54 相撲大会
遅くなって申し訳ありません。
3日朝、家臣一同は信長様にご挨拶に伺うべく、登城したところ、小姓の人にいきなり熱田神宮へ行けと言われたのだ。
全員もれなくである。
現在織田家もそれなりに大所帯になりつつある。
なんだかんだで100名近い武将、国人が名を連ねている。
時ならぬ大名行列に、沿道の人も何が起きたかとビックリしている。
清洲城から熱田神宮まではおよそ12km。
普通に歩いて3時間近くかかるだろう。
こっちは既に十二単に着替えてしまった。
歩いてなどとても無理である。
他の武将達が全員徒歩で行く中、やむを得ず俺だけ駕籠で行くことになってしまった。
全く、どこのお公家さんだよ。
こういう時こその馬車なのになぁ。
結局駕籠の手配に手間取った俺が、大幅に遅れて一番最後に到着するという不始末。
この12kmの移動も競争好きの信長さんである。
無論、評価の対象になっているに違いない。
先頭を切って熱田神宮に入ったのは、木下秀吉であった。
さすが走力11はダテではない。
その後が前田利家だった。
走力自体はそれほど高くないが、若さにまかせ休み無しに走りきった末の2位であった。
そのせいか、全員が到着した後でもまだグロッキーになっていた。
昨日の酒も響いたのかも知れない。
何やら青い顔をしているので、近寄らないでおこう。
熱田神宮には既に土俵が作られており、その上座というのか?正面の審判長席に信長さんが正装で待っていた。
走り詰めでヘロヘロになりながらも、昨日の酒でリバースしながらも、皆さん信長さんの前ではキチンとする。
参加者全員、土俵を挟んで信長さんの前に列び、座って礼をする。
その様子を見届けてから信長さんは立ち上がり、全員に向け挨拶をした。
「皆の者。あけましておめでとう!」
「おめでとうございます」
「正月の寒空の中、皆、よう走ったの。特にサル。ぶっちぎりであった。褒めて遣わす」
「はは〜っ!」
「吉子よ!お主も大したことは無いのぉ」
「申し訳ございません!」
「この不始末、万死に値するところだが、挽回の機会をやろう。相撲で十人勝ち抜いて見せよ!」
「ゲェッ!…か、必ずや」
「フハハハハッ、其方の悔しがる顔など滅多に見られる物では無いな」
くそ〜。
嫌な予感はしてたんだが、まさかその通りになるとは。
こうなったら十人切りするしかない。
格闘技など中学の時の柔道しかやったことないぞ。
「サル。お主は一等だったので、勝ち抜きの一番最後にしてやろう。最後まで勝ち残ったものと闘い、勝てれば更なる褒美をやろう」
「ありがとうございます!」
「吉子!お主は最初に土俵に上がり、十人勝ち抜け出来たらそこで休ませてやる。だが、勝ち抜け出来なければ厳しい罰が待っていると思え!」
「謹んでお受けいたします」
「良し!最初に吉子と闘う者、我と思わん者は手を上げよ!」
しばらくの沈黙のあと、池田さんが手を上げたことで「ハイ」「ハイ」と次から次と手が上がり、最後には、ほぼ全員が手を上げていた。
まあ、若い娘と公然と密着できる唯一の機会かも知れないと思ったのだろう。
最初に俺が負けたら、それっきりだからな。
皆さん我先にとなったのだろう。
池田さんだけは違う理由だろうけど。
その様子を見て信長さんは笑いながら言った。
「全く、皆の下心が透けて見えておるわ。勝三郎!(池田恒興の通称)お主がやれ。手を抜いてはいかんぞ!」
「ははっ!有り難き仕合わせ!」
池田さんが顔を赤くして土俵へと向かう。
途中で柴田さんが池田さんを捕まえ、何やら厳しい顔で話しかけている。
なんだ?何か作戦でもあるのか?
普通にやれば俺なんかに負けやしないだろう、体格が違いすぎるし。
だが、柴田さんが恐い顔をして、池田さんを説得している。
あれ?もしかして負けようとしてるのか?
だが、信長さんにも釘を刺されたように、手を抜けばすぐに見抜かれて、返って池田さんが罰を受けかねない。
柴田さんのあの厳しい顔は、そのための作戦だというのか?
