82話 未来の選択
いつになるのか分からないが、
カンカイはいずれ消える。
そう思うと、俺は寂しさを感じた。
<サンクよ。
お前の能力は、我の赤い霧の毒《《デスマリッジ》》を弱めた>
「睡眠回復みたいなあれか?」
<違う。真面目に聞け>
「カンカイは、回復師なんだろ?」
しばらく沈黙が続いた……。
<我の力は回復ではない。
血を操る能力だ>
「……え?」
<我も最初は回復の能力だと思っていた>
やっと理解した。
「今まで勘違いしていた……。
だから、みんな俺の願ったことを聞いて、
変な動きをしていたんだ」
そう考えると、色々なことが腑に落ちてきた。
「赤い霧は毒で、
カンカイの能力を今も少しずつ浄化している。
だから眠る効果になった……その解釈で良い?」
<赤い霧は、浄化の力で毒の効果だけは消えたのだろう。
血の霧を吸い込み、強力な魔力はショック状態を引き起こす。
それが睡眠効果のようになったのだろう>
そういうことなのだろう。
<しかし、お前の能力は日に日に強くなっているように感じるぞ>
「浄化が強まってる?
カンカイの力を受け継いだから?
浄化ってカンカイの能力も消してしまうのか?」
<分からない。
しかし、能力だけでなく、我の存在自体を消すだろう。
我がいなくなれば、我の能力は消える>
「死ぬのか?」
<もう我は死んで五百年も生きた。
潮時だ。勇者ジュンの言い方なら、
救われて人間として成仏するということだな>
今まで俺を内側から導いてくれた。
そんなカンカイがいなくなるのは寂しい。
でも、素直になれない。
違う言葉が口から出ていた。
「また、無能力者か……」
<そっちの心配か。
お前らしい。
だが、今は浄化の能力があるだろう>
「ダンジョンで、浄化の能力が役に立つわけないだろ?
運動神経もない。
戦うこともできないんだぞ」
<それは、お前次第だろう?>
「俺になにが出来るって言うんだ……」
***
こうして俺は、自分の過去を初めて知ったのだった。
両親と出会い。
セイジョウ王や勇者のことを知った。
<確認できたな。
これからは、お前がどうするか決めろ。
セイジョウの血を受け継ぐものとして……>
両親や、歴代の王たちの姿が灯で揺らぐ。
カンカイが静かに告げた。
<人は誰しも何かしらの能力を持っている。
お前の強みを生かせ。
これから、新しい時代を作っていくのだ>
俺は笑った。
「セイジョウの血を受け継いでいるけど、
カンカイ。
お前の血も受け継いでいるんだろ?」
<……>
「俺は、俺だ。
歴史の傷は、俺が回復してやる。
俺は回復師だからな」
<……そうだな>
「俺は、その傷を癒す存在。
カンカイの悪い記憶を終わらせる存在。
魔王サンクだ」
セイジョウの血を受け継いだ魔王。
そしてダンジョンの王。
過去を背負うのではない。
過去を癒す存在として生きる。
そして俺は決意した。
新しい物語を始めようじゃないか。
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