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53 年始

すみません。

相撲大会まで届かなかった。


※誤記修正しました。

 あっという間に大晦日、12月30日である。

 我々の感覚ならもう1日あるはずなのだが、ゲームの世界なので今日が1561年最後の日である。

 年越し蕎麦という風習は、江戸時代になってから定着したものなので、この時代は蕎麦なんて見向きもされていない。

 だが、そこはあえてこの尾張の北の外れの地から、始めてみようじゃないか、という目論見のもと、俺は会う人間、会う人間に片っ端から蕎麦を配って歩いた。

 涙を流して喜ぶ者、一瞬迷惑そうな顔をする者、様々であるが、ただでもらって嫌がるわけにもいかない。

 それが、領主からの振る舞いであれば尚のことである。

 もちろんこの時期なので、温かい汁蕎麦で頂くように、そのレシピと共に、「細く長くお付き合いしましょう」という年越し蕎麦の精神を書いた紙も一緒に添えておいた。

 その成果があったのか、下落傾向にあった民忠が一気に2上がったみたいだ。

 そう言えば月末でもあったな。

 領地チェック!


○吉子村

 領主:大谷吉子

 所属:織田家

 人口:2998人

 石高:415石

 金収入:4150

 米収穫:2950

 総兵数:400(200)雇い兵

 商業:685

 農業:530

 木産:140

 鉄産:150

 民忠:64

 特産品:魚

 

 ◇施設

 市場:2

 工房:1

 城郭:1(吉又城)

 港:2

 店舗:1


 おっ。

 あと2人で3000人達成だな。

 そろそろ兵隊も増員しておくかな。

 人口3000を超えると、本格的に城下町として認められることになる。

 別に町になったからどうということは無いのだが、城としての格が上がるので、天守閣などを建てられるようになるようだ。

 城の格が上がると言うことは、城主の格も上がるわけで、侍としての格も上がっていくのだ。

 見逃せないのが商業値が100近く上がったことだ。

 これにより、収入がかなり増えた。

 町子ちゃんのお店のおかげかな?


 そんな感じで来年に向けて期待に胸を膨らませていると、錦之輔がうら若き乙女を連れて挨拶にやってきた。

 おっ!ついに結婚するのか?

 そう思ったら実は妹だという。

 玉尾と名乗るその小娘はまだ17歳になったばかりだが、生意気にも城で働きたいと言うので連れてきたという。

 忘れてるかも知れないが、俺もまだ実は17歳なんだぞ。

 本人曰く、読み書き算盤は得意だというので、事務仕事は任せてくださいと自信満々である。

 まさしく恐い物知らずというヤツだ。

 千恵蔵の下に付けようかなと思ったが、こういうのは最初に出来るヤツの仕事ぶりを見せつけてガツンと鼻っ柱を折っておくにかぎる。

 そこで奮起してくれれば大きく育つだろうし、圧倒されてめげるようならお帰り頂くのが逆に親切という物だ。

 小一郎の助手にしてやろう。

 小一郎がここに居られるのも1月いっぱいまでだし、ちょうど良いだろう。

 念のためスペックチェック。


中村玉尾(女)

 洗礼名:マリ

 1543年生まれ

 年齢17

 大谷家:下女

 所持金:5

 総合レベル:3

 思想:革新

 宗教:キリスト教

 名声:1

 使用武器:弓

 領地:なし

 能力値:

  統率41、武力59、知略61、政治81

  体力66、腕力51、技量28、乗馬0、砲術0、走力7

 常駐スキル:幸運

 製造スキル:なし

 戦場スキル:なし


 あれあれあれ?

 ちょっとちょっと、かなりのハイスペックですよ。

 あ、しかもクリスチャンだね。

 これは珍しいパターンだな。

 この、幸運っていうスキルはなに?


