74話 恐怖しろ
シンエイが鎖を頭の上で回す。
その風を切る音だけが響く。
「さあ楽しみましょう。
拙者の憧れであるサンク様のように……」
「人間をいたぶるのがそんなに楽しいか」
「まさか。
こんな強者を前に、
そのような無粋な真似を?」
シンエイの、銀色のカブトがきらりと光った。
「サンク様は純粋。
神のなさることは、無慈悲で優しい。
そう思いませんか?」
ダイヤの目が光る。
「魔物が自然を説くか」
「人間も、その一部でしょう」
コランダムが動く。
剣を振りかぶり、
アダマス・アトラスの秘剣が唸る。
しかし、
シンエイの姿が消えた。
風を裂く音が、四方から響く。
「ビュンビュンビュンビュン。
ジャラジャラジャラジャラ」
鎖が飛んできて、コランダムの体を打ち付ける。
「ぐふっ」
見えない攻撃は、一撃でコランダムの骨を砕いた。
「どうです。
この威力」
「バサバサバサバサ」
今度は飛行するように、空中で音が動く。
その瞬間。
ジャラジャラジャラジャラ。
ダイヤモンドの硬さを持つ、
アダマス・アトラスの秘剣が砕けた。
「まさか。
ダイヤを砕くのか」
「やはりですね。
堅いものは、衝撃に弱い。
柔軟性は、必要ですよ」
コランダムの背後から、シンエイが姿を現す。
その顔は、にやりと笑っていた。
「気配まで感じなかった……」
コランダムの額から、汗が流れ落ちた。
顔は青ざめ、死の瞬間を感じ取っていた。
シンエイが、手首から血を流す。
そして――
鋼の輝きを放つ刀を、コランダムへ投げ渡した。
「あなたの、ここへ来た目的は?」
「は?」
コランダムが返答に困る。
「サンク様を見極めるつもりなのでしょう?」
「何が言いたい?」
呆然と刀を手にしたまま、コランダムは固まっていた。
「あなたは、サンク様の元へ行きなさい。
そして恐怖しろ」
シンエイが目を大きく見開く。
風のような殺気が、
コランダムを貫いた。
コランダムの背筋を、
冷たいものが走る。
目の前のシンエイにではない。
シンエイが見ている《《先》》に、
得体の知れない何かを感じ取っていた。
「コランダム。
行け。
奴は俺を選んだ」
シンエイの口角が少し上がる。
ダイヤは黙ってシンエイを見つめていた。
その目から、
先程までの余裕が少しずつ消えていく。
「剣はまだ作り出せるぞ」
ダイヤの胸元から、ダイヤモンドの剣が形成された。
「後は頼みます」
そう言ってコランダムがサンクの元へ向かった。
「拙者は幸せですよ」
シンエイが笑う。
ダイヤは黙ったまま、
その姿を睨みつけていた。
「サンク様とお会いすれば、
その純粋さ。
無慈悲さ。
そして優しさに触れることでしょう」
シンエイは、
心の底から嬉しそうに笑っていた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
少しでも面白い思っていただけましたら、
ブックマークや↓の『☆☆☆☆☆』で応援いただけると、とても励みになります。
よろしくお願いします!




