79 海ゆかば
遅くなってすみません。
前回1日ズレたのがひびきました。
『いや、すまんすまん。こういう所に居ると身体が勝手に動いちまうんだ』
エドが頭を掻いて、苦笑いしながら戻ってきた。
エドが何歳かは知らないが、どう見ても40は過ぎてそうだし、だとすれば20年以上船の上に居たわけだから、船長の号令が掛かると反射的に身体が動いてしまうのも仕方ないことだろう。
そんな事情を知らない七五三兵衛は、目を吊り上げてこちらに文句を言ってきた。
「邪魔しよるなら降りてもらうでほんまに」
「すみません、元々船乗りなもんで、なんか身体が動いちゃうそうなんです。気をつけるように言っておきます」
「はぁ?船乗り?ほぉか、やったらしゃないわな、きぃつけやほんまに」
あら、船乗りだったらしょうが無いんだ…。
急に態度が軟化したな。
同族意識ってヤツなのか、まんざら嫌でも無さそうだったな。
少なくともあっちの坊さんよりは好感持たれたようだな。
それにしても、あの坊さんはずいぶん偉そうだったけど、何者なんだろうな。
あ〜もし大阪の方に行くんなら、一向宗関係かも知れないな。
あまり、関わり合いにならないようにしないとな。
船に乗ったのが昼過ぎだったので、何処かで一泊することになるのだろう、快速自慢の関船と言えど、さすがに4時間で大阪にはたどり着けない。
そろそろ日も暮れそうなので、どうするのかと思っていたら、船長からアナウンスがあるようだ。
「今日は熊野衆のはからいで新宮に泊まることになっちょる。宿も用意しとるでくつろいでや」
すると、また2人の僧侶が口を挟んできた。
「明日は間違い無く日のあるうちに着けるのだろうな」
「明日もこの風なら心配要らんが、どうなるかは天気次第じゃ」
「我々は黒江からまた歩かねばならんのだ、何とか頼むぞ」
「やるだきゃやったる。じゃが、どうもならん時はどうもならんもんじゃ」
黒江?
どこだ黒江って。
ちょっと脳内マップを見てみると、はぁ?雑賀城のすぐ側じゃん。
こいつら、雑賀衆に用があるのか?
だとすると、やっぱり一向宗関係っぽいな。
下間なんとかとか、七里なんとかと言う方々かしら?
ま、どっちでも良いけど、近づかない方が賢明だな。
将来敵対する可能性が大だしな。
船は日没寸前にようやく新宮港に到着した。
ここは熊野水軍の本拠地らしく、安宅と呼ばれる全長が50mを超す大型船も何隻か見られた。
我々はよそ者なので、隅っこの方で小さくなってるのかと思えば、堂々と港のど真ん中を通り、一番大きな桟橋に着けた。
この辺りにも眞鍋七五三兵衛の気の強さというものを感じさせる。
我々はそのまま宿に通され、いきなり夕食を振る舞っていただいた。
こういった歓待も全て堺からのはからいによる物らしい。
どんだけ金出したんだよ。
同行してきた僧侶と、どこぞの奥方とは別々の部屋に通され、それぞれ個別に歓待を受けているようだ。
しかし、坊さんは途中で降りるようなことを言ってたよな。
それも堺衆持ちなのか?
どういう関係なんだろう。
気になるなぁ。
気になるけど、関わり合いになりたくない。
悩ましぃ。
この夕餉の席で、新九郎がやとった5人の親衛隊たちと一緒に酒を飲むことになったので、改めてめいめい紹介された。
丑五郎
虎之助
龍造
馬ノ介
戌三郎
と、それぞれ名乗ったのだが、今日来ていない者があと三人。
こちらはそれぞれ
亥之助
猿田彦
卯芽
というらしい。
卯芽だけは女性らしく、湯浴みの時とかでも警護が要る場合の備えとするという。
う〜む。
「これにあと鼠と蛇と羊と鳥が居れば十二支完成だな」と、俺が冗談めかして言うと、新九郎は「心得ましたと!」大まじめに返事をしてきた。
まさかマジで最初から狙ってたのか?
頼むから能力で選んでくれよな。
翌日は雨になった。
どうやら前線が通過中のようで、風も昨日より強い。
大丈夫かな?
