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回復魔法だと思ったら即死魔法でした ~最弱回復魔法師の力を受け継いだ俺、気づいたらダンジョン魔王に~  作者: マリアンナイト


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87話 魔王の神秘


 竜を仲間にしようと、みんなで出かける少し前――


 ダンジョンに五大英傑たちが次々と来ていた。


 五大英傑の一人ミスリル。

 彼に負けてから、カブトは変態に磨きがかかっている。


 ミスリルには信条があった。


「俺は弱いものは相手にしない。

 強い者しか相手にしない」


 彼はカブトに負けず劣らずの変態だった。

 ナルシストで、薔薇を口にくわえているような奴だ。


 そんなナルシストに、カブトが敗北した。

 想定外だった。

 カブトに勝つ人物が現れるなんて……。


 すべてをかぶる者「かぶカブト」。

 ミスリルを真似して、カブトもまたそれを信条とするようになり、

 対戦相手にそう名乗っていた。


「このダンジョンには、最強の魔王がいるらしいな。

 俺にふさわしい相手だ。

 ハハハハハ」


 ミスリルが、高笑いをしながら部屋に入ってくる。


 カンカイの力が弱まったため、自分の拳で戦うしかなかった。

 俺にも予想外だったんだ。

 へなちょこパンチでミスリルに勝つなんて……


 でも、嬉しかった。


 初めて俺が、自分の力で勝ったんだ。

 ミスリルの能力は、「俺は天敵」ということになるらしい。


 他にも、五大英傑のアダマンタイト、オリハルコンもやって来た。

 こいつらは、いずれも配下たちが退けてくれた。


 アダマンタイトは、万能で何でも出来た。

 しかし、ダイヤの防御力、コランダムやシンエイの剣技。

 そしてカンカイの魔力を上回ることがないため、

 すべてを経験しているカブトには物足りなかったようだ。


 オリハルコンは、ダンジョンの中に入ることもしなかった。

 上空からダンジョンを丸ごと押し潰そうとしてきたのだ。


 彼の能力は、重力を操るものだった。

 ダンジョンを丸ごと攻撃してくるなんて、チートも甚だしい。

 それでも、俺の配下たちは強かった。

 レッドのダイヤモンドの結界が、ダンジョンを丸ごと包んで難を逃れた。


「私にそれを浴びせてください」


 カブトは、一目散にダンジョンを飛び出す。

 オリハルコンに抱きつこうとしていたカブトを見て、

 危険を察知したのだろう。

 真っ白な裸のカブトから逃げるように、オリハルコンは飛び去っていった。


 そんな配下たちが、俺を守ってくれる。


 ***


 そんな頼もしい仲間が俺を守ってくれる。

 あとは竜を仲間にするだけだ。


 これには、俺のちょっとした画策もある。


 魔王になって初めてダンジョンからの脱出だ。


 ちょっと、怖いけど……

 足を一歩、ダンジョンの外へ踏み出す。


 なあ、カンカイ。

 浄化の作用によって、ダンジョンの呪縛から解放されたんだよね?


<たぶんな。

 魔力はダンジョンと繋がっているが……

 呪いの力でダンジョンに縛り付けられている感じがしない>


 お前を信じるぞ……。

 俺は、魔王らしく振舞った。


「我は、ダンジョンの呪いなどには屈せぬ。

 見よ。我の姿に敬服せよ」


 俺は胸を張ったまま、ダンジョンの外へ出た。


 何もない。

 死なない。

 霧になって消えない。


 これが自由か……。

 自分の浄化能力で浄化されたのだろうか。

 心が澄み切ったように感じた。


「さあ、竜の討伐に行こうではないか。

 我について来い」


「ははっ!」


 ダンジョンを出て、竜を討伐するためにカブトに運んでもらった。

 足がブラブラと宙で揺れる。


 王の威厳は大丈夫だろうか……。


 俺を抱えて空を飛ぶカブトのほうが、白く輝いていて……

 よっぽど魔王じゃないか……


 そんなことを思っていると、目の前に竜の姿が見えてくる。

 竜は火を噴き、見えるものすべてを灰に変えていた。

 

「見境がないな」


「利口な竜も、伴侶を殺され理性が吹き飛んでいるようです」


 空中で留まる俺に、コノハが上空まで木の枝を伸ばし足場を作った。


 すると――


 何の躊躇もなく、竜は俺をめがけて襲ってきた。


 レッドは竜の炎をダイヤの壁を作って防ぐ。

 カブトは俺を守り、竜が尻尾で攻撃してきても片腕で防いでいた。

 シンエイは竜に飛び乗り、翼を鎖で縛りつける。


 お、俺……。

 何もしてないんだけど……。


 コノハの木の根が竜を縛り上げ、

 地面へ這いつくばらせていた。


 そんな竜の元へ、コノハの木の根がゆっくりと移動する。

 

 竜の口の前に立った俺は、赤い霧を出そうと精神を集中させた。

 

 その時、竜が炎の息を吐き出そうとする。


 一瞬のことだった。


 白い影が轟音とともに、竜の口の上に立っていた。


 カブトが、初めて攻撃した。

 竜の口を上から押し潰したのだった。


「魔王様に不敬だぞ」


 もう、竜はそれで瀕死だった。

 カブトは真っ白な天使じゃない。

 純粋で冷酷な変態にしか俺には見えなかった。


 ***


 ドリュウが、リュウドウ王国の住民に声高らかに告げる。


「これから、王が竜を従える儀式に入りやす。

 刮目せよ」


 なんだか恥ずかしかったけれど、王の威厳を見せつける。


「我の神秘を見届けるがいい」


 俺は拳を握り締め、握りっ屁のように赤い霧を漂わせた。


「死の口づけ《《デスマリッジ》》」


 手の上の赤い霧を、ふっと息を吹きかけて竜の元に漂わせる。

 そして……暴れていた竜が、静かに眠るように動きを止めた。


「あれは赤い霧の厄災なのか?

 竜が、おとなしくなったぞ」


「本当に、あの方は魔王なの?

 まるで守り神じゃない」


 街がざわめく。

 しかし、俺は寂しさを感じていた。


「このくらいしか、赤い霧を出せないようになってしまった」


<そろそろ、別れの時が来たようじゃな>


「そうか……」


 小さな声で、カンカイと別れを惜しんだ。


 最後の儀式として、俺は竜に血を飲ませて配下にした。

 そしてシンエイが、竜の首を斬り落とす。

 竜は霧となって、ダンジョンに繋がれた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


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