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34 夜道

どうも日曜は変な時間になることが多くて申し訳ない。

 間道は確かにあったが、以前来た時より藪が深くなっており、馬で通るのは少々厳しい感じだ。

 予め道があることを知っていなければ通り過ぎてしまうほどなので、やり過ごすにはちょうど良いかもしれない。

 間道に入り馬を下りて20mほど進み、騎馬武者隊が通りすぎるのを待つが、二人ほど間道に気付いたのか、こっちに探りを入れに来た。

 さらにもう10mほど奥に進み、追ってくるかを確かめる。


 「蹄の後がある、こっちじゃぁ〜!!」


 ちっ気付かれたか。

 懐に灯りでも持っていたのか、こちらを探る光が見える。

 どうみても友好的な連中には見えないので、ここは先制攻撃しかないと思い、必殺技の準備をする。

 逃げ場のない狭い通路という「地裂火炎真空切り」の絶好のシチュエーションである。

 どうせなら全員まとめて、とも一瞬考えたが敵は倒せるうちに倒すのが鉄則。

 とりあえず近づいてくる二人を血祭りに上げるとしよう。

 鉄扇に気を込め、スキルボタンを押しながら前方に向け素早く振り下ろし、衝撃波を打ち出す。

 ズドンと言う音と共に、追手もろとも左右の藪もなぎ払われてしまった。

 すっかり見通しが良くなってしまい、しくじったことを悟った。

 街道まで吹き飛ばされた追っ手の二人は、起き上がる様子は無いが、戻ってきた連中には見つかってしまった。


 「これはこれは、聞きしに勝るじゃじゃ馬ぶりよのう。お主らは下がっておれ」


 おそらく追っ手の頭領と思しき男の声がする。

 どうやらこちらの素性を知っている様子だ。

 だとすれば斎藤方の追っ手だろうか。

 ここで事を荒立てるのは得策では無かったと後悔するも、もはや後戻りは出来ない。

 念のため話ができる相手かどうか、いちおう確認しないとな。


 「貴様ら何者だ!」

 「知る必要は無い」


 そう言うと、その頭領と思しき男の影はズンズンと近づいてくる。

 こりゃあ話し合いの余地は無さそうだな。

 とにかく暗くてどうしようも無いので、コケ威しに火炎かまいたち放射をお見舞いしてやろう。

 鉄扇を前方に向け、クルクルと小さな円を描きながら火炎を放射する。

 頭領と思しき男は身を躱し、さらに後ろに下がった。

 こっちは火炎を放射しながら左右に20°ずつ扇状に振って、藪に火を付ける。

 明かりが確保出来たことで敵の全容が明らかになった。

 見れば後方に鉄砲を構えている者までいる。

 こついはヤバいっ!

 慌てて横藪に飛び込み、ローリングで腹ばいになると、斜め後方に匍匐前進で奥に進み距離を取る。

 その瞬間発砲音と共に弾が4発ほど頭の上をかすめていった。

 うっわ!やっべ〜!

