71話 強者の条件
ダイヤが、コランダムに斬られた。
胸から血しぶきが吹き出る。
胸を抑えるダイヤ。
指の間から、血が滴り落ちた。
ダイヤは手についた血を、じっと見つめる。
「お前でも、斬られるんだな。
やはり赤い血を流す人間だ」
レッドがそう言うと、ダイヤが笑った。
「そうだ。俺は赤い血の通った人間だ」
血の付いた手を、強く握りしめる。
「化け物じゃない。
か弱い負け犬。
だが、それがどうした」
ダイヤの目の鋭さが増す。
「俺はダイヤモンド・アル・アダマス」
膝をついていたダイヤが立ち上がった。
「弱さを知らぬ強さに、価値はない」
「何言ってるんだこいつ?
お前らは、死んだら終わりだろ。
僕たちは何度でもやり直せる。
だから……失敗も怖くない」
レッドがコランダムへ指示を出す。
「夢物語には付き合わない。
コランダム、やれ」
コランダムの剣さばきが星のように輝き、
ダイヤの体に無数の傷が刻まれていく。
受けた腕が裂け、血が飛び散る。
次の一刀。
軌道を見切り、身を沈める。
髪先を刃がかすめた直後、腹へ拳を叩きこむ。
返しの刃が鋭く光る。
腕をかすめ、血しぶきが舞った。
さらに振り抜かれた斬撃。
腹をかすめた刃を、拳で叩き落とす。
その衝撃で、空気が弾けた。
ダイヤには、一瞬の迷いは死を意味していた。
刃が迫る。
体が、わずかに強張る。
遅れる。
だが、
その遅れを理解した。
次に来る軌道の読み合いが、互いの脳裏に浮かぶ。
踏み込めば斬られる。
退けば叩き潰される。
どちらの動きも止まった。
視線が交錯する。
わすかな筋肉の動き、剣先の揺れ。
すべてがフェイントとなっていた。
二人の間の空気が張り詰める。
壁の小石が転がり落ちた。
そしてコランダムが先に動いた。
コランダムの剣が、ダイヤの鼻先をかすめる。
振り抜いたその隙を、
ダイヤは反撃しなかった。
その剣筋は、すでに見切っている。
ダイヤの視線は、レッドへ向いていた。
「死んだら終わり?
確かにお前たちは最強だな」
ダイヤが不敵に笑う。
「死んでも生き返る。
死の恐怖すら知らない強者は、
本当の強者なのか?」
致命傷を避けるように、コランダムの剣を腕で受け流す。
ダイヤの腕がダイヤモンドへと変わった。
「僕は恐怖は嫌いだよ。
でも、恐怖する姿を見るのは好きだ」
レッドはコランダムとダイヤの戦いを見つめている。
「恐怖はな……
危険を知ることで、より良い判断をもたらす。
弱みじゃない。利用すべき強みだ」
そう言った瞬間――
ダイヤの拳が突き上がった。
そしてコランダムの体は、宙を舞っていた。
「恐怖を越えたとき、スリルは好奇心を満たす」
コランダムが地面に叩き血けられ、口から血を吐く。
だが、
コランダムの体が輝いた。
「女神の加護により我を癒したまえ」
コランダムの目に光が戻った。
「フェロモンは把握した。
もう効かんぞ」
「奇襲もな」
二人が並ぶ。
お互いの間合いだけは、完全に共有されていた。
踏み込む位置、振り抜く角度。
どちらが先でも、邪魔にならない。
お互いが好きに動いても、今なら連携が取れる。
言葉はいらない。
背中を預ける覚悟も、信頼も……。
すでに出来上がった。
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