池田さんは不承不承という感じでうなずいて、土俵へと再び歩き始めた。
仕方なしに俺も十二単を引きずりながら、土俵へと向かう。
土俵の前に列び、信長さんに向かって一礼する。
その時信長さんが決定的な発言をする。
仮に信長が今の時代の社長だったら、一発で社長退陣させられそうな、セクハラ&パワハラ&モラハラ発言。
「吉子!それで相撲を取るつもりか、全部脱げ!これも罰だと思え!」
いや、さすがに全裸は不味いだろう。
褌がダメならせめて廻だけでも…
そう思ったら、池田さんからナイスフォローが入った。
「某も相手が裸では相撲が取りにくく成り申す。せめて廻が欲しゅうござる」
「フッフッフ。それも一理ある。廻を持ていっ!」
そう言うと、予め用意してあったのか、小姓の人に廻を持ってこさせた。
どうやらこうなることが分かっていたと見える。
お濃さんがそそくさとやってきて、まずは十二単を脱がすところから手伝って貰くれる。
そして、衆人環視のもと、晒一枚にさせられる。
なぜか周囲から漏れるガッカリのため息。
何を期待しているんだ皆は。
R15指定なんだから、そうそうはっちゃけたことは出来ないさ。
慌てて吉乃さんもやってきて、二人に廻を締めて貰う。
その時、お濃さんがそっと怪しい巻物を手渡してきた。
何だこれ?
「竹内流捕手腰廻小具足指南」?
お濃さんがそれを読めと目で合図する。
巻物を拡げると、柔術の起源となった竹内流の格闘術の知識が一瞬で頭に入って来た。
※スキル書「竹内流捕手腰廻小具足指南」を入手しました。
武力と技量が+5上昇しました。
レベルアップが可能になりました。
戦場スキル、「戦上手」を獲得しましたが「看破」とスキル合体させることで、上位スキル「兵法家」を獲得出来ます。
スキル合体しますか?
まさか、このタイミングで??
初めて聞くシステムが出てきたよ。
スキル合体?
※2つのスキルのどちらも併せ持つ上位スキルに、合体することで獲得することが出来ます。
スキルツリーというシステムが導入されてますので、後で確認しておいてください。
知らなかった。
いつ出来たんだそんなもん。
※先週…ですかね。
バージョンアップしたならそう言ってよね。
※バージョンアップしたとは言いましたけど、説明してませんでした。
申し訳ございません。
そうだっけ?
まあいいや。
今はそれどころじゃない。
○大谷(飛騨掾)吉子(女)
年齢17
織田家:武将
所持金:4820
総合レベル:18
思想:革新
宗教:なし
名声:148(補正+10)
使用武器:メイン・烈風孔雀翠扇+火炎鳳凰緋扇
サブ・脇差
領地:吉子村
能力値:
統率84(補正+5)、武力82(補正+5)、知略97、政治90
体力83、腕力62(補正+10)、技量61(補正+15)、乗馬8、砲術1、走力8
常駐スキル:鑑定、茶の湯
製造スキル:調理
戦場スキル:非道、二刀流、兵法家
また武力が上がっちゃったな。
兵法家が何をするスキルかは知らないけど、キャラ変わってきてないか?
完全にガテン系の雰囲気になりつつあるな。
※「兵法家」は戦場スキル「戦上手」の上位スキルです。
統率が80、知略が90以上ある場合、軍師になることが出来ます。
そのほか、戦場で、計略の成功率が20%上昇し、作戦立案の意見が通りやすくなったり、所属する部隊の戦場での士気が下がらなくなったりします。
あぁ。微妙だなぁ。
まあ良いか。
だからと言って、これで相撲に勝てるようになったわけじゃ無い。
少しは抵抗できるようになるかも知れないけど。
その程度だろうな。
それにしても寒い!
ゲームだけど寒い。
土俵の上に立つと、余計に膝がガクガクと震える。
池田さんは「シャアッ!」と、良く分からない気合いを入れている。
どう見ても勝つ気でいるようにしか見えない。
柴田さんの演技指導の成果か?
