雨と煙管
重く垂れ込めた空から、ぱらぱらとした雨がフロントガラスを濡らした。車を道端に停め、私は窓を全開にした。雨の匂いを胸いっぱいに吸い込む。湿った土、青い草、日差しで温まったアスファルトの匂いが肺を満たした。
こんな日は煙草が美味いんだ。
夜勤明けのふわふわとした思考のもと、行き先を変更してお気に入りの場所へと車を走らせた。
着いた所は、いつもの河川敷。目の前にゆったりと流れる大河は、小雨など意に介さず流れ続けている。車を停めて、色褪せた東屋へ。
脇から桜の古木が枝を差し入れているのを避け、木の枝を払ってからベンチに腰掛けた。ほっと一息。東屋を避けるように、桜雨が薄紅色の花びらを草叢に散らす。濃密な花の香りがあたりを満たしていた。
いい匂い。やはり桜は雨の日に限る。
さて、煙草である。吸うのは半年ぶりだが、うまく着火できるかな?
煙草の葉を取り出し、指先で小さく丸める。あまりに吸わなすぎて、乾燥した日にはぱらぱらと落ちる葉も、湿度の高い日ではちゃんと千切れず纏まるからありがたい。
煙管の先端に詰め込み、吸い口を咥える。カチリ、とライターの火をつけ、息を細く吸い込みながら葉に火を移す。
ジジッ。
ふはぁ。
ああ、うまいなぁ。
甘くほろ苦い紫煙を、口の中でくゆらしてから外に逃がす。重く落ちるニコチンは、殊更に脳髄を痺れさせた。
一度に吸えるのは三口が限界の煙管だ。最後の一吸いをゆっくりと味わい、暫し遠景を見つめる。
さて、リフレッシュも良い感じにできたことだし、家路につくとするか。煙草の葉を掻き出し、携帯灰皿へ仕舞った。
ふと見上げれば、東の雲間から光が差していた。煙霧の中の山々が、キラキラと輝く。
うむ、今日も世界は美しい。
【創作メモ】
本文執筆:作者
AI利用:無し
辞書利用:あり
今回の辞書ワードは「桜雨」「紫煙」「煙霧」の三つ。




