恋その1
ねえ、どうか私の気持ちを聞いてくれる?
私、きみに恋しているの。
きみのことを考えるだけで、心は弾み世界が華やぐの。この思いは徒情なんかじゃないわ。本気なの。
私たちの出会いは、路地裏にひっそりと佇む純喫茶。店内にはケニー・バレルの『ミッドナイト・ブルー』が流れていたわね。革張りのカウンターチェアが五席しかない小さなお店。そこに、きみは現れた。
きらきら輝く特別なステージに立つきみは、艷やかな小麦色の肌をおしみなく晒していたわ。近づけばビターな香水が鼻をくすぐる。
真っ白でふわふわの帽子をかぶり、色鮮やかなアクセサリーを身にまとって。きみは、私の前で少し緊張して震えていたわね。
ふふ、今もかしら。
触れれば優しく震える繊細なきみを、私はスプーンでそっと掬い上げ、口いっぱいに頬張った。
ああ、黄身はいつだって私を待っていてくれるのね。嬉しいわ。
「お客さん、いつもプリン・ア・ラ・モードを美味しそうに食べてくれるから僕も作りがいがあるなぁ」
「だって、とっても美味しいんですもの」
飾り切りをされたリンゴとキウイを一口に頬張る。プリンの甘さと果物の酸味が渾然一体となって至福へと至る。
ああ、幸せ。
「ねえ、お姉さん、僕と付き合う気、ない?」
「無いわね。私が恋してるのはプリン・ア・ラ・モードですもの」
「いつもの返事をありがとう。でも、良く考えて。僕と付き合えば、プリン・ア・ラ・モードもいつでも食べ放題だよ?」
「……それは」
「ね?」
「……まあ、考えておくわ」
「うん。よろしくね」
横恋慕する喫茶店のマスターを横目に見つつ、コーヒーを一口飲んで口腔内をリセットする。
でも、確かに魅力的な条件かも。私もそろそろ身を固めたいと思ってはいたし。……改めてマスターの顔を見れば、まあ、悪くは無いわね。何だか見覚えがあるような気はするけど。
それはまた今度ね。今は黄身との逢瀬を楽しむこととしましょう。
ああ、美味しい。
【創作メモ】
本文執筆:作者
AI利用:情報収集・アイディア出し
辞書利用:あり
今回の辞書ワードは「徒情」「横恋慕」の二つ。




