第五話 衝突
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称・事件等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ピシッ! ピシッ!といった音が響き渡る。
カズキが連続して指を弾き、音波の波紋で敵の骨格に亀裂を入れ白い信徒が表れる。
そこへ、カイトの黒い輝きを纏った右拳が、重力の質量を乗せて叩き込まれた。
ズガァァァァン……ッ!!
洗練された白の装甲が、カイトの黒い拳によって粉々に砕け散り、下層の闇へと霧散していく。
「ハハッ! いい音だ、カイト!」
カズキの音波と、カイトの拳が、白の軍勢の進軍を完全に足止めしていました。
「……やれやれ、派手にやってるねぇ」
鉄骨の影から、エイジロウが遠目で眺めていた。
「カイト。奴らの本隊は、この乱戦を囮にして、すでに別ルートで神社の麓まで達してるぜ。」
「……神社だとッ!?」
カイトの目が、怒りで黒く染まります。
しかし、ここで焦って一人で飛び出せば、肉体が自壊するか、途中で白の伏兵に絡め取られるのがオチ。
「カズキ、エイジロウ! 18秒でこの場を更地にするぞ!」
「へいへい」
カズキがニィと口角を上げた。
カイトはカーボン杖を投げ捨て、両足の義足の感覚を完全に『遮断』した。
そして、膝の皿が、過負荷による摩擦で焦げた煙を上げ始めます。
肉体が上げる悲鳴を、カイトは冷徹に「ただの物理的な摩擦音」として処理しました。
カズキも、義手の出力を限界安全限界以上に引き上げます。
「手が、ちぎれそうだぜ……」
カズキの指の隙間から、赤い冷却液が血のように一筋流れ落ちる。
二人の体を削りながら、最大の一撃を調えていた。
白の信徒たちのシステムが、瞬時に二人のエネルギーが急上昇するのを検知した。
『——危険度、予測最大値を突破。対象の即時消去へと移行』
十数体の白い義体が、一斉に光のブレードを展開し、カイトと一輝を目がけて四方八方から肉薄します。その光景は、二人を串刺しにしようとする、美しくも冷酷な光の檻のようだった。
「全身機械人形が……」
カイトは迫る光刃を睨みつけ、拳を引きます。
「俺たちの意志を壊せると思ってんじゃねえぞ!!」
カズキが両手の指を同時に、激しく打ち鳴らしました。
その瞬間、高架下の全空間に、人間の聴覚では捉えきれない超高周波が展開された。白の義体たちの精密なセンサーやナノマシンの駆動周期が、カズキの放った波と完全に共鳴し、その動きが一瞬にしてピタリと硬直した。
「今だ、カイト!! 奴らの動きを止めたぞ!!」
カイトは悲鳴を上げる義足とともに空中を爆発的な速度で進んだ。
カズキが固定した白の信徒の中心点へと滑り込み、黒い地脈のエネルギーを込めた右拳を、
鉄骨ごと大地へ向けて叩きつけた。
轟音。
音響共鳴で脆くなっていた白の義体群は、
カイトの拳が引き起こした「物理的な空間の歪みと重力」に耐えきれず、
まるでガラス細工のように一斉に爆散しました。
白い装甲の破片が、火花と共に下層の闇へと降り注ぐ。
「……ふぅ、相変わらず無茶苦茶な質量だな、お前の拳は」
カズキが腕の血を拭いながら着地する。その顔には、全力を出し切った男の笑みがあった。
「行くぞカズキ、エイジロウ! 神社へ最短ルートで突っ込む!」
「俺の影についてきな。特急ルートで見せてやるよ」
エイジロウの先導のもと、戦力を完全に維持したカイトとカズキ、そして闇に紛れるエイジロウの三人は、
九天楼の路地裏を電光石火の速さで駆け抜け、神社の麓へと向かった。




