銀杏
秋晴れの空のもと、枯れ草混じりの雑草の上を息を切らせて必死に走る。
「ママー!こっち!!はやくー!!」
「待って!一人で行かないで!そんな、はやく走れな……ヒィ……」
「しょーがないなー!ほら、手つなご!」
「ふー……、ありがと……」
自分の体力の無さが恨めしい。弾む息をなんとか整え、娘と手をつなぐ。
昨日、保育園から帰ってきていの一番に『黄色!黄色がすごいの!今行くのー!』と謎の主張をされた。興奮する娘をなだめ詳細を聞き出すと、遠足で行った公園の木が紅葉していたらしい。聞き出せた時点で外は日もどっぷりと暮れていたため、翌日に見に行くこととなったのだ。
起伏に富んだ山の公園を歩く。涼しくなったとはいえ、日差しがあるから身体は燃えるように熱い。額にたらりと汗が流れた。繋いでる手も汗ばんで滑るから離したいんだけど、離せば弾丸ロケットのように飛び出すだろうから、しっかりと繋ぎ直す。
「ほら、ママ!あれ!見て!」
「え?どれ?」
山道しんどい、と思いながら歩いていたためか、足元しか見ていなかった。娘に声をかけられてようやく顔を上げると、鮮烈な黄色が目に飛び込んできた。
舞台役者のように、堂々と真っすぐに伸びた高木は、鮮麗な鬱金色を纏って私たちを出迎えてくれた。風がサァっと抜ければ、はらりはらりと扇型の葉を足元へ散らす。
大きな銀杏の木だ。
「すご……」
「ね!黄色でしょ!」
「うん、そうだねぇ」
ほんとに黄色だった。これは、誰かに見せたくなる。娘が急かすわけだ。
その本人は、私の手が緩んだ隙に黄色の絨毯にダイブしていた。葉っぱを小さな腕いっぱいにかき集めている。
「こうやって、とう!!」
「おお」
ぶわり、と落ち葉が舞い散る。それを見ていた他の子の歓声が高空に響き渡った。
うん、お散歩も悪くない。今度体力つけるかな。
【創作メモ】
本文執筆:作者
AI利用:なし
辞書利用:あり
時速746字
今回の辞書ワードは「高木」「鮮麗」「鬱金色」「高空」の四つ。




