64話 なぶり殺し物
数日後。
コランダムがダンジョンに訪れていた。
ダイヤとA級パーティー。
トパーズ、クオーツ、フェルスを連れて。
その様子を、サンクは隠し通路から眺めていた。
「今日はダイヤって奴が、
違うパーティーを組んで来ているな」
「サンク様。
ゾンビを何とかしてください。
邪魔です」
コノハの機嫌が少し悪い。
このゾンビ……。
俺の方がどうにかしてほしいよ。
隠し通路からはゾンビが湧き続けている。
この隠し通路を使えるのは、
コノハが木の根で刺し殺していたからだった。
「さて、初めて見る奴がいるよな。
あいつ、強いの?」
<かなりの猛者のようだな。
あのダイヤと同じくらいかもしれん>
「外の僕の眷属じゃ実力が分からないね。
まるでダイヤの時みたいだよ」
レッドは眷属のスライムを通して分析しようとしていた。
「お前、そんなに余裕でいいのか?」
「僕もアリたちの状況を知りたいからね。
サンク様と一緒に見学したいし」
「おお、そうか……」
レッドめ。
ちょっと可愛らしくて、憎めない奴だなあ。
「カブトの実力が知りたいしね」
そうだった。
カブトはカンカイの右腕だ。
その実力が気になる。
眷属たちは、彼らの邪魔にさえなっていなかった。
「以前より、魔物の種類が増えましたね」
トパーズが魔物を倒しながらそう言った。
「君たちもやりますね。
ハハハハハ」
コランダムは笑いながら
仲間たちと言葉を交わす余裕すら見せていた。
先頭を歩くダイヤは、
防御も攻撃もせず、ただ前進しているだけだった。
それなのに……。
ダイヤに触れた魔物たちは、
勝手に死滅して霧と化していた。
「ダイヤ殿は相変わらず堅いですな。
ハハハハハ」
そう言いながらコランダムは髭を整えていた。
やがてカブトのボス部屋の前に近づく。
「なんだこのヤバい雰囲気は」
ダイヤが呟く。
「異様ですね」
コランダムも警戒していた。
「この敵なら大丈夫だ。
俺たち三人で難なく倒せたからな。
血まみれのゾンビだったよ」
ボス部屋に足を踏み入れる。
そこにいたのは――
羽の生えた大柄な体格のカブトだった。
手を広げ、
ただ、立っている。
まるで暴力を歓迎するかのように。
「あの姿カッコいいね。
僕も鉄人形であの招き方しようかな」
レッドが楽しそうに言う。
冒険者たちに緊張が走る。
「なんだか、この前と様子が違うぞ」
トパーズが剣を抜き、カブトへと突き立てた。
「君たち、この魔物に勝てたのか?
すごいじゃないか。
物凄い妖気を放っているぞ」
「大丈夫さ。
俺たちはA級パーティーだ」
クオーツが魔法の盾を展開する。
「この前と同じように」
フェルスが氷の刃を放つ。
「俺たちなら勝てる」
三人が目配せして同時に動いた。
カブトは両手を広げたまま身動き一つしていない。
三方向からの連携攻撃。
盾が突き刺さる。
同時に氷の刃が、カブトの腹部を貫く。
そして――
トパーズの剣が、首を断ち……。
以前とは違う……。
断ち切れなかった。
カブトは身動き一つしていない。
剣が首に刺さったまま止まっている。
「その攻撃は、もう経験しました」
カブトの視線がトパーズに向く。
「つまらない。
それじゃあ、もうつまらないのです」
トパーズが思わず距離を取る。
カブトは首に刺さった剣を抜き、
トパーズへと投げ返した。
体の傷が、みるみる塞がっていく。
「さあ、もっと痛みを」
ニヤリと笑う。
「私が壊れるまでなぶり殺し物にしてくださいよ」
そして、手を広げ……。
「さあ、最上の痛みを!」
口元は不気味に笑い。
その上にある目だけは、
まったく笑っていなかった。
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