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姑姑  作者: 謝窺憐
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Mon passé

  張仕忠(チャン・シージョン)は、品行方正(ひんこうほうせい)、成績優秀な優等生だった。

  決して裕福な家庭ではなかったが、小さい頃から珠算や暗算の塾へ通わされていた。本当は絵画教室や楽器も習わせるつもりだったらしい。しかし、放課後に宿題や復習をする時間が減ることを考え、結局は取りやめになった。

  小学校では全校一位。中学校でも全校一位。

  高校では──辛うじてクラス一位を維持していた。高校へ入って初めて、試験で全校一位を逃した。それは彼の自信が初めて大きく打ち砕かれた瞬間であると同時に、三日間、夕食を与えられないという罰でもあった。

  夕食時、一家が大きな丸テーブルを囲む中、彼の茶碗と箸だけが並べられていなかった。

  「お前に飯を食う資格があるのか。勉強してこい。」あの老いぼれが本当にそう口にしたのかどうか、私は知らない。言っていたとしても驚かないし、仮に口にはしなかったとしても、その意味は十分すぎるほど伝わっていた。

  どれくらい経ってからだっただろう。張仕忠の父親は、ようやく一つの、ごく単純な事実を理解した。どれほど自分の息子が優秀でも、この世には必ずその上がいるということを。

  しかも彼は、長男と次男の学業を管理するだけでなく、小学校へ上がる末娘のことまで気に掛けなければならなくなった。

  張仕忠の父親は、最初から娘など欲しいと思ったことはなかった。

  娘は嫁に出れば他家の人間になる。家に利益をもたらさない。彼にとって、それ以上の価値はなかった。

  それにしても、なぜ妻が娘を産んだのか、彼には理解できなかった。自分が何をしたのかくらい、もちろん分かっている。だが、その結果が自分と関係しているとは思わなかった。

  夫婦が床を共にするのは、ごく普通のことだ。年を重ねてから子を授かることも、めでたいことだ。

  それなのに、それまでずっと男の子だったのに、なぜ最後だけ娘だったのか。

  彼にとって問題だったのは、その子が娘だったという事実ではない。

  そのことで、地元で人格者として知られてきた自分が、人の噂の種になるかもしれないということだった。「老いぼれのくせに。」そう陰で笑われるかもしれない。長年築き上げてきた自分の評判に、傷が付くかもしれない。

  ──彼という人間もまた、他人の視線の上に成り立っていた。

  どれほど胸を張って生きていたとしても、周囲の全員がその人間を卑しい小悪党だと思えば、その人はこの世界では小悪党になる。

  逆に、自分の理想の姿に傷が付く可能性を一度でも意識してしまえば──その瞬間、完璧さはもう失われる。

  だから何の根拠もないまま、彼は少しずつ、その傷の原因を憎み始めた。もちろん、自分自身ではない。

  ──もしエバがアダムを誘惑しなければ、アダムは禁断の果実を口にしただろうか。

  エデンの園を追われることなど、あっただろうか。

  彼は、年老いた妻にさえ疑いの目を向けるようになった。理由もない。証拠もない。あるいは……男の沽券(こけん)にかかわると思い込み、それを捨てる勇気がなかったのか。だから最後まで、真正面から問い詰めることもしなかった。。

  証明もできず、否定もできない。だからこそ、「不信」という名の渦だけが、少しずつ、大きく、深くなっていった。


  コトン──


  色球がクッションに当たり、ポケットの縁をくるりと一周して、そのまま吸い込まれる。白い手球も、私の計算どおり、別の色球のちょうど狙いやすい角度で止まった。

  周囲から感嘆の声が上がる中、私はチョークでキューの先を軽く擦る。

  「おい、NANA。一人で全部落とす気じゃないだろうな?」

  Frankだったか、Fredyだったか、そんな名前の男が苦笑しながら言った。

  「一緒にやれって言ったのはそっちでしょう。それに私はMariaに打ち方を教えるために入っただけ。」

  「でも途中から完全にNANAのショーになってるじゃん! 俺たちは一緒に酒飲んで喋ってほしかったんだよ。なんで本人が打ち始めるんだ?」

  「お酒飲むだけじゃ、つまらないでしょ。」あなたたちと無駄話がしたいわけでもない。。

  「いいじゃないか、Frank。」

  隣の男が笑った。ああ、やっぱりFrankだったらしい。安心して。たぶんまた忘れる。「NANAのプレーなんて毎日見られるもんじゃない。今日は得したよ。」

  「分かってるならいいけど。」私はわざと挑発するように言った。どうせ彼らにとって私は、ただの「小娘」にすぎない。何を言おうが、何をしようが、大人の男である彼らが本気で相手にするような存在ではない。女相手にムキになるな。そういうことなのだろう。