 ※その名の通り、運が良いだけです。

  ただ、以外とバカにならないのが、賭に出た時は強いってことです。

  どっちに転ぶか分からないような事態の時、幸運のスキルが有るとたいてい良い方向に進んだりします。


 へぇ。

 ジョーカーとしては最強って事だな。

 しかも、武力が又右衛門と同じってすごいな。

 兄ちゃんやられっぱなしじゃないのか、この兄妹。


 「ねえ、あなたキリスト教徒なのよね。誰から洗礼してもらったの?」

 「あら、詳しいですねお姉さん。ガスパル・ヴィレラ神父様ですよ〜」

 「お姉さんじゃないよ、同い年だよ〜」

 「あらホントにぃ?背が高いし物腰がおば…風格あるからてっきり年上かと思っちゃった」

 「この戯けが!ご領主様だぞ。たとえ年下だとしても敬わんか!」

 「ぁ痛っ!」


 かなり思いっきりグーで殴ったな。

 武力負けてるのに大丈夫か?


 「申し訳ありません!幼い頃から行商の手伝いなどしておりました関係で、躾がなっておりませんでした。二度と連れて来ませんのでこの話はお忘れください」


 あれ?帰っちゃうの?

 いかん、このままではせっかくの政治力81が。

 ここは多少甘やかしてでも、留めておかねば。


 「あ、ちょっとちょっと。まあ、そんな頭ごなしに叱らなくても」

 「いえ、こやつは甘やかすと図に乗りますので、きつく叱っておきますゆえお許しください」

 「大丈夫、別に怒ってないから。それより、その神父さんとはどこで会ったの?」

 「京だよ」

 「京ですだ、戯け!」

 「痛いなぁもう、叩くな!」

 「貴様!」


 いやあ、前に森さんに口をとんがらかすなと怒られた憶えがあるが、こうやって目の当たりにすると、やはり控えるべきだと感じるな。

 うむ、人の振り見てなんとやらだ。


 「まあまあまあ。私も似たようなもんだから」

 「大谷様とはお立場が違います。こいつは身の程が分かっておりません」

 「それで、玉ちゃん。そのヴィレラ神父は京都の何処にいるの」

 「よく覚えてないけど、確か四条の姥柳町だったかな?お寺を建ててそこに住んでるの。なに?お姉さんもキリシタンになりたいの?」

 「同い年だっつっとろうが!」


 おっと、ついボケにツッコむ癖が出てしまった。

 しまったしまった。


 「ごめんなさい……」

 「申し訳ございません!キツくキツ〜く言い聞かせておきますので、平にご容赦くださいませ!」


 さすがにこの娘もばつが悪そうだ。

 錦之輔はあと一歩で土下座というほど畏まって謝っている。

 ん〜フォローが難しいな。


 「あ〜怒ったわけじゃ無いから。ついツッコんじゃっただけだからね」

 「つっこんだ…とは?」

 「あぁ、いや、説明が難しいから、ごめん忘れて」

 「はあ…それで、大谷様は伴天連についてご興味がお有りなのですね」

 「うん、色々と我々の知らないことを知ってるからね」

 「なるほど。西洋の知識に興味があるわけですね。それについては私も同感です」

 「それで、その神父さんに会うには、京都まで行かないといけないのかな?」

 「そうですね。布教を許されてるのがその周辺だけのようですので」

 「なるほど」


 なんだ?

 急に丁寧な口調になったぞ。

 コイツ人を見てやがるのか?

 とんでもないタマだな。

 玉だけに…。


 二度と連れてこないと言う錦之輔を説得して、どうにか留めることに成功したが、なかなか扱いが難しい娘だな。

 小一郎に使いこなせるだろうか?

