69 目指せ軍産複合体
誰が仕込んでるんでしょう?こういう展開。
神様自身ですか、それとも神様の上司?
※上司なんていません!
私が神様ですから。
じゃあ仕込んでるのも神様と言うことですね。
※仕込んでなんかいません。
自然に成り行きでそうなってます。
へぇ〜。
因みに、神様、誕生日っていつですか?
※は?私の?
3月30日ですけど?
何年産まれ?
※センキュ……ゆ、有史以前ですから、人間の尺度では測れませんね。
だんだん言ってることが、何処かの自称悪魔と似てきたな。
ま、いいや。
※お疑いのようですから、一応説明いたしますとですね、まず、この世界の成り立ちが、大谷さんの記憶に基づいてると言うことをお忘れなく。
大谷さんが生前、見たり聞いたりしたもので、ご自身で忘れているようなことでも、記憶には残っているのです。
ですから、漫画やドラマの展開に似かよった事が起きたとしても、何ら不自然なことではないのですよ。
はいはい。
そう言うことにしておきましょう。
※そういうことにじゃ無くて、そうなんです。
じゃあ、この世界はすごく現実感があるけど、夢の中の世界と変わらないってことかな?
※極論すれば、そう言えなくも無いです。
ほほう。
今の発言は重要だよ。
もしかして、俺は死んでいなくて、これは夢の中の世界かも知れないと言っているようなもんだしね。
※それは違います。
あなたは、大谷吉続という未婚の日本人男性は、間違いなく亡くなりました。
なぜ「未婚の」と付けたのか色々問い質したいところだが、これ以上掘り返すと、良く無いモノが出てきそうなので、この話は一旦保留にしておこう。
慶次への返事もしないといけないしな。
「雇って見ちゃどうだい?」と言われたが、「俺を雇え」と脅しているようにしか聞こえなかったなぁ
俺の記憶どおりだって言うなら、腕っ節は立つだろうから、お試しで雇ってみるかな。
「じゃあこうしよう。とりあえず又左が辞めるまでの間、一緒に行動してもらって、それで決めることにするよ」
「よし決まった、宜しく頼むぜ」
「こちらこそ」
そんなこんなで、またお供が増えたところで、ちょっと腹ごなしに工房まで行ってみることにした。
行ってみて驚いた。
鐵之助の工房では、なんと連弩10台がほぼ完成を迎えるところだった。
あれ?10台?
最初5台作ってたんじゃなかったけ?
俺がそう尋ねると、「そいつはもう出来てます」といって、奥の方を指さした。
どうやら5台完成させた後、再び5台まとめて作り始めたと言うことらしい。
こっちがお菓子作りに夢中になっている間に、こんなことになっていたとは。
そして、馬車の方も既に3台がロールアウトしており、4台目の御者台はほぼ完成していた。
おやおや、何か知らない間にずいぶんと量産体制が整っていたようだな。
そういうことならと、俺は早速そのうちの1台を連弩搭載車に改造する指示を出した。
どういうふうに載せるつもりか聞かれたので、またしてもイメージスケッチを描いてあげたところ、それを見た慶次がいたく感心していた。
「絵心まであるとは、驚いたねこいつは」
「コラ!失礼な物言いをするな!まだ正式に雇ってくれるか分からんという時に」
「おっと、つい悪い癖で、失礼しました」
確かに、ちょっと上からな物言いだったけど、本人にそのつもりはなかったからだろう。
俺も普通に聞き流してしまった。
俺は昔から組織の中で過ごすことが苦手だった。
その理由の一つが上下関係である。
特に、体育会系的な上下関係は大の苦手である。
この時代で、それが非常に大事なことは良く分かっているが、相撲大会でやらかしてしまったように、上下関係の空気を読む、いわゆる「忖度」する間柄というのが、気持ち悪くてならないのだ。
だから、いずれ権力に近づけばそのへんの壁にぶち当たることは目に見えているので、せめて身内関係だけでも、そういった「忖度」的な物は排除していきたい。
