69話 不屈の剣アダマス・アトラス
「ダイヤ。
すまない。お前の剣をくれ」
「これか?」
「いや、違う」
コランダムが首を振った。
「お前の《《作り出した》》剣のほうだ」
「……。
俺の必殺の剣を、お前にくれてやる理由がない」
「いいから、けち臭いこと言うなよ」
ダイヤは動かず、
コランダムは視線を逸らさない。
「……これは貸しだな」
ようやく動き出したダイヤが目を閉じ、精神を研ぎ澄ます。
胸の前で、ゆっくりと手を横へ滑らせた。
手が移動する跡に沿って、
虹色に輝く透明な剣が、ゆっくりと結晶化していく。
「この剣が……アダマス・アトラスか。
意外に軽いな」
「不屈の剣だ。
奪われるなよ」
ダイヤの腕が、わずかに硬質化する。
「これは俺の体さえ断ち切る」
コランダムは無言で手を差し出す。
「……大事に使えよ」
放られた剣を受け取り、
コランダムはにやりと笑った。
剣が唸る。
虹色の弧が空を裂き振り抜かれた。
横一線に一筋の線が走る。
遅れて、星屑のような光が降り注いだ。
「さあ来なさい。
赤いスライムの魔物よ」
「やれるもんならやってみな」
「では、勝負と行きましょうか」
コランダムの瞳が鋭く光る。
静かに振り抜かれた剣が、一瞬消えた。
音も、空気も、鉄すらも。
すべてが断ち切られるように、空間が揺らいだ。
高速移動を続けていた、銀色の閃光さえ……
綺麗に、二つに分かれていた。
「なんてこった!」
しかし、
分かれた肉体は、そのまま二匹のスライムへと変わった。
「しぶといですね」
コランダムが睨む。
「鉄じゃダメかあ。でも!」
分身体がダイヤの剣に貼りついた。
「魔核ごと斬らないと死なないようですね」
ダイヤの作り上げた剣が、じわりと溶け始める。
「しかも、この剣でさえ溶かすか……」
そのまま剣を振り抜き、貼りついた分身体ごと断ち切る。
「ごちそうさまでした!」
レッドが笑う。
本体が一瞬、ダイヤモンドのように輝いた。
「お遊びはここまで。
今度は君たちのお遊びを見せてよ」
レッドがにやける。
「お互いに戦ってね」
ダイヤの脳裏に、ムマの影がよぎった。
「何を寝ぼけたことを言っている?
俺たちを操る能力があるとでも言いたいのか?
報告ではアリの女王の専売特許だったはずだ」
その瞬間。
レッドが赤い霧を吐き出した。
「これは……厄災の赤い霧か!?」
ダイヤが息を止め結界を展開する。
ダイヤモンドの壁が周囲を覆った。
一方。
コランダムは静かに祈った。
輝く結界のように光をまとう。
「女神の加護って匂いにも効果あるの?」
赤い霧は、甘い匂いを漂わせていた。
「ふっふっふ」
コランダムの足元で、レッドが背を向ける。
そして……
コランダムの瞳から、光が消えた。
「僕はレッド。君の主人だ。
ダイヤをやっつけてね」
「かしこまりました。ご主人様」
赤い霧が晴れていく。
ダイヤモンドの壁が見えたかと思うと、
斬られていた。
斬られた壁は地面へ転がり、土煙が舞う。
コランダムがそのままダイヤへと踏み出した。
迷いなく。
その刃は、まっすぐダイヤを捉えた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
少しでも面白い思っていただけましたら、
ブックマークや↓の『☆☆☆☆☆』で応援いただけると、とても励みになります。
よろしくお願いします!