 少なくとも千恵蔵じゃ無理だな。

 ともかく、宣教師との繋がりが最優先だ。

 玉ちゃんには年明けの5日から城に入ってもらうことにして、慌ただしい大晦日とともに1561年は終了した。


─1562年─


 年明けである。

 思えば36年間、この国に暮らしていながらちゃんと正月らしい正月を迎えたことは無かった。

 初詣も行かないし、初日の出などもそれと意識して拝んだことはなかった。

 今、なぜかこの怪しげな世界で拝む初日の出が、ひどく神々しく感じるのは何故だろう。

 一度死んだからか、それとも死と隣り合わせの環境だからなのかは分からないが、刺すような凍てついた空気の中に差し込む暖かい光りに、ありがたみを感じているのだった。

 自然と手を合わせ拝んでいる自分がいた。

 ふと振り返ると、同じように拝んでいる者が3名、後にいた。

 伊勢新九郎、中村錦之助、荒木又右衛門である。

 おそらく今後、俺の国の重臣となるであろう3人である。


 「明けまして、おめでとう」

 「おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

 「おめでとうございます」

 「おめでとうございます。今年は良い年になる気がいたしますな」

 「そんなことは一年経ってみないと分からないさ」

 「仰るとおりにございますな、さすがはご領主様です」

 「え?皆さん初日の出を拝みに?」

 「いえいえ、ご領主様にご挨拶に参った次第で」

 「それは、年明け早々朝早くにありがとうね」

 「こうして、土地のため、町のために働けるのもご領主様のおかげですので、感謝するのはこちらの方でございます」

 「それは、お互い様だよ。まあ、今日より良い明日を目指して頑張りましょう」

 「こちらこそ、よろしくお願いします」


 そんな感じで一通り挨拶を済ませると、新九郎が昨夜からお供えしてあった、餅を下げていった。

 あれ?もうお餅下げちゃうの?

 ひょっとして、それが雑煮になるのか?


 ※この時代はまだ、正月は大晦日の夕方から始まるという考え方でした。

  元々は大晦日の夕方に新しい年の歳神様を迎えるため、お餅を供物としてお供えしたのが始まりです。

  人々は神社や寺に籠もり、一晩中お祀りをして、ご来光を拝んでからお餅を持ち帰り、そこで雑煮にして食べることが、一連の神事となっていたのです。

  時代を経るに連れ、正月に餅を食べる習慣だけが残ったという感じですね。


 いやあ、勉強になるねぇ。

 民族学まで教えて頂けるとはね。


 ※そもそも、政(まつりごと)という言葉は、神事としての祀りと、国を治めることが同義であるという、祭政一致という言葉から来たものとされています。

  つまり、国を治める者は、神事においても頂点に立っている者なのです。


 俺なんにも知らないからなぁ。

 その辺からしてダメっぽいよな。


 ※身分が上がれば、朝廷や公家の方との接触も増えるでしょう。

  その時に「有職故実」に通じていれば、ひとかどの者と見なされ、軽々には扱われないでしょう。

  今風にいえば一種のプロトコルという事になりますね。


 ん?プロトコルってコンピュータ用語じゃないの?


 ※そうですね、コンピュータでも使いますね。

  まあ、元々の意味は外交などの場で、話し合いや交流を行う上での手順とか、決まり事のような物のことを指した言葉ですが、それが転じてコンピュータ間での通信を行う上での規格・手順という意味に使われています。


 ふうん。

 ホント勉強になりますわ。

 その、昔からの風習に倣えば、今日は皆さん何もしないと言うことになるねぇ。


 ※そうですね。

  ですから、徹夜でお祀りして、その後お雑煮食べれば当然眠くなるわけで、後は1日家を閉め切って、寝てるというわけです。


 ほほう。

 なるほど、そこで見た夢が初夢になるわけだな。

 前から不思議だったのは、元旦の日の朝見た夢が初夢じゃ無いと言う話が納得いかなかったんだが、そういうことだったのね。


 ※それともちょっと違うようですが、まあだいたい合ってます。


 なに?何か歯切れ悪いなぁ。

 違うってどう違うかハッキリしてくれないとな。


 ※まあ、起源については諸説あると言うことで、正しいとも間違ってるとも言えないと言うことです。


 ああそう。

 まあ良いや。

 基本的にはどうでもいい話だからな。


 ※そうです。

  無駄に行数を浪費するだけで、話が進みませんから早送りしてください。


 早送り?


 ※そうです。

  することが無い場合は早送り。

  これ、ゲームでは常識でしたよね。


 いや、これ、俺にとっては現実なんだけど、早送りなんてあるの?


 ※実はあるんです。


 うそぉ!