眞鍋七五三兵衛は空を見上げ、渋い顔をしている。
こっちは別にそこまで急いではいないが、それでもここで1日過ごすのは厳しいものがある。
思い切って眞鍋さんに聞いてみることにした。
「こんな天気だけど、船は出せるの?」
「おぉ、ワシらぁなんてことあれへんけど、あちらのご新造さんはあかんやろ」
「じゃあ、今日はここで留め置きか?」
「しゃぁないわな。大事なお客はんや」
そんな会話を小耳に挟んだのだろう。
2人組の僧侶が血相を変えてやってきた。
「おい、船は出ぬのか?それは困るぞ」
「海、見てみい。白波立っとるやろ」
「波?あぁ確かに…」
「ごっつぅ揺れるでぇ」
「そのくらい覚悟の上じゃ」
「ワシらは良くてもご婦人方はそうはいかんやろ?」
僧侶は俺の顔を見て、その後謎の奥方を見た。
僧侶達は奥方の方に行って、交渉するつもりのようだ。
どんだけ急いでんだよ。
って言うか、俺は大丈夫と思ったろ、お前ら。
どういうことなんだ、全く。
僧侶達は暫く交渉をしていたがご婦人のお付きの人が「堪忍してつかぁさい」と頻りに謝っている。
それでも譲歩したようには見えない。
まあ、普通の船旅とは訳が違うのだ。
船賃だってべらぼうに高いに決まってる。
何か事情があるんだろうけど、自分達の都合だけを押しつけるのも、如何なものかって感じだね。
僧侶達がしつこく謎のご婦人に船を降りるよう交渉しているのを見て、眞鍋七五三兵衛が業を煮やして声をかけた。
「そない急くんやったら、おどれらが降りたらどや。そっから熊野参道登って2日も歩けば高野山着くでぇ」
「なんだと、船の方が速いと言ったのはその方では無いか」
「順調に行ったら、言うたはずや。こないな天気どうにもならんやろ」
「明日になったら船は出せるのか?」
「そらわからん。天気次第や」
その返答を聞いて、僧侶2人は話し合いを開始した。
俺はそれとなくマップを確認し、現在の雨雲の様子を調べたところ、前線が通り過ぎれば晴れが続く感じだった。
ま、明日には普通に出航出来るだろう。
しかし、雨とはなぁ。
雨が降ってなきゃ、新宮の街でも見て回ろうって気にもなるけどなぁ。
しょうが無い、朝飯でも食べるか。
俺は七五三兵衛に聞いてみた。
「予定外の宿泊だけど、食事とかは出るのかい?」
「おぉ、そら、心配要らん。ここにおる限り、いっさいがっさい面倒見てくれるわ」
「熊野大社って近くなの?」
「そっから見えるやろ」
「ああ、あれか、食事したら見に行ってみるかな」
俺たちは朝食を食べたいので、早速親衛隊の戌三郎君に番頭さんに伝えに行ってもらう。
何故戌三郎かと言えば、名前が足が速そうと言うだけだが、実際彼は良く気が利くヤツのようで、こちらがいちいち説明しなくても、感じ取ってすぐ行動してくれるようだ。
そうこうしているうちに、僧侶達の結論が出たようだ。
どうやらここで船を下りることにしたようだ。
ま、確実に着きたいならそうなるだろうな。
ただ、船賃は前払いした分だけにしろと言ってきたようで、七五三兵衛は面倒くさくなったのだろう、「もうそれでええわ」と、手で追い払う動作をして厄介払いをした。
やれやれ、うるさいのがいなくなって良かったな。
我々はいかにも漁師町の朝食という感じの朝食をいただき、「どれ、雨の中、熊野詣でと洒落込みますか」と言って、宿を出ようとすると、謎のご婦人が声をかけてきた。
「もし。其方様は何処ぞの大身のお武家様とお見受けいたしますが、熊野速玉大社までおいでで?」
「そうですね。ただの物見遊山ですが」
「ご迷惑で無ければ、ご一緒しても宜しいでしょうか」
「はあ、それは構いませんが…何かご事情でも?」
「いえ…事情と言うほどのこともございませんが、物騒な世の中故、女子独りでは何処にも行けぬというのに、付き人の為助はご覧の通り腕に怪我を負っております。お供が大勢いらっしゃる其方様とご同道いただけるなら、心強く思う次第で…」
「ええ、良いですけど、失礼ですけど…ああ、私は大谷吉子って言うんですけど、何とお呼びしたら?」
「これは、大変失礼いたしました。されど事情により家名を明かすことはご容赦くださいませ。私くしのことは梛とお呼びください」
「はあ、梛さんね」
その後は、世間話などをしつつ大社までぽつりぽつりと歩いて行く。
ただ、よくわからない人との会話である。
すぐに話題も尽き、徐々に無言の時間が長くなっていく。
宿から20分ほどでようやく大きな鳥居の前にたどり着いた。
今更ながら、梛さんにこの神社の御利益を聞いてみた。
「ここにお参りすると、どんな御利益があるんです?」
「実はあまりよく知りませんの、でも、その大きな御神木に触れて、その葉を懐中に納めておくと、道中の安全祈願になると聞きます」
「そうですか、じゃあしっかりお参りしとかないと」
「左様ですわね本当に」
フフフと笑う姿に、気品が備わっているし、言葉の端々にお公家さんっぽいニュアンスがある。
身分を隠してるけど、実は凄く高貴な方とか?