 狙いはかなり正確で、こっちが腹ばいになって無ければ数発食らっててもおかしくなかった。

 何者なんだホントに。

 こいつらを殲滅するのはちょっと無理っぽいので、逃走を最優先にしよう。

 このまま匍匐前進で進んでいてもいずれは見つかるだろう。

 何か躱す手段を講じなければならない。

 ヤツら全員下馬しているので、その馬を奪って他の馬は始末する手はどうだろう。

 自分の乗ってきた馬が残っているが、一頭だけなら何とかなるかもしれない。

 またしてもスネークをやることになるとは。

 もう戦国シミュレーションじゃねえわな。

 FPS(First Person shooter)はあまり得意じゃないんだけどなぁ。

 匍匐前進で遠回りに街道方面に移動を開始する。

 あまり草を揺らさないようにしたいのだが、速度も重視したいのでカサカサ言う程度は仕方ないと諦める。

 街道まで後10mほどになった時、再び鉄砲が撃たれた。

 今度は少し後方に狙いがあったようで、こちらの位置を見失っているようだ。

 よし、装塡中の今がチャンスだ。

 残り10mを一気に駆けると鉄砲を装塡中だった敵に火炎ガトリングをお見舞いする。

 手元の火薬に引火したのか、ギャァギャァ騒ぐ声がする。

 予想以上に深手を負って鉄砲隊は戦闘不能になったようだ。

 手近な馬を一頭奪い、乗馬した後、残りの馬に向けて火炎放射を仕掛ける。

 馬は焼けたり、火を見て逃げ出したりして、見える範囲ではいなくなった。

 その頃になり、ようやく藪に突入した他の敵が戻ってきた。

 俺は馬を一気に走らせ、街道を一目散に逃げる。

 2kmほど走ったところで少し速度を落とし、後を見ると、やはり馬が追いかけてくる。

 しょうがない、こいつを倒さないと、多分しつこく追ってくるだろう。

 少し先にカーブになっているところがある。

 そこで仕掛けよう。

 馬を隠してから、駆けてくる敵の正面になるように藪に潜む。

 そして「地裂火炎真空切り」の準備をして待つ。

 敵は全速力で駆けてくる。

 さっきの頭領らしき男だ。

 およそ30mに迫った時、技を発動させる。

 この技はタメが必要なので発動までに1.5秒ほど掛かる。

 その間に敵は15mほどは進む。

 地裂火炎真空切りの射程はおよそ20mだ。

 まともに食らえば避け切れないはずだ。

 ズドンと衝撃波が響くと共に馬は複雑な形になり、悲鳴も上げずに30mほど来た道を戻された。

 しかし、乗っていた男の姿は見えない。

 どうやら横に飛び降りて難を逃れたようだ。

 相当の手練れと思われる。

 まともにやり合うのは、やはりまずいか。

 しかし、敵の正体を知りたいのも事実だ。

 もう一回、声を掛けてみるか。


 「おいあんた!そっちの正体を明かしてくれたら見逃してやっても良いぞ」

 「フッハッハッハ!殺すには惜しい剛胆な女子じゃな」

 「冥土の土産に教えちゃくれませんかね?」

 「その手には乗らぬ」


 敵が近寄ろうとした瞬間に火炎かまいたちをお見舞いする。

 しかし、いともあっさりと躱される。

 何者だホントに。

 そうこうするちに向こうから数騎の騎馬武者が走ってくる。

 逃げた馬を集めて再び追ってきたのだろう。

 むう、万事休すか?

 迫り来る敵の騎馬武者達は一列になって進んで来ている。

 あの連中だけでも何とかしたいな。

 手前の強そうな奴を牽制しつつ、馬のヤツらをまとめて「地裂火炎真空切り」で片付けよう。

 騎馬武者達が有効射程に入るタイミングを見計らって火炎ガトリングを、手前の頭領に浴びせ隙を作ると、地裂火炎真空切りを先頭の馬に向けて発動する。

 手前の頭領は後の者に向かって「散れ!」と叫んだが、先頭の3頭が巻き込まれ馬上の敵は四分五裂となり飛び散っていった。

 後の2頭は難を逃れたが、その後放った火炎ガトリングで馬は飛び上がり、馬上の男達を振り落として逃げていった。

 一人は馬に踏まれ、だいぶ苦しんでいる。

 だが、もう一人は無傷で立ち上がり、頭領の横に付いて「絶対殺したる」と怒りを露わにしていた。


 「なかなかやりおるのぉ、女」

 「いい加減何者なのか教えちゃくれませんかね?」

 「名をいちいち名乗っていたら仕事にならぬわ」

 「覚悟っ!!」


 そう言うと、生き残った騎馬武者の男が斬りかかってきた。

 こいつは間違いなく囮だ。

 そう判断した俺は、火炎ガトリングを撒き散らしながら後退する。

 飛びかかった男の服に引火し、大慌てで服を脱いでいる。

 その隙にこちらは再び馬に乗り、そのまま逃走する。

 そこからはひたすら逃げに逃げた。

 長良川の渡し場に着いて、ようやく生き延びたことを確信した。

 ありゃ絶対忍者かなんかに違いない。

 やっぱりどんな理由があろうと1人での行動はダメだな。

 渡し船は基本夜間はお休みだが、金を積めば渡してくれることもある。

 もちろん天候次第ではあるのだが、幸いにして今日は晴れている。

 この渡し場は秀吉の管轄なので、皆俺のことも知っている。

 倍の金を出すと言うと、一番ベテランの船頭が快く引き受けてくれた。

 渡してもらっている最中、その船頭が話しかけてきた。


 「実はこの間、船頭に雇ってくれって若いもんが尋ねてきたんじゃが、人数は足りとるから要らんて断ったんじゃわ。それでも下働きでも良いからってひつこいのなんの」

 「へぇ。ひとりで?」

 「いや、2人じゃったが1人でも良いからって、ひつこいひつこい。でぇら良い身体しとるで侍にでもなれっちゅうたんですわ」

 「へえ〜何者なんだろうねぇ」

 「一時(いっとき)ぐらい粘っとったかねぇ、諦めて帰ってったがね」

 「それは貴重な情報をありがとう」


 俺はさらに船頭に金1枚を握らせた。

 船頭はいたく感謝して「今後ともご贔屓に」と、歯の抜けた顔で笑った。

 間違いない、何処かの大名の差し金だろう、俺たちの動向を探りに来ている。

 まあ、あたりまえっちゃあたりまえだな。

 斎藤、浅井、六角、武田、思い当たる節はいくらでも有る。

 それにしても暗殺するつもりなら、待ち伏せすりゃ良いのに、なんであんな目立つようなやり方したんだろう。

 騎馬に鉄砲まで持ち出して、結果的に返り討ちに遭ってしまったわけだから、暗殺が任務なら大失敗もいいところだ。

 もしかして暗殺が目的じゃ無かったのか?

