番犬
「おすわり!伏せ!」
「ハッハッ」
「食べてよし!」
「バウ!ガフガフ……」
我が家の優秀な番犬をご紹介しよう。
日本犬唯一の大型種、『秋田犬』の女の子。つぶらな瞳にピンと立った三角の耳。梅干し色をした濡れた鼻。白いダブルコートでモッフモフの魅惑のボディ。背中に背負った巻き尾。
「うんうん、今日もかわいいね」
体重30kgのガッシリとした体躯から繰り出される大音量の吠え声は、侵入者の存在を知らせる。
「うん、朝ごはん食べ終えたね。美味しかった?よ〜しよし、わしゃしゃしゃしゃ〜」
「グゥ〜……ガルルルッ……!」
「おっと、今日はここまでか」
引き際を見極め、本日も犬を撫でくり回して可愛がる。キュートな見た目をしているんだから、そんな恐ろしい形相で威嚇したら駄目だぜベイビー。
基本的には賢く従順なんだけどなぁ。子犬の頃に構い倒し過ぎたのか、私が可愛がる時だけ怒るんだ。序列で下に見られてる気がする。
なんでだ。こんなに愛情を注いでいるというのに。
まあ、可愛がる目的でなければ、ちゃんと言う事を聞いてくれるから賢いんだよな。それに、知らない人が敷地内に入ったら番犬としての役割をしっかりと勤めるし。
「御免下さい」
「バウッ!バウッ!バウッ!」
はいはい、その人は遠い親戚の人だから吠えないでね。
そんな優秀な番犬が我を忘れる時がある。
それは、宅急便が来た時。配達員のお兄さんが大好きすぎるのだ。
「〇〇急便でーす!ご在宅ですかー?」
「キューン!クンクンクン!」
「はーい、いつもありがとうございます」
「アウウー!!」
「サイン頂戴しました!それでは失礼します!」
「キュアキュアーーッ!」
お兄さんは配達を済ませると、真っすぐ番犬の元へ。
姿が見えたときから必死にアピールしていた犬はお兄さんが近寄って来てくれて大歓喜。尻尾は千切れそうに振られ、耳はペタリと寝ている。全力スタンディングオベーションも斯くやといった様相だ。
「よ〜しよし、わしゃしゃしゃしゃ〜」
「キューン!ハフハフハフッ!」
「ワンちゃん今日も喜んでくれてて僕も嬉しいなぁ。さて、名残惜しいけど仕事に戻るね。バイバイ」
「ヒーン……キュー……」
お兄さんが離れると、伏せをして尻尾が垂れ下がった。悲しいようだ。
……主に世話してるの私なんだけどなぁ。なにゆえ飼い主が可愛がると怒るのかなぁ?その愛想ちょっとだけで良いから、こっちに向けてくれると嬉しいんだけどなぁ。
「ほら、散歩行こう」
「……バウ!」
赤いリードを見せるとすくっと立ち上がった。尻尾も巻き直してゆるやかに揺れている。よしよし、嬉しいか。私も君が喜んでくれるなら嬉しいよ。
【創作メモ】
本文執筆:作者
AI利用:なし
辞書利用:なし




