガーの柄で窓を割り、カーテンを勢いよく引く。そこへ、入り口を巨体でこじ開けた機械生命体が侵入してきた。
静止した私の左脇で、夜風で大きくカーテンが膨らむ。そこへ集中して刺さる鋭い脚たち。
狙い通り!伸び切った脚を戻すのはタイムラグだよなぁっ!
机を踏み台にして跳躍し、天井のプロジェクターを掴み、更に勢いをつけて跳ぶ!狙うのは装甲の隙間、激しく明滅する赤色のコア、ただ一点!
「落ちろッ!」
体重のすべてを載せ、ダガーの切っ先を叩き込む。
断末魔を上げることなく、機械生命体は動きをピタリと止めた。すぐ背後に迫っていた鋭い脚は慣性に従い、ガシャリ、と力なく落ちた。
「ふぃー……ミッション完了……」
安堵と同時に、身体が鉛のように重くなる。
「今回はちょっと危なかったなぁ。次やるとしたら――」
そこまで考えたところで、意識がプツリと途切れた。
☆
ドスン!という強い衝撃で目が覚める。
「んがっ!?」
心臓が跳ね上がり、血液を全身に送り出す。すぐに起き上がって状況把握、敵はどこだ!……って自室だな。
どうやらベッドから落ちたらしい。なんで?さっきの機械生命体は……?と思考を巡らしていたところで気付く。
「ああ、夢でまた闘ってたのか。はあ……」
同年代の子たちのような、お姫様と王子様が出るようなメルヘンな夢を見たいのに、アクション映画を好んで見るせいなのか、ギリギリの闘いが毎回開催されている。
平和な夢がみたい。心臓バクバクの寝起きは嫌なんだ。
今日のは、昨日見た『マトリックス』のせいだな。おのれ。じゃあ今日見るのは『シンデレラ』にしてみようか。
……でも、何やかんやアクションに発展しそうな気はするなぁ……。
【創作メモ】
本文執筆:作者
AI利用:情報収集・アイデア出しの補助・描写の言い換え
辞書利用:なし




