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第三話 虎の威を借る狐

「おい、もたもたすんな早く来い」

「…分かりました」


扉を開けた瞬間、むっとする酒の匂いと、熱気が一気に押し寄せてくる。


――なんだここ。酒くせぇな。


中では、冒険者らしき連中がテーブルを囲み、笑い、怒鳴り、酒を煽っていた。

賑やかにも程がある。


そして、その空気が一瞬だけ止まる。

全員の視線が、入口に立つ俺へと突き刺さった。

彼らの視線は目新しい物を見るというより、明らかに異分子を排除しようという兆候がある。


――感じ悪いな。


値踏みか?それとも、新入りいびりの時間か。

どっちにしろ、面倒くさい。

そのノリ、社会人の俺はいやほど経験してんだよ。

まぁ大体ああいう奴らは、最終的に俺の事を認めるんだが。


俺は警備兵の人に言われた通り、ギルドで手続きを始めた。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。受付のソフィアと申します。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。」


――受付嬢か。この世界でも顔の良い奴が採用されるんだな。


そう、人間の本質なんて変わらない。

「造形が美しい物を見て、心が動かされる。」

万物に共通する、普遍的な法則だ。

分かりやすいな、全く。


「ショウタです。許可証を貰いにきました」

「それでは、こちらの水晶に手を当ててください」


――水晶?占い師がよく使うやつか。


俺が水晶に手を触れた瞬間―――


水晶は白く光りだした。


「うっ!?」


――なんなんだ、この光は。眩しい


「過去に窃盗とか人殺しをした事がある人は赤く光るんです。

ショウタさんは問題ないですね。」


そのまま、許可証発行のために必要な手続きを行った。


無事許可証を手にした俺は、今後の事を考えるための宿を探し始める。


――はぁ、これから先どうなるんやら。


「おい、そこのガキ、こっちへ来い!」


――なんだ。


柄の悪い男達が杯を交わしながら、俺に話しかけてきた。

アルコールで崩れた、だらしない顔つきで俺の方を見てくる。

どうやら俺は”絡まれた”らしい。


「おまえ、見ない顔だな。新入りだな?

なら、俺達の荷物持ちやってくんねぇか。人が足んねぇんだ。」


――は?

何を言ってるんだ。こいつは。俺みたいな優秀な人間が雑用を進んでやるはずがないだろう。


「やりたくないです」


俺はあまりにも腹が立ったため、本心を打ち明けてしまった。


「何言ってんだよ?お前みたいな貧弱そうな奴は、どうせ誰もパーティーを組んでくれないだろ。俺達が救おうとしてあげたのに。」


――余計なお世話だ。ぶん殴っていいか?


でも、生憎俺は格闘経験がない。

穏便に済ませるしかないか。


俺は彼らを無視してその場を離れようとする。

すると、次の瞬間。


バリン!


皿が大きく割れた音がした。


振り返ると、後ろの男達の誰かが落としたらしい。


「おい、ガキ!勝手に皿を割ってんじゃねぇよ!」


――おい。何言ってんだ。


「ちょっと、そこの姉ちゃん。このガキが皿を割ったんだ。」


――俺になすりつけるつもりかよ。どんな神経してやがる。


男達に呼ばれ、ギルドのスタッフと思われる人が駆けつけてきた。


「どうしましたか…?」


スタッフは文句を言う男に怯えている。


「このガキがパーティーを断られた腹いせに皿を割ったんだよ。どうにかしてくれ」

「なら…弁償代払ってもらわないといけませんね…」

「いや、割ったのこの人達ですよ、自分は何も知りません」


俺は切れ気味で言い返す。弁償代なんて持ってるわけねぇだろ。


「ああ!?嘘言ってんじゃねぇよ。俺達が誰だか分かってんのか?

