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回復魔法だと思ったら即死魔法でした ~最弱回復魔法師の力を受け継いだ俺、気づいたらダンジョン魔王に~  作者: マリアンナイト


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77話 歪な救い


 コランダムは、サンクを女神のように感じていた。


 なぜそう思うのか、自分でもわからない。


 純粋さのせいか。

 それとも、存在そのものが持つ質のせいか。

 恐怖を越えた先にある、言葉にしがたい何か。


 ただ一つ確かなのは、

 奴が「訳の分からない存在」ということだった。


 そう考えていると、魔王サンクが戻ってきた。


 両手を大きく広げ、無邪気な子供のように。


「がぎがごう。

 ぞんぎがぎんがぎがぐがっが!

 ごげげ、ぎゅぎゅぎげぐげぐ」


 意味は分からない。


 それでも、その声は

 泣きそうなほど、嬉しそうだった。


 ただ純粋な感情だけが、そこにあった。


 次の瞬間。


 魔王に抱きしめられた。


 温かい。


 血が清められていく。


 心が女神に抱擁されているように癒された。

 この感覚は、どこか知っている気がした。

 自分の内側に、同じ力が流れているかのように。


「ああ……救われるようだ」


 その言葉は自然に漏れた。


 しかし……。


「ぐふっ」


 鮮血が飛び散る。


 魔王の鎧から、無数の針が突き出していた。


 まるで、ウニのように。


「防具が……生きている?」


 抱擁が強まるたび、針は容赦なく伸びる。


 肩を抱いて突き放す魔王。


 よく見ると魔王が困惑している。


 過ちを犯した子供のように。


「が、ぎぇっごごぐぐっがごうぐが……」


 肩を掴まれ揺らされるごとに、

 血が波打つように体の中で衝撃が走った。


 逃げるという発想すら浮かばないうちに。


 意識が遠のく。


 コランダムの意識が暗闇へと沈む寸前。


 コノハの木の根が、静かにコランダムを包み込んだ。


 それは保護にも見え、同時に回収にも見えた。


 ***


 一方その頃。


 サンクは配下たちと話し終わり、

 レッドやカブトは復活したあと持ち場に戻った。


 サンクは、ひとり玉座に座って敵を待つ。


 しばらくして、黒鉄の門が開いた。


 コランダムだ。


 ここに奴が来れたということは!


 そうだ。


 確かに聞こえない。


 扉をひっかくあの不快な音もない。


 ゾンビの唸り声でさえ、なくなった。


 ついにダンジョンの中を歩ける。

 自由に見て回ることができるぞ!


 ついに、狭い隠し通路と玉座だけの生活は終わりだ。


 俺はコランダムのことを《《見向き》》もせず、

 大喜びで諸手を挙げて扉の外へ向かった。


「うおーーー!!!

 マジでゾンビがいない!

 快適すぎる!」


 石畳が敷かれ、赤いアリがダンジョンを整備している。


「ジメジメして陰湿な雰囲気が漂ってるな……

 それでも、声が聞こえなくなっただけでも良い」


 そうだ。


 コランダムにお礼を言わないと。


 俺は急いで、コランダムの元へ戻った。


「がぎがごう。

 ぞんぎがぎんがぎがぐがっが!

 ごげげ、ぎゅぎゅぎげぐげぐ」


(ありがとう。

 ゾンビがみんないなくなった!

 これで、ゆっくり眠れる)


 今日の夜が楽しみだ。


 ありがとう。


 本当にありがとう!


 この気持ちが抑えられなくなって……


 気づけばコランダムを抱擁していた。


「ああ……救われるようだ」


 コランダムは何が起きたか分からないようだったが、

 安らぎの表情を浮かべていた。


 ん? 喜んでる?


 敵も味方もない。

 なんだか、仲間になれたようで嬉しかった。


 しかし……


「ぐさっ」


 妙な音がした。


 気づけばウニのような針が、

 防具から飛び出しコランダムを串刺しにしていた。


「が、ぎぇっごごぐぐっがごうぐが……」

(あ、レッドの作った防具が……)


 ヤバい、どうしよう……。


 サンクには、ある人物の顔が浮かんでいた。


 回復能力を持つ、コノハの顔だった。


 そして結論を出した。


 コノハに丸投げしよう。


「ズズズ……ゴゴゴゴ」


 地面から木の根がうごめく音がする。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


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