  私はキューを構え、手球越しに一番近い色球へ狙いを定める──もちろん、それは見せかけだ。

  わざと角度をつけて撞く。

  外した、と周囲から残念そうな声が漏れた次の瞬間、クッションで跳ね返った手球が別の色球を弾き、そのままポケットへ沈めた。

  「……NANA、本当にここに来てからビリヤード覚えたの?」

  「私のこと、『育つところを見てきた』んでしょう? 分かってるはずじゃない。」

  連瑀辰(レン‧ユイチェン)に初めて連れて来られた頃の私は、キューの持ち方すら知らなかった。

  Fred……Frankも含め、この店の常連たちは皆、一度は私の手を取って打ち方を教えてくれた。

  たぶん私は、高校へは體育推薦(たいいくすいせん)で進学できるくらいには運動神経が良かった。だから上達も早かった。

  それにもう一つ。

  あの男たちに、あまり熱心に「指導」されたくもなかった。


  私は知っている。

  彼らが何を考えているのか。

  何も知らない新人の前で優越感に浸りたい。

  若い女の子の前で男らしさを見せつけたい。

  手取り足取り教えるという名目で、その柔らかな身体に触れていたい。

  ──ちょうど、さっき私が陳苡若(チェン・イールオ)にキューの握り方や撞き方を教えていたように。彼女はいつも通り、化粧もせず、ファンデーションも塗らず、おしゃれもしていなかった。それでもシャンプーの香りと、彼女の体温が混ざった匂いだけは、今もまだ鼻の奥に残っている気がした。

  男たちがビリヤードを好む理由が、少しだけ分かる気がする。

  ──キューは、彼ら自身の分身なのだ。

  台の上にある、自分の欲しいものを支配するための。

  狙いを定めて。

  ツく。

  ポケットへ落とす。

  そして、落ちた球がその後どうなるかなど、もう気にも留めない。

  まるで女を扱うみたいに。


  張仕忠以外、誰一人として知らない。男子校へ通っていた彼が、どうやってあの少女と出会ったのか。きっと彼が心身ともに最も追い詰められていた時、その少女は彼に一番必要な支えを与えたのだろう。

  そして。思春期特有の、どうしようもない衝動も少し。

  けれど、張仕忠がどれほど優秀で、どれほど一族の誇りとして育て上げられた「選ばれた子」だったとしても。彼は、自らの肋骨からエバを生み出したアダムではなかった。

  私は、その少女について何も知らない。

  「聞いた話では」、私の目は彼女によく似ているらしい。笑った時のえくぼも。けれど私は本人に会ったこともなければ、写真すら見たことがない。

  聞くところによれば、彼女の身分は非常に敏感だった。あるいは、その両親が政財界で持つ立場が。あの老いぼれが一生かけて築き上げた地方での名声は、その家の前では、まるで砂の城のように一瞬で崩れ去った。

  大人たちの論理では。私が生まれた瞬間から、「何もなかったこと」にされた。

  彼女は変わらず、名門のお嬢様。傷一つない掌中(しょうちゅう)の玉(たま)。

  家が必要とする時まで、大切に飾られる存在。

  そして張仕忠は。自分のためだけに用意されていたエデンの園から、永遠に追放された。一族を地獄へ堕としたルシファー。あの老いぼれが、生涯赦すことのない、忌まわしい息子であり、裏切り者となった。


  私は、「父親の愛」というものが何なのか分からない。もしかすると、張仕忠(チャン・シージョン)にも分からなかったのかもしれない。父親が彼に与えた愛とは、食べさせること、住まわせること、生かしておくこと。

  ただし条件は一つ。

  一族の名を上げること。

  けれど今や張仕忠は、一族最大の汚点となった。体面を何より重んじる父親が、生涯拭い去ることのできない恥となった。

  すべての経済的支援を断たれるのも、当然のことだった。

  輝かしい将来を約束されていた張仕忠は、一瞬にして、あらかじめ舗装(ほそう))されたレールを失った。女の身体には一突きで入れたくせに、自分の人生ではミスショットを打った。

  「自分の子供は自分で育てろ。」

  けれど、自分一人さえ養えない十七歳の高校生に、どうして子供を育てられるというのだろう。張仕忠は高校を中退した。

  ──あるいは、「私のせいで」学校を退学になったという話もある。

  「私のために」、彼は工場で働こうとした。

  「私のために」、漁師について船に乗ろうとした。

  「私のために」、昼も夜もなく仕事を探し回った。

  「私のせいで」、この一族は将来有望な若き星を一人失った。

  私はまだ生まれてもいない頃から、一族に──少なくとも、あの老いぼれに恥をかかせていた。


  キューが手球を撞く。手球が色球をポケットへ落とす。あるいは、色球を思い通りの軌道へ運べない。どちらにせよ、責任を負うのは手球であって、キューではない。

  それが男たちの論理なのだろう?