それにしちゃ、お供が1人ってのはおかしいしな。
う〜ん。謎だ。
神社にお参りして帰ってきた時には雨は止んでいた。
だが、風は依然として強く、船を出すのは憚られた。
仕方なしに我々は、新宮の街を見て回ることにした。
ここは熊野三山の信仰の拠点であると同時に、新宮城という城の城下町でもある。
現在は有馬氏が熊野別当兼新宮城城主としてこの一帯を支配しているようだが、実権は婿養子である堀内氏が握りつつあるという話だ。
ここでも、色々と下克上が行われているようだ。
プラプラと街を歩いていると、衣服や防具を扱う店が眼に入った。
一応茶会用にお濃さんの小袖を持って来てはいたが、いつ返せと言われるか分かったものでは無いので、もうちょっと俺向けの服を買いたいなと思っていたのだ。
店に入ったとたん、一着の真っ赤な陣羽織が目に飛び込んできた。
店の一番奥に飾ってあるにも拘わらず、その赤い色のせいだろうか異様に眼について仕方がない。
他のものを見て回ろうと思ったが、どうにもその羽織が気になって全然眼に入ってこない。
店の主人に、この羽織は何か曰くでもあるのかと聞いてみたところ、権現様のご神体の一部を、糸に織り込んであるという。
かつては祢宜達がこの羽織を着て、檜扇を持ち、神前で舞を披露する慣わしになっていたそうである。
何故そんな貴重な物が売りに出ているか、疑問に思っていると、どうやら現当主の有馬何某が堀内氏に実権を握られたことで、いくつかの家来の家が離散することになった。
これはそんな離散した家から買い取った物の一つだという。
値段は金1500。
決して安くは無いが、べらぼうに高いわけでも無い。
由来が本当なら、実にお手ごろ価格である。
よし!買った!
気になってしょうがない物は、買う以外解消法は無いのである。
ゲーステ5と、おんなじである!
※アイテム「熊野権現の陣羽織」を入手しました。
効果:統率+5
戦場スキル「鬨の声」を獲得
※戦場スキル「鬨の声」を獲得しました。
統率が5アップしましたので、レベルアップが可能になりました。
おおっと!
久々のレベルアップですよ。
統率が5も上がっちゃったの?
凄いなぁ俺。
※戦場スキルが一つ余りますので、スキル合体するか一つを破棄してください。
○大谷(飛騨掾)吉子(女)
年齢17
織田家:武将
所持金:5020
総合レベル:18
思想:革新
宗教:なし
名声:158(補正+10)
使用武器:メイン・烈風孔雀翠扇+火炎鳳凰緋扇
サブ・脇差
領地:吉子村
能力値:
統率89(補正+10)、武力82(補正+5)、知略98、政治92
体力84、腕力63(補正+10)、技量64(補正+15)、乗馬8、砲術2、走力8
常駐スキル:鑑定、茶の湯
製造スキル:調理
戦場スキル:非道、二刀流、兵法家
え?どれか合体出来るスキル有るの?
※今獲得した「鬨の声」と「非道」を組み合わせて「鬼」を獲得出来ます。
いや、何かすごそうだねそれ。
どうなるわけ?
※「鬼」は戦場で叫ぶと、相手の兵士を恐慌に陥らせます。
形勢が不利になっても味方兵士が逃走しなくなります。
また、相手武将を殺すと獲得経験値が二倍になります。
農民兵を殺しても、占領後に民忠が下がりにくくなります。
なーるほど、両方の良いとこ取りだね、まさに。
それで行きましょう。
※はい、戦場スキル「非道」と「鬨の声」を合体させ「鬼」を獲得しました。
「鬼」はもう一段上の特殊スキル「鬼神」へと繋がるスキルですので、上手く育ててくださいね。
「鬼神」
そりゃまた強そうだね。
それを取るとどうなるわけ?
※武器を持って戦場に現れただけで、訓練度60以下の敵兵は逃走し始めます。
味方兵士の士気が15アップします。
戦場での移動速度が10%アップします。
一騎打ちで武力の差を無効化出来ます。
兵士または武将を100人以上殺害すると、自動的にレベルアップします。
そりゃ凄いね。
獲得条件とかは?
※20回以上戦場に出ること。
一騎打ちで3回以上勝利すること。
武力95以上。
自分よりレベルが上の武将、または大名の部隊を、5回以上潰走させること。
以上です。
無理です。
「鬼」で十分です。
何その軍神レベルの活躍。
上杉謙信クラスでなきゃ無理でしょ、そんなの。
※そうかもしれません。
因みに兵法家の上位スキルってあるの?
※「今孔明」と「今張良」があります。
効果は、どちらも共通なのが、
大名が自分の意見に反対しなくなる。
計略の成功率が20%アップする。
部下の武将の統率が10%アップする。
敵の武将が寝返りやすくなる。
違いは、孔明が率いる部隊の攻撃力が10%アップするのに対して、張良は防御力が10%アップします。
このスキルの獲得にはどちらも、自身が軍を率いて、敵を計略に貶めて大勝した時。
軍師の職に就いていること。
知略が95以上ある。
統率が90以上ある。
と言う条件で、張良か孔明か選ぶことが出来ます。
これも無理っぽいな。
まず、軍の指揮官になるのが大変だわ。
しかも軍師になってなきゃならないなんて。
ま、遠い先の話として、頭の隅っこに置いておくとしよう。
おれは買ったばかりの真っ赤な陣羽織を着て、宿へと戻ることにした。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
どんどんとスペックだけが上がっていくけど、全然戦闘していないという……。
引き続きよろしくお願いいたします。