 気付かなかったよ、そんなコマンド。


 ※HUDをちょっと出してください。


 え、はいはい。

 はい、出ました。


 ※その日付が出ている横に、小さな▲が見えませんか。


 ああっ!

 あるね。


 ※それをちょっとポチッとしてください。


 ポチッとな。

 あっ!×2になった。


 ※もう一度押してください。


 おおっ!×3になった。


 ※ちょっと外を見てください。


 おおおっ!人がすごい勢いで走ってる、いや、歩いているのか。

 おお、太陽がぐんぐん動いてる。

 また押すと……×4だ。

 すごいすごい、あっという間に昼だ。

 更に押すと?

 あ、戻った。

 へぇ〜。

 早送りがあるってことは?


 ※残念ながら巻き戻しもスローも一時停止もありません。


 ちっ。


 ※巻き戻しやスローは、完全にチートな事態を招きますので、出来ません。


 ま、そりゃそうだ。

 と言うことで、元旦の日は早送りにしました。


 2日になり、家臣や、下働きの者たちが登城してきて、それぞれと挨拶を交わした。

 明日は朝から清洲城に挨拶に行かねばならないため、今日のうちに清洲に行って向こうで一泊するか、未明にここを出て、朝着くようにするかであるが、正式な挨拶なので当然十二単で行くことになる。

 着替えるのに一時間ぐらい掛かることを考えると、今日のうちに行っておく方が現実的だろう。

 さて問題は相撲対策である。

 無いとは思うが、万一、衆目の集まる中、男と組まされるような事態になった場合、どうするか。

 最悪、下は褌を着ければ何とかなるが、上は厳しいものがある。

 わりとおっぱい大きめにキャラ設定してしまったことが、こんな時は悔やまれる。

 やはり、予め晒(さらし)を巻いて行くしかないのだろうな。

 苦しいが仕方がない。

 新年のご挨拶用に、酒と米と、みんなで朝から総出で作った紅白のお正月仕様のういろうを持って、いつものように前田さんと新九郎の3人で、清洲に向かった。


 登城してすぐに信長さん以外の家臣の方々に挨拶をする。

 その際に、個分けに包装した1口サイズの紅白ういろうを一人ひとりに手渡した。

 何となく皆さん嬉しそうにしているので、こんなもので喜んでもらえるならなによりである。

 一緒に来た2人は、そのまま男同士の飲み海という海の中へと飲まれていった。

 俺も本当は混ざりたいのだが、十二単を1人では着れないので、大奥の方々にお世話にならなくてはならない。

 よって海で溺れてる場合ではないのである。

 もちろんこちらでもういろうを配って歩く。

 お濃様にも差し上げたところ、やっぱりすごく嬉しそうな顔をする。

 なんか知らない間に、すごく評判になってたりするのか?

 今日は吉乃さんも登城していた。

 久しぶりに会った彼女は、すっかり肌つやも良くなり、34歳とは思えない美しさを保っていた。

 彼女にもういろうを渡すと「まあ!これがあの“ういろう”ですのね」とたいそう喜んでいる。

 どうもだいぶ噂になってるようだな。


 「つかぬ事を伺いますが、ういろうのこと、どこからお知りになりました?」

 「何を言ってるんです。尾張中で評判ですよ」

 「へ?」

 「ういろうで天下を取ったって」

 「ああ、小谷城での事ですか?」

 「それもありますし、尾張屋さんでも売り出してましたから」

 「ああ、町子ちゃんか。抜け目無いなあいつ」

 「本当にね。大晦日の日なんか行列になってましたよ」

 「ええぇ!? 知らなかった」


 こりゃ、いずれういろうが特産品になる日も近いな。


 1月3日、熱田神宮。


 今、俺は、廻(まわし)と晒(さらし)だけの超セクシーな出で立ちで、土俵の上で池田恒興とがっぷり四つになっている。


 どうしてこうなった!?


ここまでお読みくださりありがとうございます。

次回は間違いなく相撲大会になります。

もう、サブタイトルも「相撲大会」に決定しましたので、大丈夫です。

ではこれから選挙行ってきます。

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