今の大相撲と比べ、この時代の相撲はシンプルである。
呼び出しさんもいなけりゃ、懸賞幕を持って回る人もいない。
行司は熱田神宮の神主さんが務めるようだ。
一応神事だからね。
そんなところに女の俺が出て行って大丈夫かとも思うが、決めたのは信長さんだからな。
祟りがあるとすればあっちに行くだろう。
とりあえず、相撲らしく四股を踏んでみる。
足が上がる度に周りの視線が股間に突き刺さるのが分かる。
自分でもエロ過ぎると思うので、これ以上やらない方が良さそうだな。
両者見合って蹲踞の姿勢を取る合図として太鼓が叩かれる。
池田さんもいつの間にか褌一丁になっていた。
さっきからものすごい気合いである。
全身からモウモウと湯気が立っている。
相撲の作法として、蹲踞の姿勢で揉み手をして柏手を打ち、両手を大きく拡げる動作をする。
意味は良く分からないが、とりあえず見慣れているのでそのようにすると、信長さんが感心したように「ほう」と声を漏らした。
慌てて池田さんもこっちの真似をしたようだが、手順がアベコベである。
柏手を打ってから揉み手をしている。
まあいい、どうせ素人相撲だ。
さあ、いよいよ立会いである。
この時代は仕切り線などと言うものは無い。
なので、どこから仕切っても良いのだ。
とは言え池田さんがどんな相撲を取るかわからないし、変わったことやって自滅してもしようが無いので、普通の位置で両手をついた。
すると池田さんは何を思ったのか、すぐ目の前、頭がぶつかりそうな位置で仕切りをする。
近すぎるだろ、いくら何でも。
だが、行司も信長さんも何も言わない。
行司さんはそのまま「見合って、見合って」と普通に進める。
難しいのはここで呼吸が合わないと、上手く立会い出来ない。
ごめん、今回はパス。
気持ちが全然付いてこない。
よし、次で立つぞ。
一旦呼吸を整え、再び仕切りに入る。
近すぎるので、少し後ろに立とう。
そう思ったら、またしてもすぐ目の前で仕切ろうとする。
その時信長さんからヤジが飛んだ。
「近づきすぎじゃ勝三郎!吉子が嫌がっておるぞ」
池田さんはそう言われて初めて気付いたような顔をしている。
周りが見えてないのか、それとも作戦なのか?
改めて仕切り直すと、今度は普通の位置で仕切り始めた。
よし、今度は大丈夫だろう。
再び行司さんが「見合って〜」と声をかける。
よし立った!
俺は頭から相手の胸より上を目指して突っ込んだ。
けっこう良いタックルだったようで、相手の出足が止まった。
て言うか向こうは立ち上がっただけで、ぶつかりあうつもりは無かったようだ。
なので、そのまま相手の懐に入ってしまい、いきなり上から廻をつかまれてしまった。
やられた。
両上手を取られて、こちらは動きがとれなくなってしまった。
片腕を巻き上げて一方の手は外せたが、その隙に身体を起こされ、前に運ばれそうになる。
慌てて相手の廻を掴み、俵ギリギリで踏ん張るとそのまま腰を回転させて、小手投げのような体勢に持ち込む。
だが、相手は筋力で踏みとどまった。
一瞬の攻防だったが、場内からはおおっと歓声が上がった。
そのまま、がっぷり四ッになってしまい、こっちは胸が合わないようにするのが精一杯である。
せめて上手が欲しい。
向こうの方が背丈があるので、上手だろうが下手だろうが関係無いのかもしれないが、仮に投げを打ち合ったとしても、絶対に上手の方が有利なのだ。
勝負は長引くかと思われたが、意外なことで決着が着いた。
後ろで縛っていた俺の長い髪が、解けて池田さんの顔に掛かってしまい、彼が思わず髪の毛を摑んで除けようとしてしまった。
そう、曲げ掴みの反則に取られたのである。
「勝者、吉子〜吉子〜」
と、行司さんが勝ち名乗りを上げる。
その瞬間、場内が地響きのような歓声に包まれた。
呆然とする池田さんに、柴田さんが「よくぞ負けた!勝三郎ようやった!!」と、肩を叩いて喜んでいた。
勝った俺では無く負けた池田さんを讃えていた。
なぜなら、次に土俵に立つのが柴田さんだったからである。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
さあ、はたして10人切りできるのか。
負けた時の罰則とははたして何か。
次回も相撲です。
よろしくお願いします。