炎牙の中堅パーティー《ブラッド・ハウル》だぞ。どっちの言う事が信憑性があるか明らかだよな?」


男は終始、高圧的な態度を取る。


――どうやらこの男達は知名度があるらしい。


こんなクソみたいな奴らですら、一定の名声は得られるのか。世の中って不思議だな。


「俺たち《ブラッド・ハウル》は、この町で五本の指に入るパーティーだ。

リーダーのヴァルクスさんは、この大陸でも名の知れた冒険者。

それでも、俺たちの顔に泥を塗る気か?」


――”リーダー”が名の知れた冒険者、か。

こいつら自体は無名の冒険者じゃねぇか。


俺の世界でも似たような連中はたくさんいた。


「有名大学に通ってるから僕は偉い。」

「クラスの一軍に属してるから私は優れている。」

「有名人の友達がいる俺って、凄くない?」


彼らは、自分が属しているグループ・人間関係の凄さを全面的に出してくる。


そういう奴らに限って言えるのは、「自分に”自信”が無い」だ。


自分自身に魅力や凄さを感じていないからこそ、グループや周りの人間を使って威張る。こいつもその内の一人だ。


――俺の友達にもいたな。

「連れてる女で男のステータスは決まる」って言ってた奴。

決まらねぇよ。ていうか、お前には良い女は寄ってこねぇよ。


「早く金出せよ、ガキ」

「それは無理だ」

「あぁ!?」


男は俺を詰めてくる。


「《ブラッド・ハウル》の名にかけて、俺はお前を裁かなきゃいけねぇんだ。

事が大きくなる前に、大人しく金を出せよ」


男は俺に顔を近づける。


「うるせぇよ、酒くせぇから近づくな。」


「……今、なんつった?」


――くだらん。


何が、「《ブラッド・ハウル》の名にかけて」、だ。

詳しくは知らんが、どうせ大した事のない組織だろ。


しょうもない人間が集まり、しょうもない事をする、しょうもない集団。

全てがくだらねぇ。

"実力のない人間がつるんで強気になる"、という一連の流れ、もう見飽きたって。


「口臭ぇって言ったんだよ、雑魚が」

「調子乗ってんじゃねぇぞガキ!!」


男は見下した態度を取る、俺に全力で殴りかかってきた。


―― あーあ。ちっぽけなプライドを傷つけられて手出してきちゃったよ。


「ふっ(鼻で笑う音)」


――次の瞬間。


スキル【冷笑】、発動。


男の拳は俺に触れることも無く、静止した。


――これが例のスキル【冷笑】,“物理法則の改ざん”か。

本当に止まるんだな。


スキルの効果終了と同時に、止まった男の無防備な顔面を、俺は思いっきり殴った。


バコォーン!



男は鼻から血を噴き出し、そのまま倒れ込む。


「おい……何を…した?」


――いってぇな。殴る方もこんな手が痛くなるもんなのか。


「おい!そこの人達!店内で揉めるな!」


奥の方から、別のギルドスタッフが複数人来た。


どうやら、俺達が揉めているのを聞いて駆けつけてきたらしい。


「何があったんだ」

「そこのガキが皿を割ったから、弁償しろって言っただけです」

「俺は皿を割ってない。」


――はぁ。どうせ俺の言う事なんて信じてもらえないだろうな。

いくら俺が正しくて、優れていようが伝わらなきゃ意味がない。

 

人間は馬鹿な生き物だ。分かりやすい指標や証拠が無いと、他人を信じる事ができない。かく言う俺も、同じ穴のむじななんだが。


――どっちも無いなら、彼らが俺を信じる理由がない。


なら、分からせるしかない。俺の方が正しいってことを。


「悪いけど、君のことが分からない以上、弁償してもらうしかないね」


ギルドスタッフは、あっさりと言い切った。


――まあ、当然か。


「分かりました。ですが、今日ギルドに入ったばかりで金がありません。

どうやって償えばいいですか」

「そうだね……」


スタッフは少しだけ考え、すぐに答える。


「明日から依頼を回すよ。

その報酬から差し引く形にしよう」






























































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