60話 あとから分かる異常
俺は次にシンエイを見る。
レッドと違い……
カマキリに似た顔をした、ほとんど人間の武士だ。
「シンエイも、かなりアリを倒したんだよね?」
「はい。
進化しました」
シンエイが赤い霧に包まれる。
霧が収束し――
その姿は鎧兜をまとっていた。
「魔王様の赤い霧から発想を得たでござる」
「それ、さっきやったよね」
「えっ……。
これが進化した能力で……」
額から汗を流している。
「他にないの?」
「えっ?
ほかに……ですか?」
一瞬の沈黙のあと。
「……ならば!」
シンエイの姿が消えた。
「ん? 消えた?」
……それじゃあ、カブトはどうなった。
「サンク様。
もっと興味を持ってください!」
壁から声がする。
「拙者は、ここでござる」
壁に擬態していたようだ。
「飛行もできるでござる」
……。
「さて、カブトはどうなったかな」
もうシンエイには興味を示していなかった。
<お前も結構、冷たいよのう>
え? なにが?
それよりもカブトだ。
見た目は繭から羽化して蛾の羽を持つ二足歩行の魔物。
カンカイの右腕だった存在。
どんな能力を持っているんだろう。
「カブトは強いんでしょ?」
「いえ」
静かに答えるその姿に、俺は貫禄を感じた。
「私は弱いです。
カンカイ様に到底及ばなかった」
カンカイ。弱いって言ってるけど?
弱いって言っても、お前の右腕なんだろ?
<ああ。我の右腕じゃ。
最強じゃぞ>
謙遜か。
カブトは目を閉じ、空を見上げていた。
「ですが今回は……」
ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「サンク様を超えるように頑張ります」
雰囲気は大物だな。
「カブトは鎧兜とか作れないの?」
「私は何も付けないほうが、いいんです!」
「カブトなのに?」
「何もないほうが、激痛を味わえるじゃないですか!
その方が楽しいですから。
サンク様も楽しんでますよね?」
「……楽しんでる方向性が違うような気がする」
え? もしかして変態?
<これは本当にカブトか?
なにかマゾヒストの匂いがするぞ>
しかも。
「私が最初の階層ボスをします!」
さっきまでの雰囲気がなく、
カブトが必死に訴えかけてくる。
「お前レッドより弱いの?」
「大丈夫です」
カブトがニッコリと笑っている。
「攻撃はしませんから。
壊れるまでたっています」
それは宣言というより誓いだった。
「何言ってんのこいつ?」
<それでいいのじゃ。
本来ならば……>
「それでいいの?」
カブトは満面の笑みを浮かべていた。
まるで死ぬことさえ望んでいるような笑みだった。
その笑みは……。
どこか異様。
理由は分からない。
分かってはいけないような気がした。
でも、本能が警告している。
そして背筋に寒気が走った。
「お前、ちょっと思ってたのと違うぞ……」
<我もそう思い始めておる……>
カブトが俺の前にひざまずく。
「私はサンク様のようになりたいのです」
静かな声だった。
「寛大で……」
……
「それでいて無慈悲。
だからこそ美しい。
私は、そのような存在になりたいのです」
「いや、勘違いしてるって。
俺は無慈悲じゃないぞ」
<ある意味間違ってないな>
絶対に勘違いしてるだろ!?
しかも変態じゃん!
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