慶次の気安さは、そういう意味では貴重なものかも知れない。
さて、連弩搭載車を作る上で、ただ単に連弩を載せただけでは、使えないだろうと俺は考えた。
なにしろ連弩を後の車台に載せるとしたら、御者台が邪魔になって前に向かって撃つことは出来ないからだ。
なので、連弩は後ろに向かって撃つ構造になる。
狙って撃つのは1人で出来るが、周りでサポートする人間が2人は必要である。
カートリッジの交換や接近する敵を撃退する役目もある。
予備のカートリッジをいくつか積むことを考えると、それだけでだいぶスペースが厳しくなるが、敵の矢を防ぐ防楯も必要になる。
そうやって考えていくと、かなり大きな構造になってしまう。
水平射撃をすることが前提だから、上部構造が大きくなると馬車が不安定になってしまう。
支柱を短くして下部構造を簡略化しないとダメだな。
連弩を横に向けられなくなるが、横に防弾板を立てて真後ろにしか撃たない構造にするか。
予備のカートリッジは御者台に積むことにして、連弩の構造体を直接車台に据え付ける構造図を描き上げた。
防弾板を両脇に立てたので、まるで第二次大戦中のドイツ軍の自走砲のようなスタイルになった。
特にやっつけで付け足した感が、鹵獲した76mm野砲を5トンハーフトラックに積んだヤツによく似ている。
※そういう一部の人にしか分からない例えは、お止めください。
は〜い。
なかなか、別の表現が難しいのだが、ダンボール回収用のリヤカーみたいな感じで、左右に高い板を立てかけた形というかな。
※やっぱり分かりにくいです。
そんな形はどうでも良いんだよ。
それより、連弩の方だけ防弾板が付いているのも、御者が可哀想なのでこちらは予備カートリッジを防弾板代わりにすることにした。
射角の微調整は連弩本体で左右5°ずつほど出来るので、多少不自由するかも知れないが、何とかなるだろう。
という感じで指示を出したんだが、岡部さんのお弟子さんはしばらく考えて、「後の車台は作り直しませんかね?」と言ってきた。
え、気に入らないってか?
「この車台に拘るから形が限られるんじゃないかと思うんですよ」
「ほう」
「たとえば、御者台と切り離してすぐに地面に固定出来れば、安定するんじゃないかと思うんですが」
なるほど。
俺は連弩を自走砲のような形で運用することしか考えてなかったが、野砲のような使い方もありだな。
その方が構造は断然シンプルになる。
どうも先祖返りするようで、それは無いと勝手に思い込んでいたけど、この国の戦争ではまだ、野砲の概念すら無い。
野砲が機動性を持つ意味は、戦車や歩兵が機動性を持ったからだ。
歩兵が機動性を持ってない以上、車輪付きの牽引砲でも、運用的には十分だと言える。
むしろ人力で扱える分、取り回しが良いとさえ思える。
俺は矢が飛び交う戦場の真っ只中で使うことを考えていたのだが、射程が400mあるのだ。
アウトレンジからの一方的な攻撃は開脚式の砲架式でも、槍隊相手なら十分可能だろう。
問題は騎馬突撃戦法で、こちらの弾幕をすり抜け、騎馬で蹂躙されるケースだ。
自走式にメリットがあるとすれば、そういった騎馬突撃にも逃げながら応戦出来ることだろうか。
それとて射角が固定では、かなり制限を受けるわけだが、馬から逃げるには自走式の方が良いだろう。
どちらも一長一短という感じなので、結局両方作って見ることにした。
第一次大戦以降に主流となった開脚式の砲架を描いて、お弟子さんに見せると、「ほう!こら、ええんちゃいます?」というので、任せてみることにした。
そんなこちらのやり取りを後ろから眺めていた慶次君が、馬車に酷く興味をそそられたようで、さっきから馬車の下をのぞき込んだりして、構って欲しそうにしているので、仕方なしに声をかけてみた。
「馬車に乗ってみるか?」
「へへっ、なぁに、牛車みたいなもんだろ?どうってことはねぇな」