  私はずっと、祖母は自分から食卓につきたくないのだと思っていた。なぜなら、私も嫌いだったから。大きな丸テーブルを囲めば、誰かと誰かの視線は自然に交わる。だから私は、相手の目の奥に浮かぶ疑問を、いつも読み取ってしまった。

  どうして、この女の子がここにいるのだろう。

  どうして、この女の子はこの世界に存在しているのだろう。

  だから私は、いつも俯いて、自分の目の前にある料理だけを食べた。

  だから私は、人と目を合わせるのが嫌いになった。

  けれど、張仕信(チャン・シーシン)──張仕忠より八歳年下の、私の叔父(おじ)──は、かつてこんなことを言った。私が生まれる前は、家族全員が丸テーブルを囲んで食事をしていた、と。いや、確かあの時は、祖父に問いかけるように言ったのだった。こんなに大きなテーブルなのに、四人だけで食べるのは広すぎない? 若曦(ルオシー)が生まれる前は、家族みんなで食べていたんじゃなかったの?

  また「私のせいで」、祖母と父は食卓から姿を消した。

  色球に当たらないのは、手球の責任。

  息子をきちんとしつけられないのは、母親の責任。

  では、キューは──

  出し入れする以外に、何の役に立つのだろう。


  コトン──

  最後の色球がポケットへ落ちた。

  台の上には、白い手球だけがぽつんと残されていた。

  周囲から、まばらな拍手が聞こえる。

  「本当に一人で全部落としやがった……俺たち、一回も打てなかったじゃん。」Frankがぼやいた。

  「もう一ゲーム始めればいいでしょ。」私はキューをラックへ戻した。

  「商売上手だな。」別の男が、小馬鹿にするように笑った。

  もう一ゲーム始めるということは、台を借りる時間が延びる可能性があるということだ。強いて言えば、連瑀辰(レン‧ユイチェン)と私の仕事は、客をできるだけ引き留め、何度も利用時間を延長させることだった。

  もちろん、店の酒も重要な収入源だ。店長がどこで覚えたのか分からない手作りのカクテルは、少し刺激があるけれど、客が潰れるほど強くはならないよう調整されている。カウンターの隣には缶ビールを並べた冷蔵庫もあり、値段はコンビニとほとんど変わらない。けれど、せっかくここまで来たのなら、少しくらい普段とは違うものを飲みたい。少なくとも、店長の顔を立てるためにも。

  「NANAが男だったら、どれだけ女を夢中にさせてたか分からないな。」

  Frankは、自嘲するように口元を歪めた。

  今日連れてきた女の子に、あまり良いところを見せられなかったと自覚しているのだろう。

  「私が男だったら、ここにはいないよ。」

  男なら、何があっても「大事な跡取り」になれる。一族に汚点を残したとしても、子孫さえ残せるのなら。「張」という苗字を、次のY染色体を持つ子供へ被せられるのなら。少なくとも、いくらかの使い道はある。種馬(たねうま)か、種豚(たねぶた)のように。

  女として生まれれば、役立たずの中でも、さらに役立たず。

  男たちは自分たちの氏族社会に、これほど苛酷(かこく)な規則を作り上げた。

  けれど実際に罰を受けるのは、たいてい女の方だった。

  そこでようやく私は、わざと自分の姿を隅に隠しているような陳苡若に気づいた。こんな場所に来たことのない彼女は、きっと怯えているのだろう。学校では、彼女は決して人見知りをしない。いつも余計なお世話なくらい──いや、熱心に、クラスの全員へ話しかけている。相手が彼女と話したがっているかどうかに関係なく。自分の振る舞いが嫌われるかもしれないと、心配する様子もない。

  「……ソフトドリンク、飲む?」

  私は彼女に近づいた。

  「普通にコンビニで売ってるようなやつ。」

  私や連瑀辰が本当に酔ってしまうと面倒なので、客から酒を奢るよう指定された時も、店長はたいていウォッカやジンの代わりに、炭酸飲料やミネラルウォーターで作ってくれる。

  俯いていた陳苡若が顔を上げた。彼女と私の身長はそれほど変わらない。ただ、壁にもたれていた彼女は、少し背中を丸めていた。

  「……それとも、帰りたい?店長には私から言っておけばいいよ。どうせバイトに来たわけじゃなくて、ただ遊びに──」

  「大丈夫。」黒縁(くろぶち)眼鏡の奥から、強い眼差しが私へ向けられた。「私は帰らない。」

  そして彼女は、ゆっくりと背筋を伸ばした。


  「ウォッカを一杯ください。さっき、あなたが飲んでいたのと同じものを。」


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