79話 赤い霧の真実
――魔王サンクの寝室――
ダイヤたちがダンジョンを去った夜。
久しぶりの静寂が戻った。
俺は数日ぶりに安眠を味わうはずだった。
だが。
「サンク……サンク……」
声が聞こえた。
小さく、どこか懐かしい響き。
聞き覚えのある声だった。
<行くな。サンク。
それはお前が見てはならぬ記憶だ>
「何だよ。そんな言い方されたら、逆に気になるだろ」
<お前に、自らの過去を受け入れる覚悟はあるか?>
「過去?
何の能力を持っていなかったことか?
別に恨んじゃいない。今は仲間もいるしな」
カンカイが黙って何も言わなくなった。
しばらくして、カンカイが俺に少しずつ質問を重ねてきた。
<お前は両親のことを覚えているのか?>
「いいや。
小さい頃に死んだから、あんまり覚えてないな。
あ、孤児になったことも今では恨んでいないぞ」
<そうだったのか……。
すまないことをした>
「なんでお前が謝るんだよ」
<お前の名は、サンク・アル・セイジョウ。
それで間違いないな>
「ああ。両親が大事にしていた写真を見た。
そのときに教えてもらった。
あまりこの名を皆に言わないように言われたけどな」
<そうか……>
「あ、そう言えば夢を見た。
今になって急に思い出すなんて……」
<どんな夢だ?>
「写真に写っていた人物が、妙に懐かしかった」
<そうか……ならば、確認してこい>
「確認?
どういうことだよ?」
<セイジョウ王国。
赤い霧に覆われた王国。
我が滅ぼした国だ>
「その国がどうしたって言うんだ。
ん? セイジョウ……。
俺と同じ名前だ……」
<本当に悪いことをしてしまった。
我を許してくれ>
「カンカイがそんなことを言うと、気持ち悪いんだけど」
そして、俺は声のする方へ向かった。
黒鉄の門を開け、ダンジョンの中を進む。
ダンジョン内の灯が揺れ、影が伸びる。
「サンク……」
その声が、どんどん大きくなっていく。
そして……。
そこに立っていたのは……
ぼろぼろの衣。
ただれた肌。
だが、確かに見覚えのある顔。
姿を見たとき、驚いて思わず涙が出てきた。
「父さん……? 母さん……?
何でここにいるの……。
ここは夢の中?」
「サンク……。
こんな姿になって……」
母が俺の白骨化した顔を優しく撫でた。
「お前を残して、死んでしまってすまなかった」
父が俺を抱きしめる。
夢だと思った記憶が、鮮明に蘇った。
貧しかったけれど、笑いにあふれた日々。
セイジョウ王の王冠を抱いた写真。
そして両親の傍らに、王冠を被った二人の姿があった。
次々と先祖のゾンビが現れる。
カンカイが言った。
<セイジョウ王朝の初代。
そしてその横が、初代セイジョウ王の子供。
勇者だ>
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
少しでも面白い思っていただけましたら、
ブックマークや↓の『☆☆☆☆☆』で応援いただけると、とても励みになります。
よろしくお願いします!