などと、素直じゃ無い返事をしていたので、ちょうど馬具の調整をしていたエドに、試験運転に載せてやってくれと頼んだ。
「そこまで言うなら、乗ってやるか」と、相変わらず素直じゃ無い態度なので、あえて聞き流していたのだが、俺に代わり又左叔父さまに「ほんと素直じゃ無いなお前」と、厳しく窘められていた。
なかなか扱いづらいヤツのようだな。
護衛役、断ろうかな…。
とりあえず完成した連弩を馬車に1台載せて、俺たちは城へ舞い戻った。
そのわずかな間だが慶次君は、馬車の速度にいたく感動したようで、「速い速い!」と子供のようにはしゃいでいた。
こういう所は素直なんだがな。
城に着くと、又右衛門を呼んで、連弩を櫓の上に設置する作業を始めるように言った。
連弩は工房にあと4台あるのだが、とりあえず、櫓1基に2台ずつ設置するように指示を出す。
1台は既に改造用に使ったからな、残った3台でちょうど数も合う。
ただここで、又右衛門はどういう風に設置して良いか分からないというので、とりあえず、手の空いている者で持って来た一基を櫓に上げて、設置の位置、角度などを確かめた上で、回転式の台座と雨よけ、弾よけの設置も同時に指示を出す。
あとは人足を雇って集中的に工事を行えば、4〜5日で完成するだろう。
これで、ようやく防御の要である櫓の完成となるわけだ。
そんな様子を見ていた慶次君が、「こいつは大殿様が一目置くわけだぜ」とニヤニヤとしながら独り言を漏らしていた。
そうか、コイツまだ仮採用だったのに、こんな軍事機密見せちゃまずかったかな。
まあ仮採用とはいえ、城で一緒に過ごすわけだから、一応みんなに紹介しないとね。
なんだかんだで既に夕方になってしまったので、今日の夕食は全員集めて広間で行うことにした。
そこで慶次を紹介することにしよう。
となれば、ちょっとした宴会になるだろうと、それ用の夕食の準備を進めていたのだが、いつの間にか慶次がいなくなっていた。
又左君も、「あれ?今さっきまで一緒にいたんですけど…」と、要領を得ない。
城中探したが、どこにもいない。
「何やってんだアイツ!」と、さすがの又左君もお怒りの様子。
全員の分の膳を並べ終わり、後は食べるだけの状態になった時、ようやく慶次は広間に現れた。
しかし、あちこちに血が付いており、明らかに何かあったようだ。
そして、後ろに引きずっていたものを、ドサリと放り投げた。
どうやら女の忍びと思われるが、気を失っているのか動く気配は無い。
「こんな奴が4〜5人、城の周りに隠れてたぜ」
なんてこった。
この前桑原さんが始末したばかりだというのに。
「そいつらはどうなった?」
「多勢に無勢だったんでな…」
「むう…逃がしたか」
「いや、捕まえられなかったんで殺しちまった」
そ、そういうことね。
それなら、まあ良いや。
「コイツが一番強かったんで、生かしておきました」
「どこの忍びだ?」
俺が近づいて顔を見ようと頭に手を延ばした瞬間。
その女が不意に頭を起こし、おれの手に噛みつこうとした。
だが、慶次の刀の柄がその動きを遮った。
危ねぇ危ねぇ。
こいつら歯に毒を仕込んでる事も有ると聞くからな。
慶次は後ろ手に縛った女の首筋を殴り、今度こそ気絶させた。
「すまねえ、怪我は無かったかい?」
「大丈夫だ、助かったよ」
「なかなか根性のある女だね」
「褒めてる場合か、気をつけんか!」
新九郎が気色ばむが、俺が取りなした。
残念ながら忍びの女は、知らない顔だった。
もしや綾乃さんかな、とも思ったが、違う線かも知れない。
ともかく、慶次君は自らの有用性を証明することが出来たようだ。
他の誰も気付かなかったわけだしな。
こりゃ、採用しないわけに行かないだろう。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
次回は、忍びの正体が明らかになる?




