78話 愛マックス
さっそく俺はコノハを呼んだ。
「コノハ。
この者を介抱せよ」
地面から、するするとコノハが姿を現す。
「流石です、魔王様。
世界の名高い英雄も、
サンク様にはかなわない……ぽっ」
片膝をつき、コノハがひれ伏しながら上目使いで俺を見ている。
コノハの顔が、少し桃色に見えた。
血に飢えているのか?
「コノハ。
血いる?」
「はい。でちゅ」
指先から出る血を吸い付くようにコノハが舐める。
おお……。
気持ちいい……。
いや、いかん。
こんな事では。
「おいおい、子供返りか?
ハハハハハ……」
コノハが進化……。
……。
しない。
「進化しないの?」
「してまちゅ。
魔王様への愛がマックスでちゅ」
「血で酔っ払ったのか」
コノハが俺の手を握って離さない。
「まあ、喜んでもらえてよかった。
で、シンエイのほうは?」
「ダイヤと相打ちです」
「少し前、ダンジョンに衝撃が走り地面が揺れたなあ……。
もしかして、あの時の衝撃って!
ダイヤとシンエイの衝突で起こったの?」
「さあ……?」
コノハは、シンエイとダイヤに関心を示していない。
俺だけを見ている。
英雄を救い殺すような異常でさえ受け入れるように……
コノハはただ笑っていた。
***
その頃。
ダイヤたちは、入り口付近の部屋で寝かされていた。
「コランダムさんまで……」
トパーズたちが裸で立っていた。
「本当に殺されないんですね」
コランダムは敗北したことを認識した。
そして肩を落とし、うなだれる。
「あ、私の女神の加護を受けた鎧が……」
彼は身ぐるみを剥がされていることに気づいた。
だが、不思議と怒りは少ない。
近くには、大量の魔石が置かれている。
「コランダム。そんなに落ち込むな。
俺はアダマス・アトラスを奪われたんだぞ。
もう唯一無二の剣ではなくなるな……」
ダイヤが泣きそうな顔をしていた。
「あのゾンビの魔王はどういう存在なのだろうか。
恐怖を越えて、神聖な存在にすら感じた。
私は何もすることなく、敗れてしまったよ」
コランダムが髭を整え裸のまま天井を仰いでそう呟いた。
「お前もそうだったのか。
俺も何も抗えなかった」
ダイヤも頷いた。
「ということは……
疫病のダンジョンと呼ばれたころのように危険なのでは!?」
トパーズが警戒するように声を荒げた。
「いや、そうとも限らない。
魔王が人間を殺さないように指示しているようだし……
何より、我々の修行にもなる」
コランダムが髭を整えながらそう話す。
「問題は、階層ボスの強さが歪なことです。
いきなり低層でS級のモンスターがいるわけですから。
ダンジョンを知らないような配置ですよね」
そう言いながら、コランダムが考え込んだ。
「それではリュウドウ王国に帰って、報告でもしましょう」
***
全員がリュウドウ王国に帰ると……。
ちょっとした話題になっている人物がいた。
ドワーフのように背が低く、がっちりとした体躯。
人間に近い人物が訪れていた。
「おおー!これはすごい!
他のダンジョンでは、魔物が素材になるっすか?
オラにもこれを売ってもらえないでやすか?」
街の商店で、大量の魔石を持っている人物が注目を浴びている。
「オラはドリュウという者でやす。
その商品。
売ってほしいっす」
まるで商人となったようなドリュウが、そこにいた。
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