68話 速さだけだと思う?
――魔王サンク側――
「ムマ、めっちゃ弱いじゃん!」
サンクの顎が外れていた。
「仕方ないよ。
僕の分身だからね」
レッドも一緒に観戦している。
「それにしても、お前、余裕だな。
次はお前だぞレッド」
「そうだね。
僕はダイヤと相性が悪いからね。
逃げようかな」
「お前が逃げたら、シンエイはあいつを素通りさせるぞ」
「サンク様がいるから大丈夫でしょ」
何なんだこの俺への信頼感は……。
<よかったな。
配下に慕われて>
慕われているのか?
勘違いしているだけだろ?
俺のことを強いと思ってるみたいだし。
<心配するな。
お前はお前が思っているよりずっと強いぞ。
ダンジョンを守りたいと思う思いは強いだろ?>
「なんだよ急に……
俺を励ましているのか?
気持ち悪いな」
そう言いながらも……
俺は顔がにやけてしまって、我慢できなかった。
さて、レッドの観戦でもしようかな。
そう思った矢先。
ダイヤたちが、レッドのボス部屋に入ってきていた。
そして――
レッドがA級パーティーの三人を串刺しにしていた。
「へっへ~!
奇襲成功~!」
「赤いスライムのボスは一匹じゃなかったのか……」
そう言い残し、トパーズたちは木の根に包まれ、
地面へと消えていった。
「本当にあの木の根から、
あいつらを助けなくていいんだな?」
コランダムがダイヤに呆気にとられながら話した。
「大丈夫。
今までも、すべて冒険者は帰されている」
「不思議なダンジョンだな。
何が目的なんだ?」
「それを調べているんだが、皆目見当がつかない。
だが、面白い。
挑みたくなる不思議さがある」
ダイヤが興奮気味に語った。
「あの~。
僕のこと、忘れてない?」
コランダムの目の前に現れ、針を突き出すレッド。
しかしコランダムは――
素早い剣さばきで針を粉々に砕いた。
一方のダイヤは、ただ、突っ立っていた。
分身体のレッドの針は、ダイヤに当たって砕け散る。
「ふん」
レッドの分身体が、ダイヤに踏みつぶされた。
「認めたくないね。
自分自身の不甲斐なさなんて……
分身体は改良の余地あり、だな」
そう、高台から見下ろしたレッドが、しんみりと口にした。
「僕もよくよく運がない。
こんな強者を二人同時に相手しないといけないなんて……」
レッドの体が、赤から銀色へと変化していく。
そして動く。
コランダムも呼応して動く。
「速さだけでは私に勝てませんよ」
コランダムの見えない剣筋が空を切った。
赤いスライムの時より、さらにスピードが増している。
「僕の体は小さいからね。
そうそう当たるもんじゃないよ」
「小さいのは利点ですが、見えないわけではない」
「当たらなきゃどうってことないけどね」
レッドが銀色の残像の筋を残し、光のように走る。
次の瞬間――
「キーン……」
金属の弾かれる音が響いた。
「速さだけだと思う?」
レッドが不敵に笑う。
鉄の弾丸となったレッドが、
コランダムの体へめり込んでいた。
「ぐはっ……!」
コランダムの折れた刃先が空を舞い、
地面へ突き刺さった。
「舐めてもらっちゃ困るね」
レッドが得意顔になっていた。
これは見なくても分かる。
「女神の加護により我を癒したまえ」
コランダムの体が眩く光り、回復していく。
「ふ~。
やるなこのスライム」
コランダムは何事もなかったように、
レッドの前に立ちふさがった。
「ダイヤ。
すまない。
お前の剣をくれ」
「これか?」
「いや、違う。
お前の《《作り出した》》剣だ」
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