 だったら、こっちが声を掛けた時にちゃんと受け答えしてくれれば、あんな事態にはならなかったはずだ。

 あるいは威力偵察の途中だったとか?

 この近辺の武将で懐柔の手が及んでないのは、谷衛好ぐらいのものである。

 あんまり有名じゃないし、ゲームにも出てこない。

 ただ、武将名鑑によれば六角氏の家臣の池田氏より派生した家系だ。

 六角と何らかの係わりがあってもおかしくは無い。

 うーん、あの連中も六角関係かも知れないな。

 ま、これからは一人歩きは禁物ですな。


 領地に戻り、道中襲われた件をみんなに話すと、全員からこっぴどく怒られてしまった。

 町子ちゃんに至っては「いくら当主が腑抜けの龍興だからといって家臣まで腑抜けとは限らないんですから」と、酷い言われようである。

 しかし、その指摘は正鵠を射ったものだ。

 仮に斎藤家の当主が斎藤義龍のままであり、家臣が一枚岩であったなら、武田、浅井と盟を結び、織田などはひねり潰されていた可能性がある。

 ゲームで道三ではじめると信長と勝手に同盟してしまうので、織田を攻めることは出来ないが、「家督相続」より前の年代ではじめれば、かなりガンガンいける立地と家臣団である。

 まあ、道三に国を乗っ取られるくらいのお家事情だからこそ一枚岩になれなかった訳だけどな。

 さて、今回の事態を受け蜂須賀小六は、これからは自分にそういった対諜報戦の指揮を任せて欲しいと具申してきた。

 その通りだな、ちょっと小六さんが働いてない感じだったからな。

 今のところ、城下町も出来たてで、間者なども入り放題だろう。

 警察的な役割も海老蔵が臨時で引き受けているが、こっちもそろそろ本格的な組織として確立する必要があるだろう。

 その前に、何が犯罪でどんな罰を受けるのか、ハッキリとさせなくてはならない。

 こういったことは半兵衛あたりは得意そうだよな。

 早く仲間になってくれないものかねぇ。

 まあ、来月になれば小一郎も戻ってくるので、錦之輔も加えて一緒に考えるとしよう。


 来月で思い出した。

 気がつけば、11月も10日が過ぎていた。

 色々あって国情のチェックを忘れていた。

 今さら指示も出せないだろうが一応見てみよう。


○吉子村

 領主:大谷吉子

 所属:織田家

 人口:2685人

 石高:410石

 金収入:3150

 米収穫:2800

 総兵数:400(200)雇い兵

 商業:520

 農業:510

 木産:100

 鉄産:150

 民忠:63

 特産品:魚

 

 ◇施設

 市場:2

 城郭:1(吉又城)

 港:2


 なんだ?

 人口が一気に600人以上増えているぞ。

 もしかして、墨俣からの避難民か?

 やっぱり城下町の襲撃ってダメージ大きいよな。

 800人ぐらい人が減ったと言っていたからな。

 大半がこちらに来たわけだが、一部は斎藤領に逃れ、一部は他の織田領に逃れたのだろう。

 ここからまた800人を回復させるには2〜3ヶ月かかるだろうし、色々な計画も全て遅れることになる。

 戦国時代なのでそれはお互い様なわけだが、住んでる人はたまったものでは無い。

 ウチの領地ではなるべく戦闘が起きないようにしないとな。


 来月から建設に入る天ぷら店の土地確保と、その運営方針の確認のため、町子ちゃんと話し合いをする。

 行く行くはチェーン展開を考えているという話をすると、ものすごく良いことだと褒めてくれた。

 だが、その全ての店舗の責任者に町子ちゃんが成るんだよと話すと、頭を抱えてしまった。

 まだこの話はしない方が良かったかな?

 ただ、どこぞの牛丼チェーンじゃないけど全国展開を出来れば、是非やりたいところだな。

 営業収入もさることながら、情報収集がチェーン展開の目的の半分である。

 どこの大名が兵を集めているとか、埋もれた優秀な人材とか、一揆の前兆とか、そういう細かいローカルな情報を、飲食店というのは集めやすいのだ。

 町子ちゃんにその辺の展望まで説明すると、「さすがは大谷様!ただで人材を放り出すわけ無いと思ってました」と言いやがった。

 そんな話をしているときに、伝令が来客を告げにきた。

 森可成殿が二人きりで会いたいと言ってきたようだ。

 まさか森さんも俺に気があるんじゃ?



ここまでお読みくださりありがとうございます。

なにやら怪しげな展開ですが、18禁小説ではありませんので、そっちにいは行きませんからご安心を。

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