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回復魔法だと思ったら即死魔法でした ~最弱回復魔法師の力を受け継いだ俺、気づいたらダンジョン魔王に~  作者: マリアンナイト


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65話 受け入れる者、拒む者。


 A級パーティーの猛攻を受けながらも、

 カブトは微動だにしなかった。


 むしろ――

 至福を味わうかのように、冷たく笑っている。


「何なんだ、こいつは……」


 トパーズは肩で息をし、膝をついていた。

 フェルスは杖に体を預け、何とか立っている状態だ。

 クオーツの張る魔法障壁も、今にも消えそうに揺らいでいる。


 三人の顔には、はっきりと疲労の色が浮かんでいた。


 何度も何度も、刺し、そして斬る。

 大技を放ち、空を裂く刃がカブトへと降り注ぐ。


 そのたびに衝撃は背後へ抜け、壁が崩れ落ちる。


 魔法の刃が収束し、巨大な塊となって押し潰す。

 盾は急所を正確に捉え、容赦なく突き刺さる。


 攻撃は効いている。


 カブトの体は、すでに原形をとどめていなかった。

 肉は裂け、骨は砕け、腕は皮膚一枚で辛うじて繋がっている。


 それでも――


 動かない。


 ただ、受け入れている。


 痛みを。

 苦痛を。

 そして弱ささえも。


 やがて、斬撃と爆音が止んだ。


 ダンジョンが静まり返り、重苦しい空気が満ちていく。

 戦う意欲さえ奪われるような威圧。


 壁の崩れる音だけが、やけに響いた。


「そこまでだ」


 コランダムが、静かに三人を制した。


 視線の先は……

 コランダムではなく、カブトはダイヤを見ていた。


「ダイヤさんも、必殺の剣を見せていただけませんか?

 それも私は、受け入れましょう」


 突き刺さる視線。


「負け犬」


 言われたわけではない。

 だが、そう告げられた気がした。


 見透かされたように。


 負け犬。あのときの言葉が頭をかすめる。

 仲間と交わした想いがよみがえる。


 ダイヤは、剣を強く握りしめた。


「ダイヤの前に、私がいますよ」


 コランダムが一歩前に出て、静かに剣を抜く。


「精神攻撃の類ですか?」


 その冷静な問いとは裏腹に、瞳は熱を帯びていた。


「そうですね。

 ダイヤさんと私は、相性が悪そうですから。

 あなたでも構いません」


 カブトがようやくコランダムに視線を移した。


「私の剣を受けても、そんな余裕が保てますかな」


 コランダムとカブトの視線がぶつかる。

 どちらも一歩も退かない。


「私は……すべてを受け入れましょう」


 カブトの体から、血が沸騰するように蒸気が上がる。


 空間は真っ赤な霧で覆われた。

 晴れていく霧の隙間にカブトの姿が映った。


 血が骨へと巡り、砕けた骨が組み上がっていく。

 失われた肉は筋となって繋がり、元の形を取り戻していく。


 まるで血を糧に、すべてが新しく生まれ変わっていくように……。


 その異様な光景の中を、コランダムは迷いなく進む。


 体は眩く光り始め、優しく包まれる。

 剣は静かに流れ、時が止まったかのような美しさを帯びていた。


 次の瞬間。


 無数の光の線が、カブトの体を走り抜ける。


 カブトを通り過ぎたコランダムは、

 背後で斬り払った姿のまま静止していた。


「見えなかった……」


 トパーズが呟いた。


「今……何をしたんだ?」


 クオーツとフェルスが顔を見合わせる。


 ダンジョンに風が吹き抜け――


 髪が揺れた瞬間。


 カブトの体が、ぼろぼろと崩れ落ちる。


「女神の加護があらんことを」


 残された頭部だけが、コランダムを見つめていた。


「女神の信奉者か……。

 だが私は王の信奉者。

 どちらの信じる力が強いか――次で確かめましょう」


「それもまた、いいでしょう」


 冷たい笑みを浮かべたまま、カブトは霧となって消えた。


「……終わったのか?」


 ダイヤは剣を離さなかった。


 いや、離せなかった。


「これが三階層のボスですか……?

 最初の階層ボスとは思えませんね」


 トパーズの言葉は、この先の苦難を匂わせた。


 ……


 まだ終わっていない。


 女王アリ。

 二刀流の剣士。

 赤い悪魔。

 そして、あのゾンビ。


 倒すべきものは、いくらでもある。


 強さがあっても……


 守れなかった。


 本当に強い者とは、何だ?


 何を見誤った?


 何が足りなかった?


 ダイヤは剣を握り直した。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


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