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回復魔法だと思ったら即死魔法でした ~最弱回復魔法師の力を受け継いだ俺、気づいたらダンジョン魔王に~  作者: マリアンナイト


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72話 恐怖を越えた先


 ダイヤとコランダムが同時に踏み込む。


 呼吸すら、揃っていた。


「きゃー、こわーい」


 レッドは笑いながら、

 分身体を散らして逃げる。


「勝ちに執着しない。合理的で利口だな」


「僕のような弱いスライムに、二人はずるいって」


「お前のどこが弱い」


 ダイヤが立ちふさがる。


 しかし、素早くすり抜ける。


 コランダムの追う剣に、迷いなどない。


 ひとつ。


 またひとつ。


 分身体を正確に切り捨てる。


「逃げに躊躇がない。恐怖もないか」


「……サンク様の前に立っただろ?」


 一瞬。


 レッドの笑い声が止まった。

 

 ダンジョンが静まり返る。


「それでも、恐怖しなかったのか?」


「あのゾンビが主か」


「……ああ」


 レッドの笑い声が、ほんのわずかに柔らいだ。


「優しいよ」


 それだけだった。


 次の瞬間にはまた笑って逃げる。


「我々を殺さないもの、主の指示か?」


「そうそう」


 レッドは笑った。


「さあね」


 からかうような笑い声が、遠くまで響く。


 しかし、


 視線だけはダイヤとコランダムを捉えていた。


 レッドはムマのように言葉巧みに誘導するが、

 二人がのってこない。


「もっと警戒を解けよ、おごり高ぶれ。

 僕は弱いスライムなんだ。

 うぬぼれて、隙を見せろよ」


 軽口の裏で、突破口だけを探っている。


「もっと話を聞かせてほしい。

 お前の主に興味がわいたぞ」


 ダイヤの言葉に、レッドが警戒する。


「聞き出そうとしてもダメだよ。

 サンク様に、お前たちじゃ届かない」


 ウニのように針を出して威嚇した。



「お前、自分を弱いと思っていないだろ?

 そこが落とし穴か」


 ダイヤの目がきらりと光った。


「僕に、講釈を垂れるな」


 そのとき。


 レッドの体が揺らぎ、歪んだ。


 赤から銀へ。

 さらにその銀が、色という概念を失っていく。

 透き通るように光だけが四方へ反射した。


 そして、


 走り抜けるレッドの体の後を、虹色の尾を引いていた。


「やられた……奪われたのか」


 ダイヤが顔をしかめる。


「……気づくの、遅いね」


 レッドの体は、ダイヤモンドへと変わっていた。


「コランダム。

 もう奴に色々見せるな」


「これで奴の脅威はS級モンスターということだな。

 他の技まで奪われては厄介だ。

 一瞬で片付けよう」


「ああ……」


 ダイヤが精神統一を始めた。


 コランダムが、レッドの行く手を阻む。


 逃げるレッドを剣がかすめ、壁が行く手を遮る。


 ひとつだけ、逃げ道があった。


「まだ隙があるよ。

 ベー、だ」


 しかし、逃げた先に――


 ダイヤが待っていた。


 ダイヤモンドと化した指が、レッドを掴んだ。

 かぎ爪となってレッドにめり込み、逃げることを許さない。


 そしてダイヤモンドの壁がレッドを牢獄のように捕らえる。


 続いてダイヤが作り出した剣、

 アダマス・アトラスがコランダムの剣さばきによって唸る。


 ダイヤはすでに、その場を離れていた。


 レッドに逃げ場はない。


「ダイヤ……これがお前の強さか。

 なるほどね。僕は嫌いじゃないよ」


 レッドの体が粉々に切り裂かれた。


 ダイヤモンドの結晶が降り注ぎ、光に照らされ輝く。


 その中に、赤い霧が混じる。


 レッドが霧となって消滅した。


「女神の加護は使わなかったのか?」


 ダイヤが不思議そうに言った。


「また戦って見たくなった。

 消滅させるには、惜しい」


「そうだな。

 次は……

 一対一の勝負だ」


 二人の連携によって、レッドが敗れた。


 そのとき。


 軽快な笑い声が、確かに響いた。


 消滅したはずの場所から……。


 二人の視線が、そこで止まった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


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